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Zbv prime  作者: はるまき
9/13

反論


「ZBVってのはさ、臨時編成の使い捨て部隊。カッコいいよな、なあ?」


ミリオタ男は前席から振り返り、ニヤついた顔を向けた。

誰も返事をしなかったが、彼は続けた。


「今回は現代版ZBVってわけさ。記録に残らない仕事。

行って、やって、終わり。そういうの――ロマンあるだろ?」


そのとき、バスの中ほどから、低く抑えた声がした。


「その言い方、やめたほうがいい」


声の主は、三十代後半くらいの男だった。

工事用のキャップを膝に抱え、目線を落としたまま、はっきりとした口調で言った。


「ZBVが何の略かは知らない。けど、使い捨てって言葉で笑うのは違う。

人道支援って書いてあった。少なくとも、俺はそれを信じたい…」


ミリオタは一瞬言葉に詰まったが、すぐに鼻で笑った。


「信じた? マジかよ、あの広告を?

あんな雑な文面で何をどう信じるってんだ。

“詳細なし、説明なし、ただ参加せよ”って――ありえないって」


「ありえないけど、信じた。信じたかっただけかもしれないが。

君だって“使い捨て”なんて話にして終わらせたくないだろ?」


バスの中が静まり返る。


その会話を聞いていた若いニートの男は、目を伏せたまま、

じわじわと顔をこわばらせていた。


うつむいたまま、そっとつぶやく。


「……これ、ほんとに人道支援なんですよね……?」


返事はなかった。誰も確信を持っていなかった。

冷房の風音だけが、空席の背もたれを静かになぞっていた。



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