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ギルティ・マジック  作者: ミスター
第一章
3/6

~第二話~連合政府

 時は夜。

 黒いフードを目深に被ったクライシスは民家の屋根の上にいた。

「さて、やりますかね。【魔法陣起動】」

 クライシスがそう言うと朝彼が通った門が爆発した。

「おお、随分ド派手にいったな。まぁ、俺が仕掛けたんだけど」

 クライシスの目標は連合政府本部。門の爆発はその囮のために使ったものだ。兵士が門へ行けば本部の警備は手薄になる。彼が狙うのはそこだ。

 不敵な笑みを見せながらクライシスは身体強化の魔法を自身にかけた。



 そして、彼は本部への道を民家の屋根に飛び移りながら進んで行く。もちろん着地の時の音や走る音などは出していない。

 暗闇を漆黒の犯罪者が駆けて行く姿は誰の目にも映らない。

 クライシスはすぐに政府の正門に辿り着いた。ここまで来る途中何人もの兵士が爆発した門の方向に向かっていた。完全に彼の思惑通りだった。

 荘厳な造りの政府の門を飛び越えクライシスは敷地に下りた。普通なら裏から回って敷地に入るのが定石だが彼はそんなことをしない。

 やるなら派手な方がいいから。

 ただ、政府の敷地内は少しおかしかった。クライシスもそれに気付いている。

 静か過ぎるのだ。



 警備の兵士も政府の建物の中からもなんの音も無い。

「全員門に行ったか?いや、そんな訳ないか······」

 いくら門から爆発が起きたからってここに兵士がいない訳が無い。

 不審に思いながらも辺りを見回し、ゆっくりと歩いて行く。

 その時だった。

「結界を発動しろ!!」

「!!」



 クライシスの声ではない声が響いた。彼が気付いた時にはもう遅く政府の敷地を囲むように半球状の結界が出来上がった。

「チッ!!罠か!」

 舌打ちをしながらクライシスが言うと辺りが夜なのに明るくなった。

 上空には光の球体がいくつもあり誰かが魔法を使ったことが分かる。その光に最初は目が慣れなかったクライシスもようやく周りを見ることが出来た。

「······マジかよ」

 そこにはこの国の紋章、政府の紋章を付けた甲冑を着た兵士とローブを着た魔術師が合わせて数千人いる。



「冗談キツイぜ、これは······」

「ハハハ!!かかったな!!クライシス·クレイム!!」

 数千人もいる人の中から一人の男が出て来た。

「∙∙∙∙∙∙連合政府中将ライク·エグジスか。また、バカなのが出て来たな」

 連合政府中将ライク·エグジス。武術や魔術は大して使えず貴族の地位が高いため中将の地位をもらった口先だけの男。



「貴様がここに来ることなぞ諜報部からの調べで分かっていたのだよ!!」

 胸を張りながら言うライクははっきり言って鬱陶しい。

「この結界はなんだ?」

「これは貴様を逃がさないために魔術師五十人で造り上げた結界だ!!この中ではお前は外に出ることは出来ないし、魔法は上級までしか使えん!!貴様の禁忌魔法や最上級魔法はもちろん転移魔法も使えぬぞ!!」

 簡単に種を明かすライクをバカだなと思いながらクライシスは少し思案する。



(禁忌と最上級が使えないのは良いとして転移が使えないのはマズイな。逃げる時に逃げれない)

