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点と線と平面  作者: さわみずのあん


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特異点

「最後に一つ、いいですか」

 リョウコ・サヤマはケージに尋ねた。

「最後? 最初かもしれませんよ」

 ケージは手帳をぱたぱたと気怠そうに振るい、

「ミステリ小説で、最初から最後の方を読んでしまう人ってのがいるらしいですね。しかも、最後の一行で全てがひっくり返る、なんてのを最後から読むそうです。まあ、楽しみ方は人それぞれですし、私には過去も今も未来も同時ですから、そういった楽しみ方ができるというのは、少し羨ましい気持ちがしますが」

「何を言って?」

「私が何を言っているかなんて、どうでもいいことでしょう? 貴方が聞きたいことを言ってください、私はもう聞いていますが」

「何で、止めなかったんです? 私がオトキ・コユキを殺すのを」

「それは、探偵、だからです」

 リョウコ・サヤマは、答えの意味が分からず、ただ、正しく、真っ直ぐと立っていた。

「やはり、貴方はモデルですね、すらっとしていて、美しい。幅が大きい、いえ、失礼、背が高い、縦に大きいですね」

「それは、もう、聞きました」

「私は初めて言ったかもしれない。貴方は、モデルで、縦に、y軸に大きな幅を持っている。一方で、その細いウエストのように、x軸、z軸には小さな幅、しか持っていない。私も、私達も同じ、なんですよ。私は時間軸に対して、幅を持っていると言いました。けれど、それは、貴方がy軸にしか、幅を持っていないのと同じように、ある一つの時間軸の幅しか持っていないのです」

「一つの時間軸?」

「そうです、私は探偵です。私が止める、ことなく、犯人が犯行を、終えて、探偵は、それを見破り、犯人が捕まる、という一連の時間軸。そこ以外には幅を持っていないため、移動することができないのです」

「別の、その、別の時間軸には干渉できない。ケージさんにも、変えられない運命のようなものがある、ということですか?」

「うん、まあ、それ位の理解で良いのではないのでしょうか? 別に、別の時間軸には干渉できない、というわけでもないのですが」

「別の時間軸、というのはどこに」

「最初に言ったでしょう。ミステリ小説の話を。探偵が止める、ことなく、犯人が犯行を、終えて、探偵は、それを見破り、犯人が捕まる、という一連の時間軸をミステリ小説と考えてください。そのミステリ小説を読んでいる読者は、最初から読んでも良いし、最後から読んでも良い。好きな時に、好きな所から、読め、もちろん読まなくてもいい。勘のいい貴方は、最初から気づいていたんじゃありませんか? 貴方ですよ、貴方。これを聞いている貴方じゃ、ありません。これを読んでいる、貴方ですよ」




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