コーヒーアイスクリーム
優奈は片想い中。しかも相手は担任の窪塚先生だった。
「はぁ。先生と付き合いたい」
友達の玲奈にも本音が漏れる。学校の帰り、二人でスムージーを飲みながら。
「何、バカな事言ってるの。女子高生に手を出す担任とか犯罪。その時点で冷めるし」
玲奈の正論に何も言えない。
「でも。好きだし」
「相手アラサーのおっさんだし」
ますます玲奈の言葉が耳に痛いが、夏休み前、爆弾発言が落ちた。窪塚先生、結婚するという。しかも相手の女性の都合で秋にはアメリカに引っ越すという。
「そんな……」
ダブルでショック。これ以上、声も出ない。その日の放課後は、一人、とぼとぼと帰る。いつもは玲奈とスムージーを飲んでいたが、今日はコンビニでアイスクリームを買ってみた。コーヒー味のアイス。一口目からほろ苦い。今の気分にピッタリ。
アイスを食べながら、家まで歩く。夕方だというのに蝉の音がうるさく、心の痛みも消えない。
それでも。
窪塚先生が女子高生に手を出して警察に捕まる未来。それとも結婚してアメリカで幸せに暮らす未来。二つを想像していたら、どう考えても後者の方がいいと思う。
今はまだコーヒーアイスクリームは苦いけれど、いつか全部納得できる未来も来るかもしれない。
「うん、窪塚先生、おめでとう」
小さな声で言葉にする。不思議と、言葉にしたら、本当に祝福できてしまった。




