表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おいしい珈琲物語〜珈琲と共に読みたい短編小説集〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/31

コーヒーフレンチトースト

 朝ごはんは食べない主義だ。一人暮らしでフルタイムの正社員で働く羽田東子にとっては、朝の時間も大事。


 今はもっとスキルアップしたくて英語、宅建、簿記、AIの勉強などもしていた。普通の事務職としては、ちょっと不安だったりもする。この仕事も10年先も実存する確実な証拠もない。AIにとって変わると言われていた。アラサーで一人暮らし、彼氏もいない東子にとっては、少しでもリスクを減らしたい思いも強かったのだ。


 なので朝は勉強だ。今日はインスタントコーヒーだけ飲み、英語資格の問題を解いていた。確かに朝食べないと頭の回転が悪くなるとも言われていたが、慣れてしまうと気にならない。インスタントコーヒーのほろ苦い香りを楽しもつつ、勉強も捗っていた。普通のドリップコーヒーよりも苦味が強い気もするが、勉強中はインスタントコーヒーのライトさが心地いい。


 その甲斐あってか、簿記三級の資格試験に合格した。一ヶ月弱の勉強だったので不安の方が強かったが、嬉しい。点数はギリギリだったが、合格である事に変わりはない。


 そんな土曜日。東子は商工会議所で貰った賞状を眺めながら、気が抜けていた。第一目標をクリアしただけで、まだまだチャレンジしたい資格は色々あったが、とりあえず一つの目標をクリアして気が抜ける。


 同時にお腹も空く。今までは朝ごはんなど時間の無駄だとカリカリ勉強していたが、たまには休んでも良いかもしれない。


 そうは言っても、冷蔵庫の中は硬くなった食パン、牛乳、玉子ぐらいしかない。この材料だったらフレンチトーストが思い浮かぶが、どうもあの甘ったるいパンは朝から重い。


 ふと、コーヒー味のフレンチトーストが無いかと思いつく。ネットで検索すると、案の定、あった。インスタントコーヒーで味付けするらしい。ポイントとしてはインスタントコーヒーはお湯に溶かしてから卵液や牛乳に混ぜると上手く出来るらしい。


 さっそくキッチンに立った。ワンルームアパートのキッチンは極狭だ。作業スペースなどほとんど無いが、何とかフライパンで焼くまでたどり着く。


「わ、いい香り!」


 フライパンの上のコーヒーフレンチトーストは、普通のそれより良い香りだ。インスタントコーヒーのライな香りが、このフレンチトーストにはよりマッチしているみたい。


「ま、たまには朝ごはんを食べてもいいよね」


 そう、ひとまず目標はクリアしたのだから。今日だけは素敵な香りに包まれながら、自分を甘やかしても悪くないはず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