20話
私が冒険者ギルドを出てまず向かったのは、昨日も行った商店の立ち並ぶエリアだ。
まずは、情報収集をしようかね。
今日は洸ちゃんが居ないので、スイスイとスピードを上げて歩く。昨日の歩くスピードは洸ちゃんに合わせて歩いていたから、逆に疲れたんだよね。
まずは、鍛冶屋か武器屋か防具屋に行って、王都の鍛冶師狩りの情報でも仕入れようかな。この街ではどの程度の認識で広がっているのかと、そうじゃない場合の警告をしないと。
商店の立ち並ぶエリアを暫く歩いてもそれらしい店が見つからない。
ここじゃないエリアにあるのかな?
取り敢えず、どこかで情報を仕入れないと。あ、あそこのお店で聞こう。
「すみません。この服欲しいんですが。」
「あぁ、構わないが…それ男物だぞ?
お嬢ちゃんみたいな可憐な子には似合わないと思うが。」
「今日は休養日だからこんな格好ですけど、普段は冒険者してるんで。」
「へー、お嬢ちゃんみたいな子がね。
まぁ、魔法使いだったらお嬢ちゃんみたいな子はいるか。でも服もガッツリ男物を着る子は珍しいね。」
「こう見えて、戦士なんです。」
「はぁ!?お嬢ちゃん、悪い事は言わないから怪我をしない内に辞めた方が身のためだぞ。何だったら、うちで雇ってやってもいいし。」
「お兄さん優しいですね。でも、心配無用です。Aランクの冒険者なので。」
「…人は見かけによらないって言うが。それに、もうお兄さんって歳じゃないがな。
シャツとズボンがそれぞれ5枚と、厚手の靴下が8足に…、お嬢ちゃん、この男物の下着も着るのか?」
「それは、連れの分です。」
昨日の時点で、下着の事は全く気にしてなかったけど、夜に洗濯をした時に洸ちゃんの下着が有って、そこで初めて下着を渡してない事に気が付いた。最初から気が付いていたとしても、流石に持ち合わせがないから渡す事は出来なかったけど。
洗うのは恥ずかしかったけど、ないのは可哀そうだと思って洗った。
朝の時点では干してあったから、恐らく朝の鍛錬の時はノーパ…ゲホゲホ。
今日ギルドで働いた分で買えるか分からなかったし、下着が無いのはすぐに困ると思うから買っとくべきだと思って。
服屋のお兄さんが、微妙な顔をしている。もしかして洸ちゃんの事をヒモだと思ってるかも。
「無一文で行き倒れてたから、助けたんです。
この分の代金は彼がお金を稼げた後で払ってもらいますから、心配しないで下さい。」
「なんだろう。お嬢ちゃんの将来が心配になるわ。」
何故だろう。よくそのセリフを言われる。
二へラッと笑って誤魔化すことにして、肝心の鍛冶屋の場所を聞かないと。
「お兄さん、代金はいくらになります?」
「おっと、そうだったな。
全部で銀貨6枚と小銀貨7枚だな。内訳はシャツ3枚がそれぞれ小銀貨5枚、シャツ2枚がそれぞれ小銀貨8枚、ズボン5枚はそれぞれ小銀貨5枚で、厚手の靴下8枚と男物の下着3枚がそれぞれ小銀貨1枚だ。」
妥当な金額だな。うーん、妥当過ぎて値切り難いな…。
よし、小洒落たシャツ2枚をそれぞれ小銀貨1枚ずつ値切ろうかな。
「お兄さん、このシャツ2枚を小銀貨7枚にそれぞれして下さいよ。
中々お目にかかれない様な洒落たシャツだから頻繁に着たいけど、それぞれ小銀貨8枚だと買うのにちっと躊躇っちゃうし…。」
そう言いつつ、私よりも背の高いお兄さんを潤んだ瞳で上目遣いしてみる。
これで落ちてくれたら楽なんだけど、私の見た目が可愛いとか胸が大きい訳じゃないから中々落ちてくれないんだよね。
男の人に値引き交渉するの苦手なんだよね。これがおばちゃんとか若い女の子だったら、簡単に落とせるんだけど。だって、女性が言われて嬉しい言葉はしっかりと分かってるからね。
「う、そういう目は、おっちゃん慣れないんだよな。
こんな男物しか置いてない店に若い女の子が来る事なんてないし、嫁もいないからな。
しゃあない、若い女の子とおしゃべりさせてもらったから、銀貨6枚と小銀貨5枚にしてやる。
次からは値引きしないからな。と言っても、それだけ服を買い込んだら次に買いに来ることは中々ないけどな。」
「お兄さんありがとうございます。
そうだ、お兄さんに教えてもらいたいんですが、鍛冶屋か武器屋はどの辺りにありますか?
さっきからこの辺りのお店が多いエリアで探してても見つからなかったので。」
ちっと、チョロ過ぎませんかお兄さん。
確かに冒険者で重戦士やってますって言っても違和感が無い様な大きい体をしてるし、それなりに厳つい顔をしてるけど…。
「鍛冶屋か…。最近は鉱石が中々手に入らないのも合って、鍛冶師の親父達はあれてるからな。それに、王都での鍛冶師の待遇の噂が入って来てるから、行くのはお奨め出来ないが…。」
お兄さんが声を潜めて、辺りの様子を伺っている。
それよりも、鍛冶屋に行かないでも噂話が聞けるとはラッキーだな。
私もお兄さんに合わせて声を潜める。
「それって、鍛冶師狩りの事ですか?」
「良い得て妙だな。
王都一と言うか、王国一と言われるガゼルの鍛冶屋の鍛冶師達が見世物の様に王城へ連行されたらしい。
只、その中には、ガゼル本人とガゼルの孫娘の鍛冶師は含まれていなかったらしい。
俺の親父と兄貴が鍛冶師だからその情報を知っていたが、お嬢ちゃんは何処でそれを知ったんだ?」
「私、王都から来たので。」
「…そうか。あぁ、それで鍛冶屋の場所だったな。王都での事があって、鍛冶屋は休業してる所が多いから、俺の実家の店でいいか?
北門の近くで、薬屋の所にある路地を曲がった少し先にある。」
ちょっと立地が悪いと思ってしまうけど、何か理由があるのかな?まぁ、立ち入った事を聞く気もないから別にいいけど。
「ありがとう、お兄さん。
これからそこへ向かってみますね。」
私はお兄さんに手を振りながら、お店を後にした。
思いがけない所で情報を聞けたけど、ちょっと訝し気だったよね。何か不味い事でも言ったかな?
見つからない私やお祖父ちゃんの事をどうしようしているかの情報があればいいし、父さん達が王城でどんな扱いをされているのかが分かればいいんだけど。
そんな事を思いつつ、私は北門の方へ向かって行く。
洸ちゃんがギルドの特別依頼が終わるまで、あと2刻ぐらいか。
それまでにギルドに戻らないといけないし、昨日とは別の湯屋も探さないといけないし、あと、商業ギルドにも顔を出したいから、色々と忙しいかも。
そんな事を考えていると、北門近くの薬屋を発見した。あ、そうだポーションも補充しなくちゃ。ここは鍛冶屋からの帰りでいいや。
確か薬屋の所の路地を曲がった少し先って言ってたよね。
お兄さんは路地って言ってたけど、それなりに大きい道だから路地って言えないと思うな。
でも他に道はないからこの道で良い筈。
暫く歩くと、鍛冶屋の槌のマークの看板があった。ここが、服屋のお兄さんの実家の鍛冶屋か。
それじゃあ、中に入りましょうか。
お読み頂きありがとうございます。




