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勇者の鍛冶師  作者: 芝 恵実
第1章
32/49

32話

えっと、今目の前にいる商業ギルドのギルドマスターが元王族?

いや、その前に()王族とは何ぞや、()って。

王族に元も何も無いと思うけど…。いや、降嫁なり臣家に下ったりだったら、元王族と言われても納得するけど。その場合でも、最低でも貴族でしょ?

確か、商業ギルドのギルドマスターあくまでも平民が付ける職種の筈だ。だから今目の前にいる人は平民でなければならない。元王族なのに、それは良いの?

商業ギルドのギルドマスターーー他のギルドのギルドマスターもだけどーーが平民でなければならない理由は、国に支配されないようにする為に、爵位のある人間にはなる事が出来ない地位でなければならないとかだった気がする。でも、国に勝手に潰されない様にする為に、多他国の後ろ盾が存在しているけど。

えっと、今はそんな事を考える場合じゃなくて。


「困惑されていますね。」


苦笑いで済む問題では無いと思うけど。ついジト目でギルドマスターを見てしまった。


「元は元なので、余りお気になさらないで下さい。

それで、依頼の件なのですが受けて頂けますか?」

「本当に、安全の為だけですか?

その二人を使って、王族に返り咲こうとかと言う事は絶対に無いのでしょうか?」

「ありませんね。私は王族でいた間中、他の王族に殺され掛け続けていたのですから。」


どこまで信用していいのか。

そう言えば、今の国王が王座に就いた時の話を噂で聞いた事があったけど。確か、自分の支配下にならない王子を秘密裏に暗殺したとかしてないとか。その話を聞くと、プラウディア王女との血の繋がりを感じるな。似るにはもっての外の所だけど。


「もしかして、イルファンさんはその時の暗殺する側の人だったのでしょうか?」


余計な事かもしれないけど、聞いといた方が良いと思うんだよね。


「えぇ。私が当時13歳だったイルミス様を暗殺する様にと依頼を受けた人間ですね。

ただ、元々その依頼はあまり乗り気がしていなかったのもあって、イルミス様の人柄に感銘を受け、安全圏へお逃がししました。」

「ギルドマスターのお名前はイルミスさんとおっしゃるんですね。初めて知りました。」

「今は、名を変えてスミスと名乗っていますよ。

そう言えば、ギルドマスターとだけで名乗っていませんでしたね。失礼しました。」


一応、名前は変えて生活をしているのか。

お祖父ちゃんから聞いた国王の暗殺の話だと、1人だけ逃げ果せた王子の名前が何とかミスだったと思うから、この話は本当の事なんだよね…?

一応筋は通っていると思うから、私とお祖父ちゃんの事を教えても安全…かな。

最悪、洸ちゃんを連れてこの街、いや国から脱出すれば問題もないだろうし。


「それで、依頼の方はどうでしょうか?」

「その依頼は受ける必要はありません。」

「受けないでは無く、受ける必要が無いとはどう言う事でしょうか?」


私は懐に手を忍ばせ、そこから1枚のギルドカードを取り出す。


「私が、その探されている鍛冶師のティナだからです。」


取り出した職人ギルドのギルドカードを、ギルドマスターに渡して改めて名乗る事にした。


「…貴女が常識外れな事が分かりました。お祖父様に当たるガゼルさんの行方は?」

「魔王が復活する以前に、この王国から出国していると思います。」

「そうですか。確かにその様な状況であれば受ける必要の無い依頼ですね。

ガゼルの鍛冶屋がこのような状況下で、品質を落とさずに武具を作製出来た訳ですね。

あぁ、そうです。お父様達の状況はご存知でしょうか?」

「奴属の首輪をつけられた状態で捕らわれた所までは知っています。」

「王城なで、召喚された勇者の希望に沿う様な聖剣を作製させられています。」

「そこまで状況を掴めているのですか?」

「今でこそ一介の商業ギルドのギルドマスターですが、王弟ですからね。王城内にはコネがあります。私のコネと王都の職人ギルドと商業ギルドのコネを最大限に使用している状況ですよ。

それでも、王城内の何処にいるかも、どの様な待遇になっているのかもつかめていない状況なのですが。こちらの情報は入り次第、お話しできる内容のものはお伝えしましょう。

それと、ティアラ…ティナさんには、暫くこのラビリンの街に留まって、冒険者として生活をしていて頂きたいですね。」

「それは構いませんが、冒険者としてですか?採掘士としてでは無くて?」


商業ギルド的には、私が採掘士として活動した方が利益があっていいのではないのだろうか?

