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第八十二話 王都に到着

「あれが王都かぁ」


「初めて見るけど立派な外壁だねぇ……」


 初めて見た王都にミレーアとリナの二人はそう感想を漏らした。明らかに自分達がいた街とは比べ物にならない程に頑丈に作られているだろう外壁。高い外壁であるにも関わず見えている立派は王城に二人は物珍しそうな視線を送っていた。出発したてのころとは違いリナは馬車に乗ってももう酔うことはなかった。本人曰く、何だか分からないけど慣れたとのことだ。


「まさか来ることになるとは思わなかったよ」


「一生涯縁があるとは思わなかったからね。お父さんとお母さんが知ったら何て言うかな」


 ミレーアもリナも王都に来るなんて夢にも思わなかったという思いは一致している。ミレーアは両親は既に死亡しており天涯孤独の身でリナの両親は狩人だ。どちらも王都に縁がある家ではないのは確かだ。


「え~と、確かこれを門番の人に見せれば良かったんだよね」


 ミレーアがマジックバックから取り出したのは通行許可書であり、街を出る時にギルドマスターから渡されたものだ。ギルドマスター曰く、これがあれば街に入る時に面倒な手続きをしなくても済むとのことだ。ミレーアとリナは問題ないが鎧の下を他人には見せることが出来ないアギトには必須なものと言えた。尤もそれが無かった場合、彼は隙を見て王都に忍び込むつもりであったらしい。






「それは冒険者ギルドから発行されている通行許可証か……通って良し」


 王都の門番に通行許可証を見せれば特に怪しまれる事なく王都の中に入ることが出来た。流石に荷物検査くらいはされると思ったがそれすらなかったことにミレーアもリナも驚いていた。


「大丈夫なのかな?」


「少し心配になるよね」


 王都に入るための検査がこんなに緩くて大丈夫なのだろうか疑問に思ったミレーアとリナだが、その理由をアギトが説明し始めた。


「それは冒険者ギルドから発行される通行許可証の中でも最高ランクのものだ。それがあれば大抵のところはフリーパスになるくらいのな。その分何かあった時は発行したギルドに相応の責任がいくことになるがな」


「……盗られて悪用されたりしないよう気を付けます」


 通行許可証を手に持って眺めていたミレーアは慌ててマジックバックにしまった。三人を乗せた馬車は王都の冒険者ギルド本部へと向かった。ミレーアとリナは窓から見える王都の街並みに一喜一憂していた。


「立派な街並みだね」


「だね。見たことも無いくらい高い建物が一杯ある」


「……見えてきたな。あれが冒険者ギルド本部か」


 自分達がいた街の冒険者ギルド支部とは比べるまでも無い程にそれこそ王都の街並みにあってなお立派な建物見えてきた。


「何だが凄い立派だね」


「うん」


「ああするのも必要経費だ。この国の冒険者ギルドの本部が支部よりも粗末な作りでは体面も悪い上に王都ではどう考えても景観も悪いからな」


 あんな無駄に立派する必要があるのだろうかと言わんばかりの感想が声音に含まれていたミレーアとリナにそれの必要性を語るアギト。アギトの話を聞き納得した二人は窓から離れ到着までに大人しくすることにした。






 冒険者ギルド本部に到着したミレーア達が受付で要件を伝えると直ぐに奥の部屋へと通された。そこでしばらく待っていると冒険者ギルド本部のギルドマスターがやってきた。


「王都の冒険者ギルド本部にようこそ。私は冒険者ギルド本部のギルドマスター、ジェフリーだ」


「ミレーアです」


「リナです」


「アギトだ」


 自己紹介を軽く済ませ本題に直ぐに入った。とはいってもミレーア達は特に喋ることは無くこの中で異獣に対して一番知識があるのがアギトであり、ジェフリーから受け取った資料をアギトが最初に見ていた。アギトは何も言わず紙を捲り資料の内容を確認する。


「流石は国内最大とも言える冒険者ギルドの本部。あれが相手もでもそうそう引けを取らないか」


 資料を読み終えたアギトは机に資料を置くとそう感想を述べた。アギトが読み終えたことでミレーアとリナが机に置かれた資料を手に取り内容を見た。書かれているのは襲撃してきた異獣の特徴と被害及び討伐した冒険者ランクが記載されていた。


