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第七十五話 変性(二)

「流石にあれだけ巨大化したなら出し惜しみは出来ないね」


 リナは遺跡から持ち出した弓を何処からともなく取り出した。原理は本人も分かっていないらしく取り出そうと考えれば取り出せるという不思議なものだ。


「狙うべき弱点は何処になる?」


「……一番大きいのは胸部だけど、何だこれ?」


 索敵したミレーアは奇妙なことに気が付いた。先程まであった生体反応が小さくなっている。厳密にいえば大きな塊だったものが分裂し、胸部と腕や脚の付けとった五か所に分散していた。但し五か所のうちで一番大きいのは胸部であり、そこが中心となっているのは間違いないだろうとミレーアとリナは考えた。


「何かあった?」


 振り下ろされた剛腕を躱しながらリナはミレーアに尋ねた。剛腕が地面を叩くと近場の地面が振動したが、不安定な足場での動きに慣れている二人はそれでバランスを崩すことなく動き回った。ミレーアは自身か感知したものをリナに伝えると試しに胸部に狙いを定め魔力で形作られた矢を放つとそれはその剛腕で防御した。

 先程まで見せなかった守るという行動を見逃さなかった二人は、あれにとってやはり生体反応が一番高い胸部がウィークポイントになるんだと再認識した。


「弱点が分かればこっちのもんだね!!」


 ミレーアはパイル・アームを持ち一気に懐に潜り込んだ。胸部には届かないため、脚部の付け根にある生体反応する場所にパイル・アームを叩き込んだ。


「む……やっぱり効果は無いか」


 パイル・アームを引き抜け自身を蹴り飛ばそうとするそれの足を躱した。ミレーアのパイル・アームは間違いなく脚部に合った生体反応する場所を捉えていた。しかし、それでもそれを破壊することが出来なかった。

 おそらく胸部がウィークポイントなのは間違いないが先程、それが胸部を守ったのは万が一を想定してのことだろう。


「破壊するには何か特殊な方法がいるってことかな?」


「ならいろいろ試すしかないか」


 とりあえず試すのは威力だと言わんばかりに破壊力を上げた魔力矢で先程、ミレーアが狙っていた部分をリナは狙い打った。魔力矢は正確無比にその部分を突き刺さり貫いた。しかし、それでもそれだけで直ぐに穴は塞がり何事も無かったようになった。


「威力の問題じゃないね。ミレーアが見ていた感じはどうだった?」


「反応が動いている訳じゃないね。間違いなく撃ち抜ている。……霊体か何かが操ってる?」


 ゴースト系統の魔物が乗り移り動かしているのなら物理的なダメージは無効化されるため、ミレーアとリナが攻撃しても効果が無いことに説明はつく。


「それだとミレーアが感じること矛盾しない? それに砕いた時に散らばった土塊に反応があったのならその時に日の光を浴びて消滅していると思うけど」


「あ、そっか」


 最初に自分があれから生体反応あると口にしていた。つまるところそれは生きているものであり、死したものであるゴースト系統の魔物はまた違った反応である。そして、仮にゴースト系統の魔物ならリナが言った通りミレーアが砕いた土の中に潜んでいた場合、日の光を防げず消滅するだろう。


「となると相手は間違いなく生きてる存在……っと」


「よっと……だけど実体が見えない相手。……見えない?」


 二人は攻撃を躱しながら意見を出し合い相手の正体を見極めようと頭を動かす。そこでリナは自分の声を聞き、相手が見えないことが気になった。ミレーアは確かに散らばった土塊にも生体反応があったという。しかし、ぱっと見ではそれらしきものは見えなかった。見えないというのは言葉で出せばそれだけだが理由は幾つかある。透明であったり、魔法によって認識阻害、そして()()()()見えなかった或いは見落とした。


「いや、でもそんなことありえるの?」


 思い至った結論にリナは自分で考えたそれを疑い別の可能性が無いか考えるが、自分が思い至った結論意外にしっくりくるものが他になかった。そして、彼女はこの考えの答え合わせをするためにミレーアに質問した。


「ミレーア、仮にだけど小さい生き物が寄り集まっていた場合はどう感じられるの?」


「その場合だと多分だけど一匹一匹は判別出来なくて大きな一つの生体反応と見間違えるかも……でも、それがどうし……」


 そこまで言いかけたミレーアはリナの言わんとすることを察して自分達に襲い掛かってくるそれを見た。崩れた土塊から感じ取っていた生体反応。そして、土塊が巨大化したことで内部で生体反応が分裂している現状がリナの仮説が正しいことを何よりも雄弁に語っていた。


