氷コーヒー
こう毎日暑いと、食欲もない。スーパーに行っても何も食べる気が起きなかった。ついついアイスコーナーだけ見てしまうが、氷コーヒーを見つけた。
「何これ?」
濃いコーヒーを凍らせたもので、ミルクに溶かして飲むらしい。
どうせ夏で食欲も失せている。かといって砂糖たっぷりのアイスクリームもカロリーが心配だ。もういい歳だし、若い頃みたいに好き勝手に食べる気もしない。
という事で氷コーヒーを買ってみた。甘さ控えめで低カロリーと書いてあったが、味はどうだろう?
自宅に帰ると、グラスに氷コーヒーを入れ、ミルクを注ぐ。作り方は拍子抜けするほど簡単だった。在宅ワークの仕事をしながら、ゆっくりとこのコーヒーを啜るが。
「あれ? 時間が経つにつれて味が変わってる?」
その事に気づいた。最初はミルクの味が濃かったが、次第にコーヒーの苦味、甘味も溶けてきた。グラスのコーヒーと牛乳のグラデーションもいい。淡い色が涼しげではないか。
「そうか」
こう暑いと永遠に夏のような気がしていたが、違うかもしれない。なんでも変わっていく。この世界で永遠はないのかもしれない?
うっかり哲学的な事も考えてしまったが、このコーヒーは美味しい。それは確実だ。
それに涼しい部屋で仕事をしていたら、食欲も回復してきた。そうだ、ずっと食欲が無いという事もない。
「まあ、今はとりあえず目の前のことを頑張るか」
味が変わっていくコーヒーを啜り、再び仕事に戻っていた。




