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疑問
休憩が終わり、バスは再び走り出した。
窓はまた白い紙で塞がれ、外の景色は見えない。
エアコンの風だけが均等に吹き出していた。
しばらく沈黙が続いていたが、さきほどの同世代の男が、ぽつりと口を開いた。
「……ZBVって、何の略なんすかね」
声は小さかった。
主人公が聞こえるか聞こえないか、というくらいの大きさで。
「俺、気になって検索してみたんすよ。
でも何も出てこなくて。英語かドイツ語かも分からなくて……」
主人公は何も答えなかった。
男は自分の手をじっと見つめながら続ける。
「ゼット・ビー・ブイ……?
ゼロ・バイオレンスとか? ゼネラル……ボランティア……?
でも“Z”って、普通最後じゃないですか。
いきなりZから始まるって、なんか妙に不気味で……」
男は小さく笑った。
「意味なんか、考えない方がよかったのかな」
その声には、ほんの少しだけ、怯えが混じっていた。
主人公は、ようやく一言だけ返した。
「意味があると思うか?」
男は答えなかった。
バスの中は、再び沈黙に包まれた。