11話
少し長めです。
冒険者ギルドへ早速向かおうと思ったけど、洸ちゃんの足元に目が行ってしまった。
まずは、靴を買わないといけないな。
貴族の靴の様なローファーを履いてて、服が平民の服で冒険者スタイルとか違和感しか感じない。
洸ちゃんに行先を言おうと目を見ると、初めて見る街並みに目をキラキラと輝かせて見つめている。
まぁ、西洋風の石造りの街並みで、THE・ファンタジーだからね。歩く人の恰好とかが。
洸ちゃんも既に靴以外が風景に馴染んでるのに気が付いてるかな?
「洸ちゃん、感動中に申し訳ないけど靴屋に移動しよう。」
「ふへっ!?
冒険者ギルドじゃなくて、靴屋?何で?」
「その靴が、悪目立ちするからだよ。
その恰好で、冒険者ギルドへ行って、変なのに絡まれたくないでしょ?」
そう言うと、首をブンブンと激しく振り出した。その勢いって、首もげない?
王城の騎士からされた扱いを考えると、変なのに絡まれたくないんだろうな。
アークと契約したからそれなりの水魔法が使える…って、まだ、魔法の使い方を教えてないからそれも無理か。
教える事が色々あるから、これからが大変だなー。
「なぁ、ティナ。
靴もそうだけど、服も買いたいと思ってるんだけど…。この国の物価とかってどんな感じなんだ?
何時までも、ティナに負んぶに抱っこじゃ流石に…。」
「男のプライドが傷つく?」
「っ!?
…悪いかよ。」
「良い事だと思うよ。
この世界、なまじレベルがあるから、顔だけ男が女性に寄生することも珍しくないから。
そしたら、その今着ている分の服とか装備は私からの、これから冒険者として頑張れってエールの気持ちって事で、プレゼントして受け取って。
私のお古で申し訳ないけど。
これから買う分は、洸ちゃんへの借金と言う事でいいかな?それだったら少し、は気にならないでしょ?」
「だったら、全部借金で良いのに。」
「その剣も、私が昔練習で作った分だから気にしないで。それに、今、剣とかは値が高騰してて、Eランク冒険者が買えるような剣だと、粗悪品でしかないからね。
そんなの買って怪我されたら、それこそ助けた私が馬鹿みたいじゃない。」
「剣ってそんなに高いの!?
それじゃあ、なおの事――痛い。」
プレゼントした剣を受け取れないと言いそうになっていたので、チョップを喰らわせた。
何時までもグチグチと言っているのは、男らしくないぞ。
「ほら、時間は有限なんだからさっさと靴屋に移動するよ。」
涙目になっている洸ちゃんを尻目に、通りに足を踏み出す。
ラビリンの街にはダンジョンにしか行かないからそこまで詳しくないんだよね。
何でディックにお奨めの場所を聞いとかなかったんだろ。あと、この街の知り合いなんて、ディックの奥さんのターニャとギルマスと『銀狼の牙』のクラウンメンバーぐらいだからな。みんな忙しいだろうから今から聞きに行けないな。
まぁ、商店の立ち並ぶエリアは知ってるから、そこを歩いていたらお店も見つかるでしょ。
「ちょ、ティナ待って。
こんな所で置いて行かないでよ。」
「置いてかないよ。ちゃんと、洸ちゃんも付いて来れる速さで歩いてるでしょ。」
後ろから慌てて追いかけてきた洸ちゃんが文句を言ってる。文句と言うより、知らない所で置き去りにされるのが怖いという恐怖から来てるんだろうけど。
商店の立ち並ぶメインの通りに向かって歩いて行く。洸ちゃんは少し遅れながらも付いてくる。
ちょこちょこ遅れるのは、別に私が早く歩いている訳では無く、洸ちゃんがキョロキョロと物珍しそうに街並みを見ているからだ。
だからこそ、さっきから変なのに後をつけられている。所謂スリをしようとしている人たちだ。お上りさんの冒険者達をメインにカモにしてるんだろうな。
ただ、狙う相手を間違えている。その子、無一文だから。
遂に、後をつけていたスリが行動に移ったようで、洸ちゃんにぶつかって来た。
「うわ!すみません。」
「っち、気を付けろ。これだから田舎者は。」
取れるものが無かったからの舌打ちだろうけど…。あーあ、アークが怒っちゃったよ。
洸ちゃんの頭の上に乗っていた、アークがプルプルと震えだしている。
折角安定した場所でお昼寝をしてたのに、ぶつかられた衝撃で起こされてしまった様だ。それだけじゃなく、洸ちゃんを罵った事もアークの怒りに油を注いだ様だけど。
