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Zbv prime  作者: はるまき
3/13

乗り合い


午前6時。 男は、いつものように目を覚ました。

扇風機の風が生ぬるく、背中には寝汗が張りついている。 窓は開け放たれていたが、風は一切吹いていなかった。


携帯のアラームを止めると、未読メールが一通届いていた。 件名も本文もシンプルだった。


【ZBV】本日現場あり。送迎バス、7:30発。集合:駅前ロータリー。


週刊誌と、よれたチラシの間に挟まっていた作業ズボンをはき、 Tシャツを裏返しのまま着た。 ペットボトルの水を1本と、財布だけをポケットに突っ込む。


朝食はいつも通り、なし。


集合場所のロータリーには、見覚えのない顔ばかりが立っていた。 誰も話さない。 スマホを見ている者すらいなかった。


7時30分。 ぴったりの時刻に、白いマイクロバスが滑り込んできた。


無地。 会社名も行き先表示もない。 だが、こういうバスは何処にでもある。

冷凍工場とか、建築の現場とか。道行く人々は誰も気にしなかった。


ドアが開いた。 順番に乗り込む。 名簿のチェックもなく、運転手も無言のままだった。


座席は冷房が強く、男はホッと表情を緩めた。

異質だったのは窓には内側から目隠しの紙が貼られていた。 外はまったく見えない。 男は1本目の水を開けて、少しだけ飲んだ。


バスは静かに走り出した。


方向も、行き先も、誰も知らない。 けれど、それが問題になる者はいなかった。


この日、誰も自分が「失踪」したとは思わなかった。

家族も世間も いつも通り、 誰かがどこかへ働きに行っただけのことだった。




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