18話
「剣道の経験は?」
「小学校の時近所でやってたのを少しと中学の体育の武術の選択でやっただけ。」
本当は知っているけど、聞いておかないと私の前世が洸ちゃんの知り合いだとばれるかもしれないからね。小学校の時にやっていたのも1~2年ぐらいだった筈。
「じゃあ、ほとんど出来ないのと同じかな?
まぁ、竹刀とこの世界の剣じゃ仕様が違うから、剣の持ち方から教えるけど。」
「それって、聞いた意味ある?」
「それなりに経験者だったら、それに合わせて刀を作ってもいいかとも思っただけだよ。
無理にスタイルを変える必要は無いからね。」
「どうせ剣を持つなら、刀に憧れるけどな。」
「男の子ってそう言う変な憧れがあるよね。私も鍛冶師として是非とも刀を作って普及したいけど、現実問題、使いこなせる人はいないだろうから魔剣でしか作ってないし。」
「刀作ってるの!?
男云々の事言えないと思うけど…。」
「…じゃあ、早速剣の持ち方だけど、その剣を渡しといてなんだけど、どういうスタイルで戦いたい?」
「スタイルって?」
「例えば、盾も持って敵を惹きつけながら戦うとか、スピードを生かして敵を翻弄しながら戦うとか、大剣を持ってそれで相手を薙ぎ払い攻撃を大剣で受け止めて戦うとか。
選んだスタイルが合ってるか合ってないかは別にして、まずは、これからそれで戦う洸ちゃんの意見を聞いておかないと、教えようもないからね。
ちなみに、普通はって聞かれても答えられないよ。戦闘スタイル何て十人十色なんだから。」
洸ちゃんは考え込んでしまった。
これからの生きる道筋を今ここで決めろと言われている様なものだから、考え込むのは仕方ないけどね。
う~ん。これは効率悪くなるけど、先に魔法の方を教えた方が良いかもしれないな。でも、洸ちゃんは明らかに魔法職には向いていないし、何よりステータスの職業が剣士だから、剣の道に進んだ方が他の道に進むより習熟度が高いからな。
それとも、水属性の特性を生かした回復士になる道を示すか。その場合は、ある程度の自衛が出来る様にナイフ術を教えればいいし。
「ティナはどんなスタイルで戦うんだ?」
洸ちゃんに提案する内容を考えていたら、質問をされた。私の戦闘スタイルか。
「一言で言うと、多種多様。
今までソロで活動してきたから基本的に何でもできるよ。ただし、回復はもっぱらポーションだよりだけど。
森の中での戦い方を見て分かってるかもしれないけど、私は相手によって武器を変えてる。
例えば、剣が通り難いロック系の魔物には槌で攻撃するし、動きが素早くお肉や毛皮が売れるウルフ系やラビット系とかの魔物は剣で、剣も物理攻撃も効き難いスライム系は魔法で、遠距離とか空から攻撃してくる魔物は飛びナイフでって使い分けてる。
その中でも主武器は決めてて、主に槌を使う様にしてるよ。やっぱり、槌だと職業との相性もいいからね。」
「それって、俺にも出来るか?」
「難しいと思う。
私の場合は5歳から鍛冶師見習いとして働いてきたから、色んな武器の扱いも慣れたもだったのもあると思うし。」
「…そうか。」
洸ちゃんはそう言うとまた考え込んでしまった。
このままじゃ埒が明かないから、取り敢えず剣のスタイルは置いておいて、魔法の方に取り掛かろうかな。
「洸ちゃん、剣のスタイルは明日までに考えて。
今日は剣の鍛練は止めて、魔法の鍛練にしようか。」
「え?あ…うん、分かった。」
私は洸ちゃんの返事を聞き、両手を前に差し出した。一体何だと一瞬顔に出ていたが、すぐ私の両手に恐る恐る手を載せた。顔が赤いけど大丈夫だろうか?
「今から私の魔力を流すから、それを感じ取ってね。」
今度は耳まで赤くして頷いてるけど、私何か変な事言ったかな?
暫く魔力を流して、洸ちゃんの魔力を動かしつつ様子を伺う。まだ、何も感じ取れた様子はないかな。
まぁ、いきなり魔力を感じろって言われても分からないよね。
いきなり血の流れを感じろって言われてる様なものだし。
この世界の人だって、魔力の流れを感じて魔法を使ってるかは怪しいからね。そこに魔力があるのが当然と思ってるだろうから。
そんな事を考えてると洸ちゃんからアッと言う声が聞こえた。もしかして、魔力を感じ取れたのかな?
私は手を放し、様子を伺う。
呆然と両手を見つめていた洸ちゃんがボソリと呟いた。
「これが魔力…。」
どうやら、魔力を感じる事が出来る様になった様だ。
それだったら、1つ水魔法の呪文を教えようかな。
「洸ちゃん、水魔法の簡単な呪文教えるね。
まず、人差し指に魔力を貯めて、そして呪文を言う。
小さな水よ、その姿を現せ。」
「小さな水よ、その姿を現せ。」
私が人差し指を立てたのを真似して、洸ちゃんも人差し指を立て呪文を唱えた。
すると、人差し指から1㎝程の空中に10㎝程の水球が現れた。
ちっと魔力を貯めすぎたみたいだね。
「貯めた魔力の分だけ、発現する魔法は大きくなるよ。ただし、呪文で指定してる大きさを越えすぎると、体に負担がかかるから注意して。そろそろ、魔力を霧散させて魔法を解除した方が良いと思うよ。」
「わっと、と。
ティナ!俺にも魔法が使えた!!魔力を感じられたよ!」
「良かったね。おめでとう。
じゃあ、今日の鍛練はここまでにして、ギルドに行こうか。」
「その前に、何か腹ごしらえがしたい。腹減った。」
「そう言うと思って、リリちゃんにお肉たっぷりのサンドウィッチ頼んでおいたから、食堂に寄ろうか。」
食堂に寄り、リリちゃんのお父さんが洸ちゃんにサンドウィッチを、私には美味しい果実水を持って来てくれた。
私用に果実水もサービスしてくれた様だ。ありがとうございます。
洸ちゃんもサンドウィッチを食べ終わったので、洸ちゃんだけ先に部屋に戻って着替えてもらう。流石に、洸ちゃんの着替えてる部屋にいるのは気が引けるからね。
入れ替わりで私も着替えるけど、服装どうしようかな。
洸ちゃんをギルドに連れて行って、冒険者登録をした後は、私は街の散策でもしようかな。
だったら、女物の服でいいよね。
中庭の井戸で水を汲んで、手ぬぐいを浸す。2枚ほど手ぬぐいを浸したら、部屋に戻って着替えようか。
部屋の扉をノックして返事があったので中に入り、洸ちゃんに外で待ってるように言って着替える。
手早く手ぬぐいで体を拭いて、昨日とは別の服を取り出す。
昨日の反省を生かして、襟付きの濃紺色のワンピースで、スカート部分には白色の刺繍が入っている。
うん、これなら恥ずかしくないね。
「お待たせ。ギルドに行こうか。」
「…あぁ。」
胸元はちゃんと隠したのに、ちょっと引き気味なのは何故!?
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