「そういうことか、そうすると点よる攻撃じゃ大した効果は期待出来ないね」


「私達が魔法を使えればよかったんだけど」


 魔法を使って燃やしたり凍らしたりすれば相手が小さい生き物集まりならそれだけで終わっただろう。しかし、ミレーアとリナにはそういった魔法は使えないため別の方法を探し出す必要があった。


「あれが小型の生物の集まりでああして行動しているなそれを統率している個体がいる筈。ミレーアの感じた通りなら胸部の反応が一番大きいんだよね?」


「そうなる。……ああ、成程、しかも位置としていも離れた集まりに支持を出すにしても丁度良い場所でもあるね」


 ミレーアは統率個体が何処にいるのか分かったようだ。つまるとところ撃破するべき対象はそこであり統率する個体を失えば纏まりを失い今目の前にいるような巨体な姿を取ることは出来なくなるだろう。たた問題があるとすれば


「見分けはつくのかな?」


「ああした群れで行動する生き物は分かりやすいものだよ。一際体が大きかったり他とまったく違う姿をしていることが結構あるし」


 無論例外もあるがそればかりは考えても仕方がないことだと割り切るしかない。寧ろ先のまだ巨大化する前の方が分散していない分何処に中心となる個体がいるのか分からなかったくらいであり、巨大化したことで弱点がハッキリしたと前向きに捉えるしかない。尤もそれはミレーアが回復魔法の応用で感知出来るためであり、それが無ければ弱点は分からなかっただろう。正に目の前の奴らにとってミレーアがピンポイント自分達の弱点をつける存在とは思いもしなかったことだろう。


「成程。なら胸部部分の反応が他に比べて大きいのはその統括している個体が他のより強いからっていう可能性もあるのか」


 とりあえず方針も決まったし、狙うべき場所も定まった。問題はそれを達成するために手段が未だないことだ。相手のサイズが余程小さいのかミレーアとリナの攻撃ではうまく対象を捉えることが出来ない。やはりどうしても駄目ならば逃げること考えなければならない彼女達は考えている。


「さてとどうするか……!?」


 相手の動きを見極めようとしていたミレーアは目の前のそれの行動を見て目を見開いた。土が盛り上がり球体を形作るとそれを腕から出した糸のようなもので繋ぐとまるで人が鎖に繋がれた鉄球を振り回すように振るい始めたのだ。


「ちょ!? 無茶苦茶過ぎる!!」


「あぶな!?」


 二人は振り回された土塊を躱すと標的から逃げられた土塊は届く範囲にあった木々を纏めて薙ぎ倒した。おそらくは魔力で強度が強化されているだろう土塊の破壊力にもし直撃していたらと考えミレーアとリナは肝を冷やした。


「糸を使ってるってことは中にいるのは蜘蛛か何か!?」


「分からない!! でも糸を使うなら兎も角あんな風に振るうなんて聞いたこともない!!」


 このまま逃げ続けても埒が明かないとミレーアは足を止めパイル・アームを構えた。そして、向かってくる土塊に対して杭先を叩き込んだ。


「ぐうぅううううう!!」


 土塊にパイル・アーム叩き込んだ衝撃にミレーアは苦悶の声を口から漏らすがそれでもパイル・アームによってミレーアは土塊を粉砕した。砕かれた土塊は魔力による結合を失い元の土へと戻ると地面に散らばった。


「駄目か!!」


 相手が作り出した武器を砕いたものの元々土で作られたものであったこともあり、直ぐに作り直されてしまった。再生された土塊を再び振りましたそれから距離を取ったミレーア。腕の痛みは既に回復魔法でによって治しているため、動かすことになんら問題は無いがミレーアは苦々しい表情を浮かべていた。ミレーアはパイル・アームによって中に装填されていた魔力回復ポーションを消費したのに対して相手はその場でまた土塊を作り直すだけで良い。これではミレーアが無駄に魔力回復ポーションを消費してしまっただけである。


「やっぱり何か別の方法を考えないとね」


 此処で逃げても誰も文句は言わないだろう。元々偶発的な遭遇でありギルドからの依頼を受けて戦っている訳ではないため、ミレーアとリナにとってこの戦いに実際にところ勝利しても金銭的な実利は無い。しかし、此処で逃げればミレーアはマリアに追いつくことが一生無いだろうと考えており、それは互いに確認した訳ではないリナも同じ気持ちであった。マリアに勝つためには此処で何か掴まなければとミレーアとリナは鋭い目付きで相手を睨むのだった。

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