「実際に大きさから推察すると一番被害が大きかった異獣で第二フェイズの中の上くらいだな」


「あれで中の上。そうなるとこちらの想定を上回っているとしか言えない」


 ミレーアは最も被害の大きかった資料を探し内容を確認した。


「……冒険者側にも被害多数。最上位の冒険者を投入することで討伐ですか」


「辛うじてではあったが、当人達もドラゴンを相手にしている気分だったと言っていた。まぁ、その分見返りも大きかったが」


 討伐された異獣の骨や牙、爪、鱗は鍛冶師から見れば最高の素材でありそれによって良質の武具を多く作製することが出来た。しかし、幾ら良い武具を作り上げてもそれを十全に扱える腕前の冒険者が足りないという問題が浮上していた。厳密にはいたのだが昨今の異獣との戦いでその数を減らしていたのだ。特にドラゴンクラスの強力な異獣ともなれば異獣の強さが分からないこともあって大きな被害が出てしまった。


「そちらにも情報はいっているだろうが奴らの発生が此処まで頻発するならば大元で何かあった可能性は高い」


「それは聞いている。如何せんあそこに干渉するのは決定的な証拠が無い限り陛下ですら難しいのだ」


「だがそれでも何れは強引な手段を取らざる得ないだろう。放置すればそれこそこの国の初代国王と聖女が倒したとされる異獣と同類が現れることになる」


 そんな相手が出れば被害は計り知れないことなる。アギトは王女の手腕から王族ではそれに関しての口伝が残されているのだろう考えている。今回のミレーア達が王都に来ることになったことにも関わっていると睨んでおり、近いうちに何らかの行動を起こすとアギトは予想していた。


「だが先ずはその前に王都付近の状況を何とかしなければならないだろうな」


「政に関しては何も言えない。だがそちらの見立ては正しい。実際、王都周辺の状況は良くは無い。異獣の出現と被害を何とかしない限りは陛下達も他のことを行う余裕が無いだろう」


「だろうな。其処で無理に動こうものならそれこそ取り返しのつかない事態になりかねない」


 ジェフリーとアギトの会話を横で聞いているミレーアとリナの二人は話についていけず暇を持て余していた。しかし、それを態度に出さずとりあえず話に聞く姿勢を維持しているのは経験に賜物である。尤も話はそれ以上長くは続かずミレーア達は彼女が王都に滞在するにあたって住む場所に案内された。今回に事態が終わるまでは賃貸料は冒険者ギルド持ちということになっていた。


「おそらく今日はもう何も無いだろう。旅の疲れをゆっくりとるといいだろう」


「今日はということは明日からはあるということですか?」


「今回の事態に際して俺達を王都に呼んだ者や此処で協力することになるだろう高位ランク冒険者との顔合わせは数日以内にはあると見ていい」


「分かりました。私は今から食事に行きますけど……リナはどうする?」


「私も行こうかな、王都ならあの街に比べて種類も豊富だろうから楽しみだよ」


「そうか楽しん来ると良い」


 アギトは自身が割り当てられた部屋へと向かいミレーアとリナの二人も自分達に割り当てられた部屋に荷物を置きにいった。






「さてと、冒険者オススメの飲食店は此処か」


「雰囲気とかそんな感じだね」


 ミレーアとリナは目の前のある喧騒な食事処を見てそう感想を漏らした。二人にとっては慣れた空気で入りやすい雰囲気であり、遠慮なく入ると空いている席に座った。


「……値段は少し向こうよりも高いね」


「だね。まぁ、こういった王都とかは物価が高くなるとは聞いてたことがある」


 メニューを開き何か食べるか考えるミレーアとリナ。彼女達の予想した通り王都の食事処のメニューの種類は街にあった食事処より比べ物にならない程豊富だ。あまりの多さにどれを頼もうか二人は真剣に悩んでいた。


「あれ? 此処では見たことない顔だね?」


 メニューを見ていた二人にそんな声が掛けられた。声に反応し顔を向けると同じ年頃の少女がいた。


「私達は今日王都に来たばかりなんです」


「それなら見てなくて当然か。ようこそ王都へ……この場にいるってことは二人とも冒険者でしょ? 最近、王都で美味しい依頼が増えてるから来たのかな?」


「少し事情が異なるけど似たようなものかな」


「そっか、まぁ頑張ってね!!」


 それだけ言うと少女はミレーア達から離れ仲間らしきいるテーブルへと向かっていった。


「……年は近そうだけど相当なベテランだったね」


「少なくともマイルズさん達よりも上だろうね」


 親し気に話しかけてきていたがその視線は何処か自分達を値踏みしているような雰囲気が含まれていた。おそらくは自分達がどういった者達か見極めていたのだろうとミレーアとリナは考えた。どう判断されたかは分からないが気にしても仕方がないため、二人はメニューに視線を向け今日の夕食を何にするか選ぶのだった。

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