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プロローグ
志鷹和樹は雨の中、誰かを追いかけていた。
(俺は一体誰を追いかけているんだ?)
なぜかそんな疑問がふと頭に浮かぶ。しかし、まるで頭の中に霧がかかったように答えは霞みうまく思い出せない。ただ、追いかけている相手を捕まえないといけないという正義感で志鷹は必死に雨の中を追いかけていた。
(今はとにかく捕まえないと)
疑問を·····じんわりと忍び寄る不安を振り払い角を曲がり、袋小路に飛び込んだ。
「追い詰めたぞ⋯観念しろ」
肩で息をしながら志鷹はニヤリと笑った。
昼下がりというのに、雨が降っているからか、周りは薄暗い。
降り頻る雨の中、二十代ぐらいの茶髪の男が路地裏に立っていた。
男はゆっくりとこちらに振り返った。
「?!」
その姿を見た志鷹はギョッとした。
雨で濡れ張り付いた衣服、顔に張りついた髪の毛、その頭には・・・角があった。