 どうするか悩んでいるとバカの声がクライシスの耳に入った。

「ハハハ!!ここで貴様を捕らえれば晴れて俺は昇進だ!!」

「おいおい、俺を捕まえられると思っているのか?」

「この中で貴様に逃げ道は無い!!捕まえるのは簡単だ!!」

「······そう簡単にいくと思ったら大間違いだ」

 クライシスは殺気と同時に魔力も放った。それにライクは腰を抜かして後ずさった。

「な、何をしているお前ら!!早く奴を捕らえろ!!捕らえられなければ殺しても構わん!!」



 そう言い残しライクは逃げて行った。

「あれで中将か、落ちたもんだな連合政府」

 クライシスは辺りを見回し人数の多さに辟易した。

 流石にこれはクライシスでも厳しいだろう。

 ただ、彼は笑っていた。

「どうせやるなら派手な方が良いよな!!【エクスプローション】!!」

 クライシスが詠唱破棄で魔法名を唱えると辺り一帯が爆発した。



 火の中級魔法エクスプローション。広範囲に渡って爆発を起こす魔法。だが、クライシスが使うと中級以上の威力がある。それは魔力を多く込めているからなのだが。

 爆発によって上がった土煙が目を塞ぐがそれも直に晴れた。

 しかし、そこには信じられない光景が広がっていた。

「······全員無傷とかシャレにならねぇぞ」

 あれだけの爆発の中で兵士、魔術師全員が無傷で立っていた。

「防御魔法か」

 防御魔法はその名の通り防御をするための魔法だ。クライシスの魔法を防ぐということはかなりの強さの防御魔法を作っているということだ。

 そして、防御魔法の後ろにいる兵士のほとんどが弓や銃などの遠距離の武器を持っている。



「防御魔法の後ろから俺を攻めるってことか。なるほど、いい方法だな」

 悠長に言ってはいるがクライシスは内心焦っていた。

 魔法も効かなければ剣などの物理的な武器も無く物理攻撃も出来ない。

「ヤバイなぁ。転移は使えないし、本格的にどうするかな」

 そう考えている間にも魔法や矢やら弾丸がクライシスに飛んでくる。

「チッ、クソが!」

 身体強化をした体で避けていくが数が多い。

「闇よ、飲み込め。【ダークインフェルノ】!」



 クライシスの手から黒い波動が出て敵の魔法や矢や弾丸を飲み込んだ。だが、それだけでは減らず彼の魔法に当たらなかったものは勢いよく飛んで来る。

「闇よ、我が爪となれ。【クローアルヴェオン】」

 クライシスは手に黒い双爪を出現させ自分に降りかかる武器を払い落とすが全ては無理だ。所々にかすり傷が付いていく。

「ハアァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 クライシスは両腕をもの凄い速さで振りながら敵へと駆けて行く。

 もう敵に手が届く距離でクライシスの体は何かに弾かれたように吹き飛んだ。

「グッ、物理障壁か!?」

「今だ!!全員総攻撃!!」



 部隊を率いている隊長だろう。彼がそう言うと先ほどの倍以上の矢、魔法、弾丸が雨のように飛んで来た。

「しまっ──」

 クライシスは言葉を発する前にその攻撃に飲み込まれてしまった。

 攻撃が止み、まるで嵐が止んだような静けさの中、黒いローブが無残にも切り刻まれ、血まみれになったクライシスが倒れていた。

「や、ヤッター!!勝ったぞ!!」

「俺たちの勝ちだ!!」

「遂にあの男を倒したぞ!!」

 兵士と魔術師たちは一様に喜んでいる。

 兵士は武器を捨て喜び。魔術師は今まで発動していた防御魔法や結界魔法を解いて喜んだ。



 だが、それが仇となった。

「イオ······、ソノ、ウナ、ペルソナ、チェ、ロ、ギウディカ······。【断罪】」

 クライシスが唱えると黒い炎が辺りを覆った。

「な、なんだ!!」

「アイツ、まだ生きてたのか!!」

 兵士と魔術師は驚き何も出来ずにうろたえている。

「ざ、まぁ、みろ」

 ニィと不敵な笑みを浮かべクライシスは転移魔法を使いその場から消えた。









「まさか、罠だったとはな。落ちたもんだな。俺も······」

 クライシスは路地裏の壁にもたれ掛かりながら座っていた。体からは今も血が溢れ出している。

「治癒魔法は······。俺、苦手だったな」

 苦手であっても魔法は使えるが、今のクライシスの体の状態から考えてまともに魔法を使うことなど出来ない。

「ハハ、俺、死ぬかもな」

 乾いた笑い声を漏らしながら失っていく意識の中である声を聞いた。

「ちょ、ちょっと、大丈夫ですか!」

 誰かに声をかけられ少しだけ目を開いた。

 そこには自分と同じくらいの年の黒髪黒目の少女がいた。

(妹に似てるな。まぁ、そんな訳ないだろうが)

 クライシスは意識を失った。


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