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あらま、恋話ですか?


 恋愛は、社会的強化刺激である。


「凄い、はじまりですわね……」

「まあ…志摩さんセレクトだしな」


 恋は、ある刺激(例:顔、学歴、職種)に対して反応しているのだ。そして、その反応によって、周りに刺激する。この繰返しで私たちの行動は強化されていくのである。

 そう、まるで、パブロフの犬なのだ。


「……夢を粉砕する文だお」

「と、とりあえず、男落とす方法よ!」


 エレンさんに即されて、第5章までとばしていく。

 第5章。正の刺激、タイプ別攻略法。

 チャートに従って皆で指でなぞる。こういうワイワイしながら恋愛チャートとか、とても楽しいですわ!


「ほうほう、癒し系お坊っちゃま男子ね……」

「私は、肉食系ゴリマッチョ…わかってるわね」

「理系草食喪男……喪女の私にはうってつけってやつか」


「私、苦労人ロールキャベツ男子ですって!……ロールキャベツ男子とは一体なんなのでしょうか??」


 まずは、エレンちゃんのゴリマッチョ?というページから開いてみる。

 特徴としては、暑苦しい。肉食系。自分大好き。彼女よりダチ。夜は激しいだけで、テクニック不足。指摘されると逆上の可能性があるので、然り気無く誘導しましょう。まあ、なにより外国人でも日本人でもこういうのにはホモォの可能性ありがつき纏います。 


「OH MY GOD!」


 エレンちゃんがそういい、頭を抱える。思えば、この前のボーイフレンドの一人がホモォだったのでしたっけ…?

 立ち直らない彼女に対してかける言葉が見つからないので、とりあえず次に進みたいと思います。


 亮ちゃんの理系草食喪男。

 女の子に興味があるけども、話しかけ方がわからない。女子に対する謎の嫌悪感、恐怖感がある。話がマニアック。白黒着けたがる。女性に対して大きな経験不足。恋愛マニュアル本やサイトの情報によく騙される。基本的に恋愛には向かない。ただし、医学部医者はこれには該当しない。


「偏見が凄いでござる……」

「偏見が凝り固まってるな……」

「なんだか、凄いですわね……」


 次は私の苦労人ロールキャベツ男子の項目です。


「人生の苦労人。これを選んだ貴女はとんでもなく世間知らずの人の良いお嬢様。これぐらいに人生の酸いも甘いも吸い付くした男で面倒見の良い男でないと厳しい。基本的に女子の扱い方がヘタレ。スイッチが入れば簡単に肉欲に溺れるが、新規開拓(二股とかね)やNTRなどをする勇気は一切ない。そんな器用さもない。とにかく、どじっ子や世間知らずな人をほっとけない……


私、世間知らず、ですものね……」


「まあ、確かにね」

「否定は出来ぬ」


「もし、このような素敵な殿方が現れたら、いいのですが」


「大丈夫、きっと現れるよ」

「本当に?」

「本当だよ。あ、自分のはいいよ。あんま興味ないし」


 志摩姉様から貰った本を閉じる。私の運命の相手なんているのかしら。素敵な、まるで、映画やドラマのような、素敵な殿方が私を見つけてくださるのかしら?


