1話 異世界転移
2か月前のことだ。
突然人類の半分が消えてしまうという事件が起きた。
その事件はとある研究をしていた科学者たちによって引き起こされていたのだ。
マサチューセッツ多次元観測部
アメリカ合衆国にある世界を観測する研究所では、他の世界に行くための研究や実験が日々行われていた。
研究所の研究員たちは30年の歳月をかけ異世界に行くためのゲートを開く研究を完成させる。
小動物での実験は成功、悲劇は次の段階で起こった。
人間での実験。被検体は刑務所での善行が認められた一人の死刑囚だった。
実験は一つの部屋で行われる。
死刑囚が部屋の椅子に座らせられて、研究員は異世界のゲートを開くボタンを押した。
その時だった。
太陽から人類史上最大のフレアが発せられたのは。
莫大な電子エネルギーが地球を包み込む。
そして、地球ではインターネットはダウンしあらゆる電子機器が不調を起こした。
もちろんマサチューセッツ多次元観測部にも影響が降り注いでいた。
異世界のゲートを開く機器は不調を起こし、異世界のゲートは太陽フレアと一体化する。
世界のゲートは地球を包み込んでしまい、そうして人類は気付かぬ間に様々な異世界へと散った。
あからさまな不幸。ただ一つ不幸中の幸いといえばある程度固まっていたグループが同じ世界に転移したことであった。
笑雨と葉華邪もそんな転移した一人だった。
だが、今回は笑雨と葉華邪ではなく一緒に転移した従兄弟の3人の中の2人の話をしよう。
休日で5人の家族と3人のいとことともに川へと遊びにきていた笑雨と葉華邪は世界を包む謎の光に包まれ、気付けばそこは広大な大自然と未発達の文化が広がる異世界だった。
「えっと、これマジ?」
「あらあら、異世界転移しちゃった。」
「ちょっと、なんでお前はそんな吞気なんだよ!」
金髪をした一人の男が見たこともない植物をちぎりながらのんきに笑っている。
そんな男に青色のメッシュの入った紺の長髪の少年が突っ込んでいるが、金髪はどこ吹く風でかなりのんびりしていた。
金髪の男は我路堕と言い、笑雨と葉華邪のいとこである。
そして、紺の長髪の少年は我路堕の弟であり次男である落笑堕であった。
あと4人ほどほかの兄弟がいるのだが、その話はまた後で。
この時8人いた中で我路堕と落笑堕の2人が同じ場所に転移していた。
異世界転移してもハチャメチャな我路堕に、落笑堕はうんざりしながらも食べられそうな植物を探す。
なんとか見つけた食材は、細長い赤色の果実数個と紫色の拳サイズの豆であった。
運良く雨は降ってはおらず、乾燥した木があったのですぐに火はつけることができた。
赤色果実の触感はリンゴに近く味は桃に近い。
豆に火を入れると色は緑へと変化して、いい匂いをその周りに漂わせた。
味は少し塩味があり、ホクホクしており悪くはない。
そうして2人は異世界での初めての食事を終わらせた。