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Zbv prime  作者: はるまき
12/13

誘い


昼食を終えて再びバスに乗り込むと、しばらくして道幅が徐々に狭くなっていった。

舗装の継ぎ目が粗くなり、タイヤの揺れが明らかに大きくなる。


車体が左右にゆっくりと揺れ、

座席の下から「ゴゴッ……ガタンッ」と鈍い衝撃が伝わるたび、

男は、山道に入ったと悟った。


窓に貼られた紙の隙間から、ほんの一瞬、木々の濃い緑が見えた。

真夏の光の中で風景は妙に沈んで見えた。


そのとき――

斜め後ろから声がかかった。


「なあ、お前」


低い声。だるそうで、だが目は鋭い。

袖にタトゥーが覗く、半グレ風の若い男が前の席から身を乗り出してきた。


「これ、ヤバくなったらケツまくろうや。俺、すぐ逃げんの得意やし」


目は笑っていなかった。

冗談にも、本気にも聞こえるその言葉に、男は返答できなかった。


「俺ら、まだどっかで降りれると思うやろ?

でもな、ヤバイ感じがするんや

けど――何もせず最後まで運ばれて、何が待ってんのか分からんよりマシやろ?」


口調は軽いが、声の奥に震えがあった。

彼も分かっていた。もう帰れない場所まで来ていることを。


「まあ、俺に着いてくるなら……好きにしぃや」

そう言って、男はふたたび背もたれに身体を預けた。


道はじきに未舗装に変わり、車体はゆっくりとした速度で走り続けた。

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