 そんな風に黄昏ていましたら、DVDには凛々子ちゃんセレクトの「絵画と接吻」というホラー映画が始まっていました。


 まって!それ、スプラッター!え、あ、うぎゃ!首、首!!いやああああああああああああああああああああああああ


 美しく、世界は暗転した。


 気がつくと、そこは小さな部屋だった。そこには、一つのブラウン管テレビと、一昔前のゲーム機が置いてあった。

 画面にはなにかが映ってるようだが、砂嵐が邪魔をしてはっきりは見えづらい。


『私は許しませんわ!!』


 ただ、音だけは鮮明で。なんとなく、聞いたことがある、ような、声が流れる。


『何故!このゴミに負けなければなりませんの!!この雌豚!!』


 凄いわね、人をゴミ、雌豚扱いだなんて、私には到底出来ませんわ。


『竜也様は私のです!私のなのですよ!』


 竜也……?誰でしたっけ?あああ、あの元婚約者のしたって、そのような名前だったような……


『お前みたいな屑に興味はない、おれはコイツと生きていく!!』

『お願い!わかって!私達愛し合ってるの!!』


 最近、この似たような声を聞いた。ドラマとかではなく、知り合いの声だと思う。


『誰に指図してるのよ!!竜也様何故そのような凡庸な女なのです??私のが綺麗ですわよ!!私のが貴女に相応しいのよ!!だって、だって、』


 ん……ああ、わかった。わかった。この叫び続ける女性は……


『私は、私は、四宮雛恵なのよ!!!』


 そう、私。私でした。

 ああ、気付いかなければよかった!あの元婚約者に縋り泣くなんて、それこそ四宮雛恵として恥さらしな姿ですわ。

 ああ、これ、夢だとしても、何故そんな男のどこがいいのですか?私には理解できませんわ。


 けれど、これはもしかしたら、何か間違えたら、私だったのかもしれませんね。その可能性があったからこそ今こうも恥ずかしい思いをしてるのでしょうし……!!


 夢の中だというのに視界がふと揺らぎ前のめりになる。けれど、くっ、と、誰かが後ろに引っ張ったことにより、今度は後ろに体重が持ってかれる。

 そして、倒れそうになる私をその誰かが抱き止めてくれる。まるで、それがいつものように。

 そうか、そうか、この人が……


 私の運命の、人なのかしら?




「起きなさいいいいい!!!」

「あいっつつっ!!!痛いですわ!!」


 激痛と共に私は夢の中から引きずりだされる。全力で背中を叩くエレンちゃんを今全力で恨みそうになりましたわ。

 といっても、既に朝7時な訳でして、ただでさえ時間のかかる私なのでして、慌てて支度をする羽目になってしまいましたが。


 寮の食堂で朝食を頂き、自転車を回収するために皆でコンビニへ向かう。コンビニの前にはいつも親切にしてくれるお兄さんが道を掃いていた。


「ごきげんよう」

「おっはー」

「やあ!」

「Hello!」

「ああ、おはようございます」


 掃除しているときはいつもこのように挨拶をしあう。やはり、私の大好きな俳優さんにそっくりでかっこいい…!!

 

 そのまま自転車を回収し、高校に向かった。


 クラスに着くと、ざわりと空気が動いた。どうやら、私の婚約破棄については既に周知の事実のようだ。まあ、白川夫人のことだから、趣味のお茶会をして近況報告でもしたのかしら。

 だとしても、どうでもよい。


「ごきげんよう」


 いつもと変わらず、挨拶すればいいの。堂々と清々しく、だって、後ろめたいことは一つもないのだから。







 都内某日。

 濡れ羽色を美しく纏めあげた一人の女が、同じく艶やかな黒色の高級車から大きなビルを見上げる。脚や首にはなにか怪我した後があり、この女が只者ではないことを周りには示していた。


「……とかね、まあ言ってみちゃったりまるむすてぃーん?」


 上品な色の紫のミニのタイトドレスをばっちり決めた女はスタスタとその会社に入る。

 周りの男は、彼女の美しく露出された背中に魅了される。ただ、周りについている外人の厳つい男達を見て、直ぐ様目をそらしてしまうが。

 そんな危ない雰囲気の彼女に仕事柄か声をかけそうになった受付嬢がいた。勿論、声をかける前に慣れた手つきでさらりとVIP用の証明書を見せる。彼女はこの会社において、重要なお客様なのだ。


