2話
「いきなりなんだ、親父。
またティナが何か仕出かしたのか。」
「仕出かしたぞ。その件で話がある。リナリーも呼んで来い。」
お父さんが困惑気にお母さんを呼びに庭の方へ行きました。
お母さんはこの時間は、庭で趣味の土いじりに夢中だろうから庭に100%いるだろうな。
それよりもお母さんも呼ぶと言う事は、家族会議になると言う事か。
やっと、見習いにさせてもらえる気がしてきたな。
「お義父さん、どうしたんですか?ティナがまた見習いの子でものしちゃったんですか?」
「…ティナ、紹介しろ。」
「昨日契約した精霊のレイムとランだよ。」
『初めまして―』
『ランです、初めまして』
「あらー。初めまして、レイム君とランちゃん。
昨日契約したって事だけど、今までうまく隠れていたのね。」
『えへへ―』
『ティナが驚かせたいって言ったから』
あっ、お祖父ちゃんの米神がピクピクしてきてる。これは雷を落とされそうだな。
お父さんは呆れ顔をしてる。
呆れられるような事をしたつもりは無いんだけどな?
「リナリー、ティナはよく自由時間に森に行っているのか?」
「自由時間の行動まで私が知るはずないじゃない。子供は自由に伸び伸びと育てるのが一番よ。」
お母さんの発言を聞いて、お父さんはため息を吐きだしてるよ。
お父さんもお母さんがこんな性格なのはよく分かってる筈なのに、今更ため息してもね。
幸せが逃げて行っちゃうよ?
「ティナ、今更ながらに聞くが、工房に顔を出していない日は街で同じ年頃の子供達と遊んでいるんだよな?」
「遊んでないよ。私がドワーフ族だから、遊び場に行くと色々と面倒が起こるから。」
「そうか。益々この国では生きていきにくくなってきてるな。親父どうする?」
「それは、また後で考えればいい。」
「そうだな…。じゃあ、工房に顔を出していない日はどこで何をしてるんだ?」
「冒険者ギルドに登録してるから、森に行って薬草採取したり、魔物狩ったりしておこずかい稼ぎしてるよ。」
「「はぁ!?」」
「お前の歳で冒険者ギルドには登録できないだろっ!?」
「それは、私が一筆書いて許可したから大丈夫よ。」
「リナリー、何考えてるんだ!?」
「ティナ、いつから冒険者ギルドに登録している?」
「5歳になった次の日から。私も大きくなったら、お祖父ちゃんみたいに世界を見て歩きたいから、早い段階から鍛えておくべきだと思って。
世界を見て、いつかお祖父ちゃんみたいな腕が良くて尊敬される鍛冶師になりたいんだ。」
「ティナ、お父さんは!?」
「ステータスと冒険者のギルドカードを見せなさい。」
「はーい。これが冒険者のギルドカードで、《ステータスオープン》。」
名前 :ティナ 5歳
種族 :ドワーフ
Lv :16
職業 :鍛冶師
HP :2700/2700
MP :2000/2000
魔法 :火魔法・土魔法・精霊魔法
スキル:精製・鍛錬・採掘・鑑定・採取・気配察知・槌術・柔術・剣術
契約者:レイム・ラン
私はEランクになっている冒険者のギルドカードを祖父に渡し、ステータスも皆が見れるようにオープンで展開する。
冒険者のギルドカードと私のステータスを見て、お祖父ちゃんとお父さんは瞠目して、お母さんは相変わらずのほほんとしている。
この家の中で最強なのはお母さんだよね。何事にも動じないから。
「あら、二ヵ月で見習いのFランクから駆け出しのEランクに上がったのね。おめでとう。」
「ありがとう、お母さん。」
「いやいやいや、FランクからEランクに上がるのには50件の任務達成が必要だろ!?
5歳児が二ヵ月でランクアップするのはおかしいだろ!?」
「でも、実際なってるんだから現実を受け止めなくちゃ。
それに、ティナは昔から随分大人びた子でもあるんだから、不思議じゃないでしょ?
この歳で2体もの精霊と契約出来てるんだから、なおさらよ。」
「だけどな…。」
「ガンセは少し落ち着け。
ティナは、本気で鍛冶師になるつもりか?工房にいる間は、孫娘と言う甘えは一切許さないぞ。それでもやるか?」
「やります。元からそのつもりです。」
「分かった。工房にいる間は一切孫娘、そして女の扱いをせんからそのつもりでいろ。
明日から、お前も見習いとして工房で働け。冒険者の活動は休日の日のみだ。それも、リナリーの手伝いが終わった自由時間のみだ、良いな?」
「ありがとうございます。」
「親父っ!」
「ガンセとリナリーと話がある。ティナは部屋に行け。」
やった!お祖父ちゃんに認めてもらえた。明日から頑張るぞー!!
お祖父ちゃんに言われた通り、居間から出て自分の部屋に向かい、レイムとランと喜びを分かち合ってから、今まで盗み聞きしていた内容を紙に書きだしながら復習しておこう。
紙は高級品だから、大切に使わないと。誤字に気を付けよう。
あとは、朝の見習い達の動きを思い出して明日からのイメージトレーニングをしておかないとね。
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「親父どう言うつもりだ?
ティナには弟子の中から腕のいいやつを婿にとって、その婿に跡を継がせるんじゃなかったのか?」
「確かにな。女が工房に入り鍛冶をすることは考えられん。」
「だったら…」
「だがな、ティナはしっかりとドワーフの…鍛冶師の素質を受け継いでいるしステータスの職業も鍛冶師だ。それに5歳であのステータス値まで伸ばした才もある。尚且つ、ティナが契約した精霊達は高位の精霊だ。
それにドワーフ自体が数を減らして、優秀な鍛冶師が減ってきている。
女でも、優秀な鍛冶師になれる可能性があるのなら、やらせてみる価値はあるんじゃないか?本人たっての希望でもあるんだしな。」
「そうかも知れないが、その件はそこまで深刻じゃなかった筈じゃ…。」
「ドワーフの隠れ里から、書状が届いていてな。この国から離れる目途が立ったら隠れ里に戻って、鍛冶師の育成指導に当たって欲しいと来ている。」
「そんな状況になってるのか。いつ頃戻る予定だ?」
「ティナが成人してから戻る事にする。それまでに、お前にこの工房を任せるでもいいし、手放して家族揃って隠れ里に行くでもいいしな。」
「あと13年以内に決めなきゃいけないって事だな。」
「そうだ。だからこそティナに鍛冶師にさせるのも良いかと思ったのもある。」
「そうか…。それでもティナの婿は俺と親父が認めた才能がある鍛冶師にするべきだよな。」
「ガンセ、みっともないわよ。いくらティナをお嫁に出したくないからって。
それに、ティナが鍛冶師になるのであれば旦那になる人は鍛冶師でなくてもいいじゃない。
あの子が選ぶ人をちゃんと認めてあげないと、その内嫌われるわよ。」
「だが、もし悪い男に引っかかったりしたらどうするつもりだ?」
「大丈夫よ、あの子はしっかりした大人の考えを出来る子なんだから。
そんな事よりも、明日からが楽しみね。」
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