どうして冒険者としてなんて態々言って来るのだろう?

元々冒険者として生活する予定だったから、私は全然かまわないのだけど。


「ティナさんが、この街では冒険者として有名だからですよ。

赤の破壊者や万器の奏者として名を馳せているのですから。」


何で、その恥ずかしい呼び名を知ってるのよ!?

1人であわあわしてしまったのが面白かったのか、ギルドマスターがクスクスと笑いながら教えてくれた。


「商人にとって情報は金より大事な時もありますからね。この街での情報には抜かりはありませんよ。」


何それコワイ。どこまでの情報をこのギルドマスターに握られてるのかしら。

内心冷や汗が止まりません。


「それはさて置き、冒険者としてこの街で活動されると、当然ダンジョンにも潜られますよね?

何回かに1回でもいいので、今回の量程では無くて構いませんので、鉱石を納品して頂けないでしょうか?

やはり、鍛冶屋等が休業状態ですと商業ギルドとしても痛手になりますので。」


それはそうだろうな。

各お店の売り上げ利益から支払われる上納金が減ってしまうのだから。特に、ダンジョンがあるこの街では、鍛冶屋に武器屋、防具屋が数多く存在しているのだろうし。


「暫くは違う事に専念をしたいので、鉱石が不足し始めたら冒険者ギルドを通して指名依頼を出して頂けませんか?」

「貴女が面倒を見ている、昨日冒険者登録をした少年のことですね。

こちらも無理強いしたくはありませんので仕方ありませんね。ただ、指名依頼と言う形では無く、貴女の懇意にされている冒険者ギルドの受付嬢を経由してお願いをする形を取らせていただけませんか?偶々、ダンジョン内で良質の鉱石を大量に見つけたとして納品して頂けたらなと。あぁ、別に指名依頼料をケチろうという訳ではありませんよ。」


洸ちゃんの事も既に知っているって、やっぱりこのギルドマスターはコワイかもしれない。


「私も指名依頼料をふんだくろうとは思ってないですから、それは構わないのですが。何故その様な回りくどい方法を?」

「理由としては、王都に居るプラウディア王女を警戒してですよ。

ティナさんのお父上達でも聖剣作成に難航しており、その原因の一端が材料不足や品質の悪さにあるのです。その為、プラウディア王女が今度は採掘士を狙うのではと実しやかに噂されているのです。」


つまりは、その噂が本当だった時に私を守る為の対策と言う事か。


「ありがとうございます。」

「いえ、これくらいの事しか出来ませんが。

今後は、直接お話しする事は無いかと思います。何かあれば、懇意の受付嬢経由でお知らせ致しますし、ご連絡下さい。

もし、緊急時の事があれば、このイルファンを向かわせますので。

貴重なお時間を頂いてありがとうございます。下までイルファンに送らせましょう。

今回の事は、貴重な鉱石を持ち込んでくれた冒険者への慰労を兼ねて、商業ギルドのギルドマスターが対応したと言う事になっておりますので。」

「あ、はい。分かりました。

こちらこそ、色々ありがとうございます。」


扉を開け外へ出る時に、ギルドマスターへ一礼をしたが、既に執務机で書類の精査をし始めていた。

私の時間を貴重と言うよりも、ギルドマスターの方の時間の方が貴重だと思うのだけど。


イルファンさんには商業ギルドの入口まで見送られ、私は商業ギルドを後にした。

さて、次は冒険者ギルドに行って、その後は湯屋に行こうかな。


お読み頂きありがとうございます。

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