「≪……お!このナレーションの私、かっこよくね!≫」

「≪志摩様、独り言はお恥ずかしいのでお止めください≫」

「≪ふへーい!まあ仕方ないよねーん。だって、私はマウリの奥さまよー!≫」

「≪いえ、それは関係ありません≫」


「まあ、いいや。さっさと、いくわよ」

「イキナリ、日本語、キビシイ」

「はいはいなー」


 部下とイタリア語での会話を終えて、ささっと社長室に向かう。今日は顔馴染みの秘書さんだったので、部屋にはすぐに入ることが出来た。

 この前来たときは、随分勘繰られて腹が立ってしまった。


「やあ、久し振りね。三年ぶりかしら?」

「そうだね、まさか新婚ホヤホヤの君がイタリアから帰ってくるなんて思わなかったよ」

「あはははは、そだねー白川社長」


「相も変わらず、口が悪いね。満理に会いたくなるよ」

「はんっ、母さんの名前呼ぶなんて一昨日来やがれ、屑が」


 私は母親の元恋人、現私たちの取引先の白川社長様に会いに来ました。

 いつも通り、ぐちゃぐちゃに殺してやりたくなるような微笑みを浮かべ、愛妻というカマトト屑女の写真を机に置いてますね、このやろう。


「それにしても、何か用?日本に帰ってきてすぐに電報とかまじ、ウケタんだけど」

「あはは、白々しい。しらばっくれなくてもいいのに」


「ふふふふ!!ああ、あのバカがうちの可愛い雛恵ちゃまと婚約破棄したことか!!ははははははは、あれは正解!だって、あんただって釣り合わないってずっと思ってたじゃない」


 白川社長は曖昧に笑うと、机にある写真立てをパタンと倒した。そう、この男は妻が選んだ婚約者候補を見て、驚いたのだ。四宮家の子がいたことに。それはそうだろう、自分が捨てた女の姪を候補に挙げてきたのだ。

 また、雛恵ちゃまに決まった後も、息子よりも優秀なことにいち早く気付き、それとなく奥様に言っていたのだ。

 脳内花畑の奥様には伝わらなかったようだけども。本当にワケわかんない、雛恵ちゃま選んで、息子には「好きな人と結ばれるのが幸せなのよ」なんて。

 ほーんと、ワケわかんないわ。


「いーや、それじゃないだ。君にこれを授けようと思ってね。あれは、遅かれ早かれそうなっていた事だろ?まあ、かなり見物だったけども」


 差し出されたのは、一枚の紙。

 そこには、今までの人生を覆す言葉が書かれていた。


「どーゆう、こと?」

「そーゆう、ことだ」


「ああ、なるほど。やはり、女傑は強かね」


 99.9%


 DNAの鑑定書には、この目の前にいる男と私の親子関係が証明されたのだから。

 いつの間に採取されたのかはわからないけども、この男もよーやるわ、本当に。

 うちの母親は、とっくに知っていただろう。全く、悲劇のヒロイン病患者である自らの妹を騙してまでも、隠したかったことがこれなのか。


「まんまと、食わされたよ……やっぱり、敵わないな……

ああ、やっぱり……俺は……」


「捨てたくせに、言う資格はないわ」


 社長はいつもと変わらない微笑みのまま、俯く。だが、私には泣いているようにしか見えなかった。母親と社長と、奥様と、一体何があったのだろう。だが、それはもう今更って話だ。


 好きならば、奪い取ってでも、全てを捨てでも、命を懸けても、貫けばよかったのだ。

 私はそうして、マウリッツォ=アルグレロと結婚したのだから。

 身体中に銃創や切り傷や鞭の痕が残ることくらい、障害にはならない。


「じゃあ、ね。白川社長」

「ああ、じゃあな。愛しい娘よ」


 私は社長室を後にした。

 ああ、鶴代んとこにいかねーとなあ。




  



就活が終わりました。

就活中に書き上げたものがこれひとつとは…

この話はいつか改修予定なので、

よろしくお願いいたします。

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