~第四話~再開
投稿が遅くなり本当に申し訳ありません。
最後の更新からもう2ヶ月が経っていたとは思いませんでした。
ただ、私も今年受験生と言うことで勉学の方がかなり厳しくなっております。皆様には関係のないことですがこのように投稿が遅くなりがちになると思います。お気に入りや感想をくれた方には申し訳ありませんが何卒ご了承の程よろしくお願いいたします。
「それにしても、なんでティアがここにいる?」
あれからティアが泣き止み、ミーシャが場所を移そうということで客人用の応接間に来ていた。そこにあるソファーに三人は座っていた。
「十年前のあの日にモンスターが村を襲ってきたよね。その時、あの貴族は私を連れて逃げ出したんだけど、私はその隙をついて逃げたんだ。でも、その頃は私も子供だったから何処に行けばいいかも分からないし、体力も無かったからすぐに力尽きちゃったんだよね」
一度ティアはそこで言葉を区切った。
「私が倒れている所に偶然ミーシャさんが通りかかって助けてくれたんだ。ね、ミーシャさん」
「ええ、そうですわ。あの時はびっくりしましたよ。私と年もそう変わらない子供が倒れていましたからね。それからティアの事情を聞いた私は彼女をここに住ませることに決め今に至るという訳ですわ」
「そうだったか······。さっきはすまなかったな。手荒な真似をして」
「フフフ、いいのですよ。何せ、離れ離れになった兄妹がこうやってまた出会えたのですから、怒りなんて湧いてきませんわ」
笑いながら優雅に紅茶を飲むミーシャはやはり貴族なのだと実感させられる。
しかし、紅茶を置いた彼女の顔からは笑みが消えていた。
「一つだけ確認を、あなたはあのクライシス·クレイムですか?」
「そうだ」
間を置かずに言うクライシスにミーシャは難しい顔をしている。
「あの世界最強の大犯罪者がティアのお兄さんだなんて俄かには信じられませんね」
「まぁ、そうだろうが俺とティアが兄妹なのは事実だ」
「姓も同じですし疑う余地は無いのですが······。あなたはこれからどうする気ですか?」
「これからか······」
顎に手を当てながらクライシスは考えている。
クライシスが今まで犯罪を犯してきたことは何も生きるためだけではない。世界中に彼の名が知れれば生きているかもしれないティアを探すのに役立つと思ったからでもある。ただ、そのティアが今見つかってしまい、彼は今何もすることが無くなってしまっていた。
「まぁ、今はティアと一緒にいれればいい」
そう言って隣に座っているティアの頭をクライシスは撫でた。それに彼女は目を細めながら気持ちよさそうにしていた。
「なら、魔法学園に通いますか?」
「魔法学園?」
クライシスはティアの頭から手を放してミーシャの言葉に疑問を浮かべた。
ティアは手が放されたことが嫌だったのかクライシスの腕に抱きついている。
ティアはお兄ちゃん子である。
その光景に唖然としながらもクライシスの言葉にミーシャは言葉を繋げた。
「このライフランド王国に魔法学園があるのは知っていますよね?私は今年で高等部二年になりますがティアは高等部に今年から入学するのですけど、あなたも入学してはどうですか?」
「おい、俺は犯罪者だぞ。魔法学園に入学なんて出来る訳がない」
「そこは大丈夫ですよ。魔法学園は経歴や地位その他全てに関して干渉しません。あなたが犯罪者であろうと関係ありませんし、学園に政府の手が入ることもありません。学園は一つの独立した国のようなものですからね」
「いや、だが」
クライシスが渋るのも無理はない。彼が今更学園に通っても習うことは無いのだ。
クライシスはライフランドから北にあるフレイレン王国の国立図書館に行き魔法の知識を溜めた。夜にもその図書館の禁書室に入り禁忌魔法を覚えてもいる。故に彼は魔法の知識ならこの世界の誰よりもあると言っても過言ではない。
「お兄ちゃん、一緒に行かない?」
ティアが腕に抱きついた顔を上げながらクライシスに言う。その姿に彼は心を揺らされる。
「∙∙∙∙∙∙本当に政府に追われることはないんだな?」
「ええ、保障しますわ」
「······分かった。行くことにする」
「本当!お兄ちゃん!」
「ああ、本当だよ」
その言葉が嬉しかったのかティアはクライシスの胸に飛びついた。
やっぱりミーシャはその光景に唖然としている。
「そ、そうでした。入学するには試験を受けなければなりませんから明日には学園に行きますよ。連絡は私からしておきます」
「悪いな、何から何まで」
「いえ、大丈夫ですよ。では、私はこのことをお母様とお父様に話してきます」
そう言ってミーシャは応接間から出て行った。
「あんなティア初めて見ましたわ」
一人で呟きながらミーシャは今の光景を思い出した。
あれが兄妹のスキンシップというにはあまりもやり過ぎだろう。
「まあ、ああいう兄妹もいるのですね」
一人で納得しながらミーシャは歩いて行った。