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勇者の鍛冶師  作者: 芝 恵実
第1章
21/49

21話

鍛冶屋の中に入ると、服屋のお兄さんに似た人がカウンターに座ってた。

年齢的にもこの人が服屋のお兄さんのお兄さんなんだろう。


「ここは、お嬢ちゃんみたいな女の子が来る所じゃ…、いや、ちゃんとした客だな。

お嬢ちゃん程の子が満足できるような剣があれば良いんだが。」


おぉ、このお兄さんはちゃんとした()を持ってるね。

私みたいな恰好をした子が店に来たら、冷やかしかとかに思われがちなのに。それなのに、私をちゃんと見た瞬間に私の隠してる実力を見極められるなんてスゴイ。

ここはきちんとした店みたいで良かった。紹介してくれた服屋のお兄さん、本当にありがとう。


「今日は剣を探しに来た訳じゃありません。」


そう言って、鍛冶屋のお兄さんの前に一振りの剣を差し出す。

鍛冶屋のお兄さんは、眉間に皺を寄せ、私から剣を受け取ると、今度は目をこれでもかという位見開いた。


「この剣は一体誰が…。」

「私が鍛えた剣です。本職は鍛冶師なので。

それでお願いがあるのですが、私がこのラビリンに居る間、時々で良いのでここの工房を使わせてくれませんか?

もちろん、お代は払います。」

「お嬢ちゃんがこの見事な剣を…。

工房は…、親父に聞いて見ないと何とも言えないな。それに、材料になる鉱石も殆ど手に入らな状態だし。

それに、新たに剣を鍛えてるのが分かるのはチョット、な。」


鉱石が手に入らないだけが問題じゃないのか。一体何が…。


「お嬢ちゃん程の腕が合って、なんで他で工房を探している?

今までいた工房はどうしたんだ?」

「それは…。」


どうしようか。ここは正直に王都の鍛冶屋で働いていた事とかを話した方がいいか。でも、そこまでこの人を信用していいかはわからない。

その時、奥から老齢のおじいさんが出て来た。


「どうした、久しぶりのまともなお客か?

って、ティナお嬢さんじゃないですか!?無事だったのですね。良かった。行方不明だったから心配してたんです。」

「ジルダさん!?

田舎に帰って、私が産まれる前に1人立ちした息子さんと一緒に鍛冶屋を細々とやるって言ってませんでしたか?」


ジルダさんは、3年程前に田舎に帰って、1人立ちしている息子さんと一緒に鍛冶屋をやると言っていたのだけど、ここって、田舎じゃないし、それなりに都会だよね?


「ははっ、ティナお嬢さんは私の生まれがラビリンだとは知らなかったんですね。」

「お、親父、話に付いて行けないんだが。このお嬢ちゃんが親父の話していた天才鍛冶師のティナお嬢さんなのか?」


天才!?誰が?私が??

至って普通の鍛冶師ですけど。まぁ、年の割には鍛冶師のレベルも高いけど…。ジルダさんは一体どんな話を息子さんにしたのーーー!?




私が少し落ち着いた所で、ジルダさんと鍛冶屋のお兄さんことゼルさんに促され、奥の部屋へと案内された。

お客さんが来ると困る事もあるからと、お店は臨時休業にして。


「ティナお嬢さんの行方不明は、王都から出ていたのですね。

もしかして、この鉱石不足で自ら鉱石の採掘に出向いていたのですか?

ガゼル師匠も…親方も一緒ですか?」

「お祖父ちゃんは春に親方職を父さんに引き継いで、自分の故郷に帰ってます。本当は家族みんなで行く予定だったけど、流石に拙いだろうとなって、数年に分けて一人ずつこっそりと向かう予定だったんですけど。

あっ…と、王都での行方不明は、採掘士の身分を使って王都を出てダンジョン内の鉱床で採掘していたので、王都に居る筈なのに本人が見つからなかったからでしょうね。」

「よく、王都に戻る前に鍛冶師狩りの事に気が付きましたね。」

「実は王都に着く直前に、『銀狼の牙』のディックに会って王都の情報を教えてもらったんです。」

「そうでしたか。

『銀狼の牙』のメンバーには贔屓にして貰っているので、今度お礼で何かおまけしないとな。」


ジルダさんは、私とお祖父ちゃんの状況を知って安心したのか、ジルダさんのシンボルともいえる顎髭を撫でている。

ゼルさんに至っては、事の成り行きを見守っている。

そう言えば、さっき気になった‘新たに剣を鍛えてるのが分かるのはチョット’というのはどう言う事だろう?

聞いてもいいのだろうか?


「お嬢ちゃん…っぃて、何しやがる親父!?」


ゼルさんが私の事をお嬢ちゃんと呼んだ瞬間、ジルダさんがものすごい勢いの拳骨を落とした。あの勢いで頭われないの!?確かジルダさんって、拳で岩を砕けた気がするんだけど…。気にしたらだめだ。

その間も、親子喧嘩?が続いていた。


「ティナお嬢さんに向かってお嬢ちゃんとは何事だ!

お前の師匠でもあるガゼル師匠のお孫さんだぞ。少しは呼び方と言うモンがあるだろうが。」

「俺直接会うのは初めてだから仕方ないだろ。

うーん…ティナちゃんでいいか?」


ジルダさんはゼルさんをすごい勢いで睨んでいるが、私はお嬢ちゃんでも別に構わないし、何でもいいから、ゼルさんに頷く。すぐに返事をしないと、ゼルさんの頭が割れる気がする。

私が頷くのを見たジルダさんも、ティナお嬢さんがそう言うならと渋々ながら認めた様だ。

ジルダさんにとって、お祖父ちゃんはとっても偉大な人で、その家族も含めて尊敬してしまっている様なお祖父ちゃん第一主義だ。弟弟子――と言っても1~2年の差だけど――である父さんにも、かなり下の妹弟子にあたる私にも異常なまでに丁寧だったな。ちょっと、扱いに困る時もあったけど。


「それで、ティナちゃん。工房を使いたいって事だったが、それは新たに剣を鍛えたいって事だろ?

本当だったら鍛えさせてやりたいが、今は拙い。

と言うのも、どうやらガンセさん達でも“勇者”様の求める剣が作れていないらしい。それで、王都の鍛冶師を粗方狩り終わったもんだから、今度は王都周辺に手を伸ばそうとしている。だがな、この鍛冶師狩りはプラウディア王女の独断で行われた様で、流石に国王も焦ってプラウディア王女を何とか止めて、後始末に追われているらしい。だから暫くは他の都市で鍛冶師狩りが行われる事は無いが、もし再会した時に最初に狙われるのを防ぐ為に、どの工房も新たな武器を作製していない。

そうじゃなくても、鉱石を押収されかねないからな。」


そんな事情が。と言うか、聖剣なんてそんな簡単に鍛えられる筈ないでしょうが。それよりも…


「…父さん達は無事なの?」

「「……………。」」


沈黙が落ちる。

さっき、鍛冶師狩りはプラウディア様の独断で行われたって言ってた。あの王女様は短気でも有名だ。勇者が引いてはプラウディア様が望む物を作れなかったと言う事は、もう殺されている…?

どんどん気持ちが沈んでいく。もしそうなら、私はあの王女様を殺してやりたい。でも、それをする訳にはいかない。洸ちゃんにあの女に復讐するのはやめろと言ったんだから。だったらどうしたらいいの?


お読み頂きありがとうございます。

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