現行犯だけど、取った物がない為に警邏の兵士に突き出せないから、無視するつもりだったけど、アークがこいつに鉄槌を下す様だな。
『こいつ、魔力も見た目も大した魅力が無いくせに、洸祐に酷いことしたな。≪ウォーターハザー――』
『ちょっと待って、それはやり過ぎ。せめて、≪ウォーターガン≫程度に留めて』
『むー。仕方ないな。≪ウォーターガン≫』
スリをしようとして失敗した男は、既に離れていたがそこは精霊。寸分の狂い無く打ち込んでいる。
男は≪ウォーターガン≫を喰らった為、よろけている。
こちらを睨んできたが、すぐに走り去って行った。ちょっと顔色を悪くして。狙う相手を間違えたと思って、血相変えているだけだから、私は気にしないけど。
「アーク、いくらぶつかられて悪態つかれたからって、魔法をぶつける事は無いだろ。」
「アークを責めないであげて。あいつスリだから。」
「…え?」
「洸ちゃんがお上りさん丸出しだったから、狙われたんだろうね。
大きめの都市だと必ずああいった輩はいるから、あんまりキョロキョロすると狙われるよ。
今回は、洸ちゃんがお金持ってなかったから、いい経験にもなると思って、放っておいたけど、アークは許せなかったみたいだし。」
「そうなのか…。やっぱり、この国は治安が悪いんだな。」
「いやいや、地球だって海外だったら旅行客を狙ったスリとか詐欺は普通にあったからね。」
「あ、そう言えばそうだった。
アーク、責めてゴメン。あと、俺の為に怒ってくれてありがとう。」
洸ちゃんはいい精霊に恵まれたね。精霊は基本、悪落ちしてなければいい精霊だけどね。
「じゃあ、気を取り直して靴屋に入ろうか。ちょうどお店が見えた事だしね。」
「看板に絵が描いてあるのは、異世界だな。」
「識字率が高くないからね。」
そう話しながら、見つけたお店に入る。いろんな靴が所狭しと並べられていて、異世界で初のお店屋さんに洸ちゃんは目をキラキラとさせながら、商品を見ている。
「いらっしゃい。どんな靴をお探しで?」
「こんにちは。彼の靴を見繕いに来まして。
駆け出しの冒険者なので、耐久性の優れたブーツを希望です。あと、彼の履いている靴を買い取ってもらいたいのですが。」
お店の店主が、ご用伺いをしてきたので、こちらの意向を伝える。
店主が洸ちゃんの顔をチラッとみて、そして足元を見やる。
洸ちゃんも自分の事なので、こちらの方に近寄って来た。
「まず、その買い取って欲しいと言う靴を見せてもらおうか。」
「あ、はい。」
洸ちゃんは右足の靴を脱ぎ店主に手渡す。
店主は靴を受け取りながら、洸ちゃんを椅子に座らせた。
そして、暫く洸ちゃんのローファーを色々な角度から眺めながら査定をしている。
「……ふむ。非常に珍しい造りの靴だ。素材も非常に珍しい。
うむ、これは…銀貨3枚と小銀貨5枚でどうだろうか。」
洸ちゃんの方を見ると、この国の…と言うよりもこの世界の物価を知らないので困惑顔をしている。
私は、店頭に並んでいる靴を見て、考える。
もう少し、高値が付けられるはずだね。もしくは購入予定の靴を値下げしてもらうか…よし。
「銀貨5枚ぐらいが妥当だと思うけど、これから購入する予定の靴の値次第ではその値段でも構わないよ。」
「…目利きの出来る嬢ちゃんだな。
だったら、この靴はどうだ?これだったら、この靴をさっきの値で買い取らせてくれたらこれは小銀貨8枚に負けてやる。」
「それじゃあ、たいして負けてないよ。小銀貨2枚ぐらい負けられてもね。」
「はぁ、とんだ嬢ちゃんだ。だったら、小銀貨4枚にしてやる。それでどうだ?」
「交渉成立と言う事で。」
「坊主も良い嬢ちゃんに護衛に就いてもらえたな。
ほれ、サイズはこれで良いだろうから、さっさと履き替えてくれ。」
店主は少し疲れた顔をしていたが、こっちとしては良心的な取引が出来たと思ってるよ。
洸ちゃんが靴を履き替えたので、お店を後にした。
さて、次こそは冒険者ギルド…いや、先に宿屋を確保しておこう。
同部屋は流石に恥ずかしいし。
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