24話
「求める物件の条件は、広めの庭付きの戸建てで家具付きで、あと、部屋数は3~5部屋希望です。可能であれば風呂付が良いですがありますか?」
「家賃の予算はどの程度でしょうか?」
「相場が分からないので、逆に今の条件を満たす物件だとどの程度の家賃になりますか?」
「希望のエリアにもよりますが…。希望のエリアはございますか?」
「出来れば、冒険者ギルドの近くか郊外の方がいいです。」
「冒険者ギルドの近くですと、中心部に寄りになる為、大銀貨3~5枚が相場になります。郊外になると、大銀貨2~3枚が相場になります。
そして、広めの庭になりますと、やはり郊外の方が中心部よりで探されるよりも広い庭になるのは確実です。
只、今の条件で空き物件になりますと、該当する物件が1件だけなのですが、あまりお勧め出来る代物ではありません。」
「理由をお聞きしても?」
「もともとの持ち主の管理状況が悪い物件でして、家屋のあちこちが痛んでいます。そして、家具はついてはいるのですが…。殆どが廃棄寸前の状態の物です。
そして、郊外と言えば聞こえはいいのですが、周囲にはあまり家が無いので中心部に来るまでにも苦労が多いかと。」
なんでそんな物件が賃貸であるの?貸す側がこんなに渋る物件、逆に見てみたいかも。
「他には、今の条件では無いんですね?エリアを変えた場合もですか?」
「はい。家具が付いている賃貸物件もそうですが、お風呂が付いている物件も賃貸では中々無い物でして。賃貸でなく、購入する物件であれば他にも候補があるのですが。」
「そうですか。明日その物件を見に行くことは可能ですか?」
「え?…あ、はい可能ですが、正気ですか?」
賃貸担当のギルド職員さんがマジでと言う顔をしている。きっと私の正気を疑っているんだろうな。
中心部までくる道は、ランと一緒に土魔法で整備すれば問題ないし、家の状態によるけど、それも何とかなる気がする。
使えない家具は廃材にして、火にくべれば問題無し!
その物件が気に入らなければ、借りないで他の方法を考えればいいしね。
「正気です。もし可能なら間取り図を見たいのですが、ありますか?」
「え、えぇ。ございます。取ってまいりますので、少々お待ちください。」
1分もするかしないかの時間で、間取り図を持って戻って来た職員さんにお礼を言って、間取り図を見せてもらう。
建物自体はL字を横にした形で、庭もそれに合わせる形でL字型をしており、敷地は塀か何かで囲まれた長方形。門から玄関まではアプローチになっている様だ。
部屋の間取りは、3LDKで、1階にキッチンとダイニング、その隣にお風呂。廊下を挟んだ向かいにキッチンとダイニングを合わせたのと同じ大きさのリビング。キッチンには地下に続く簡易な物置付き。
2階に3部屋あり、1部屋がリビングと同じ大きさで、残り2部屋がお風呂とキッチンとダイニングを足して2で割った大きさの部屋になっていた。
間取り事態は悪くはないけど、広さの縮尺が載ってないから何とも言えない。
それと出来れば1階にもう1部屋欲しかったけど、他にないんじゃ仕方ないし、取り敢えず見るだけ見てみよう。
職員さんはドキドキしながら、私の反応を伺っている。
「間取り事態は悪くないので、やはり明日見せて頂いても良いですか?
時間は朝3の鐘ぐらいの時間でどうでしょうか?」
「見に行かれるんですね!?
分かりました。明日も私がご案内させていただきます。明日の朝3の鐘にこちらでお待ちしております。」
「宜しくお願いします。」
職員さんが何だか感無量と言った感じだけど、大丈夫かな?あの物件に何があるんだろう。
さて、検討する物件が少なかったから時間が余ったけど、この後どうしようかな。あの量の鑑定じゃ、まだ終わらないだろうし。ギルドマスターには賃貸の受付にいるって言ったからあまり動く訳にはいかないよね。
そんな事を考えていると、スッと後方に気配を察知した。別に後方に人が居ても、誰かいるなーぐらいしか思わないけど、私に意識を向けて、尚且つ気配遮断をしていれば嫌でも目立つ。いや、普通は目立たないんだろうけど。
私は慌てる事無く後ろを振り向く。すると目を瞠ったイルファンさんがいた。
「何か御用ですか?」
「…よく気が付かれましたね。
んん、ギルドマスターからの伝言を預かりましたので、伺いました。」
驚いて少し取り乱したのを、取り繕うように1度咳払いをしてから本題に入った。
「鑑定する物の量が多いので、予定よりさらに1時間程掛かってしまうそうです。いかがしますか?」
「そうしたら、明日の朝3の鐘にここに来る予定があるので、その予定の前か後でどうでしょうか?」
「それでは、そのご予定の後に致しましょう。その様にギルドマスターと担当者に伝えておきます。
失礼致します。」
イルファンさんが一礼して去って行った後に、賃貸担当の職員さんが驚いた表情で話しかけてきた。
「よくイルファンさんの気配分かりましたね。この商業ギルドで彼の気配を察知出来るのは、ギルドマスターだけなんです。だから、彼が突然後ろから声を掛けられて悲鳴を上げるのが、ここでは何時まで経っても恒例なんですよ。
ほら、あんな感じで。」
丁度、他の職員にも用があって声を掛けられた職員が‘ひゃいぃ’と声を上げた所だった。
私に対してあの態度だった訳でなく、いつもあんな調子なのか。警戒して損した。
私は、賃貸の職員さんに曖昧に微笑んでから‘また明日’と挨拶をして席を立ち、商業ギルドを後にする。
この後の予定は、洸ちゃんの仕事終わりに合流するだけだけど、まだ時間には早いから、街の探索をしようっと。
湯屋を探そうと思ってたけど、あの番頭、商業ギルドで何かしらの罰を受けてるだろうから、今日も昨日と同じ湯屋に行けばいいや。
賃貸で借りる家の家具があまりあてに出来ないから、家具屋とか探してある程度家具に目星つけるのも良いし、女性ものの洋服見るのも良いよね。
さて、あと1刻弱、街探索を楽しむぞ。
『ティナ、楽しそうだね』
『楽しそー』
ふー、それなりに良い物見つけられてよかった。1か所だけちょっと不服だったけど、当たりのお店が多かったから良しとしよう。あの服屋には2度と行くことは無いけどね。
家具も、リーズナブルでいい物があるお店を見つけたし、満足満足。
さて、そろそろ冒険者ギルドに戻って洸ちゃんと合流しないとね。
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