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おいしい珈琲物語〜珈琲と共に読みたい短編小説集〜  作者: 地野千塩


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カフェインレスコーヒー

「きゃあ! 足攣った!」


 真夜中、祥子は悲鳴をあげる。一人暮らしのワンルームマンション。ごちゃごちゃと雑貨や雑誌、服み多い部屋だが、コーヒーメーカーみあり、大手チェーン店のタンブラーやカップもコレクション化していた。


 そう、祥子はコーヒーが大好きだった。子供の頃はコーヒーなんて苦手だったが、大人になり、一人暮らしを始め、とある企業でマーケティングの仕事に転職してからコーヒーの味に目覚めてしまった。今はリモートワークでパソコンに向かいながら仕事していたが、一日中コーヒーを飲んでいる時もあった。


「しかし何で足攣ったんだ? もうアラサーだからか?」


 祥子はベッドの上で首を傾げる。こういう時、ネットが便利だ。


 ベッドサイドのランプだけつけ、スマートフォンでインターネットを開き検索してみた。「足攣った 原因」などのワードで検索していくと、霊的な障害を疑った記事が出てきた。


「夜中に足を攣るのは幽霊の仕業です。お祓いに行った方が良いでしょう。ってマジ!?」


 そんな記事を見ながら怖くなった祥子は動画サイトでお祓いの動画をつけて眠った。


 しかし翌日も脚を攣った。原因不明の落ち込みやイライラもある。本当に霊的問題かわからない。もしかしたらお祓いに行った方が良いかもしれないとひたすら検索し続けていた時、姉から電話がかかってきた。


「という事で足攣ったんだけど、金縛りかね?」

「違うと思うよ。カフェインのせいじゃない? あんた、コーヒーを依存症のように飲んでたし」

「え? カフェインで足攣るの?」

「攣るよ。あと、トイレも近くなってない? 頭痛もイライラもカフェインとりすぎるとなるらしい」


 心当たりがあった。霊的問題のせいに決めつけていたが、まさか自分も不摂生?


「私も妊活でカフェインやめたら、足攣るのかなくなったよ。まあ、コーヒーも美味しいけど、節度持って飲んだ方が美味しくない?」


 姉の言う事はいちいち正論でぐうの音も出ない。


 その後、祥子はコーヒー断ちをすることに決めた。


 が、いきなり断つのは難しい。どうしても朝、目覚めの一杯は欲しくなる。いくら自分が悪いといっても、好きなものを我慢しるのは涙が出てくる。


「よし! カフェインレスコーヒーを取り寄せた。今日からこっちにしよう」


 妥協案としてカフェインレスコーヒーを買って見ることにした。コーヒー好きとしてカフェインレスコーヒーは味が薄い、まずいと言う印象だったのだが。


 さして期待もせずカフェインレスコーヒーを淹れて飲んでみた。


「あれ? さほど味かわらないかも。というか、普通に美味しい」


 マグカップいっぱいにカフェインレスコーヒーを淹れたが、普通に美味しく、飲み干してしまった。確かにほんの少し味の違いは感じたが、不味くもない。カフェインレスコーヒーが不味いというのは勝手なバイアスだったらしい。


 一人暮らしの狭い部屋にコーヒーの香りが広がる。今はまだコーヒーを辞められそうにないが、どうにかカフェインレスコーヒーのおかげで乗り越えられそうだ。


 それに姉のように結婚したら、強制的にカフェイン断ちする日もあるかもしれない。それがいつかは不明だが。


「うん、カフェインレスコーヒーでも充分だわ」


 空になったマグカップを洗いながら、その日の空想などしてしてみた。今はまだ空想だが、少しぐらいは夢見ても良いかもしれない。


「そんな日が来てもいいかもね」


 そう呟くと、リモートの仕事をするためパソコンの前に向かっていた。

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