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第六十二話 調査の終わり

 襲撃者が去った後、周囲への警戒を高め調査を行ったものの新たな発見は何もなかった。その日の晩に一同で今後の方針を話し合うこととなった。最低限の調査は終わったことに加えて食料の補充が当初の予定とは違い思うようにいかないこと、マリアと名乗った襲撃者の存在もあり街へと帰還することが決定された。


「やれやれあの襲撃は無ければもう少し調査しても良かったんだがな」


「襲撃したきたあれが気まぐれでまたこっちに戻ってこられてたらそれこそ割に合わないもんな」


 あの時は何とか凌いだが次に奇襲されたらそれこそ此方が全滅し兼ねない。今回の目的はあくまで調査であり、あんな怪物染みた相手と戦うことではない。


「そういう訳は悪いが俺達は此処までだ。そっちの方はどうするんだ?」


 マイルズが話を振ったのは利害の一致から途中参加したエルフのロニーだ。彼は自分達に協力していただけであり、マイルズ達に行動を縛られることはない。このままエルフの里に戻るのも調査を継続するのも本人の自由だ。


「そうですね。まだ調査そのものは不完全ですが、直ぐにでも里に戻り報告することがあります」


「襲撃者のことか?」


 マイルズの述べたことに頷くロニー。自分達を襲撃してきたマリアと名乗った少女が何者なのか里にいる長老達に知恵を直ぐにでも借りる必要性があった。


「出来ればこちらのその情報が欲しいところではあるが……」


「長老達と話し合った後、開示出来る情報は後日私が赴き伝えましょう。その代わり……」


「こっちの持つ情報か……それは俺からは何とも言えない」


 その判断が出来るのは冒険者という身分である自分ではなくギルドの上層部になるだろう。無論、街に戻った後今回に調査結果を報告する時に上に話をするつもりではあるが情報開示が許可されるかどうかはマイルズには分からなかった。


「構いません。こちらとしても出来ればですから」


「それにしても此処まで環境が激変しているとはな……元に戻るまでどれだけの時間が掛かることやら」


 此処に来るまで魔獣や魔物を一切見ることが無かった。長いことが冒険者として活動しているマイルズ達からすればこんなことは初めてであり、依頼が終わったにも関わず何処か達成感というものがなかった。


「楽に終われば良いと思う時は良くあるが……こうもあの襲撃以外で何もないと何処か落ち着かないな」


 レックスは何処か暴れたりなく不完全燃焼いった雰囲気を醸し出していた。実際、マイルズとアラン、

ノーマンも動き足りないと考えていた。しかもこれから街に戻っても討伐依頼が出されている可能性は低くこれを発散する機会が無いと考えれば彼らも少し憂鬱だった。


「私もどうするかな……」


 依頼が無ければお金が稼げない。貯えはまだあるもののこれからお金が入ってくる機会が減少するとなれば無駄使いも出来ない。今は行動を共にしているリナのこともあり、今後のことを話し合わないといけにないなとミレーアは考えたのだった。






「お戻りになられましたか」


 ミレーア達を襲撃したマリアに対して跪いて恭しく首を垂れたのは本部付けの教会の大神官。それだけでマリアがそれ相応の地位にいることが察せられる光景だ。出迎えた大神官に出迎えの労いの言葉どころか一瞥すらなく奥へと進むマリア。一部の者しか入ることを許されていない扉を開けるとそこには教会の教皇が跪いていた。


「お帰りになさいませ聖女様」


 聖女というのは教会において能力の高い回復魔法の使い手に女性に送られる称号のようなものであり、本来は教皇が称号を与える立場であり、マリアに対して臣下のように振舞うこの光景は異様と言えた。


「私が出ている間に変わったことは?」


「王家の者が探りを入れてきているくらいです」


「まぁ、あれの騒動があればこちらを疑うのは仕方がない事ではあるからね。地下にあるあれのことを知っているのは王族のみ。何かあったのか聞きに来るのは当然だね。王太子も王女もどちらも優秀なのは良いことだ」


 皮肉ではなくマリアの言葉には掛け値なしの称賛の気持ちが含まれていた。それに対して教皇の表情は何処か陰鬱としていた。


「二人が優秀なこともあって今は裏で動くことが大変難しいところです。やはりどちらか一方を裏か手を回して亡き者にし……た……」


 そこまで言いかけた教皇は鋭い眼差し睨むマリアの視線に息が詰まりそうになった。ミレーア達と戦っていた時も飄々していたのに今の教皇の発言にマリアは本気で怒っていたのだ。


「……それ以上口にしたらこの場で消すよ。彼の子孫を害することは絶対に許さない」


「も……申し訳ございません」


 何か一つ此処で選択を間違えれば有無言わず本当に消されることになるだろう。それが分かっている教皇は深々と頭を垂れた。


「まぁ、今日は私の機嫌も良いから許してあげる。ただ次は無い。努々忘れないようにね」


「心しておきます」


 前任者は迂闊の発言をしたことでその日、偶々機嫌が悪かったマリアによってこの世から本当に消されてしまった。今日は機嫌が良かったのは本当だろう。でなければもっと息が詰まりかねない殺気を向けられていただろう。理由は不明だが教皇は自身の運が良かったことを感謝した。


「そういえば在野に強い力を持った回復魔法を使る子がいたけど理由は分かっているの?」


「例の冒険者をしている者ですか……どうやらあれらによって滅ぼされた村の出身のようで村が滅ぼされた後から冒険者を始める前の間の期間の足取りはまったく追えていません」


 逃したのがそれ程の力の無い者なら兎も角、相当の力を持った者を見落としたのなれば担当区域の責任者に責を問う必要がある。調査の結果、冒険者の間で異獣と呼称される存在が原因であることが分かった。


「成程、その時にあの人に拾われたってことか。……今になって現れたってことはもしかして感づいた?」


「聖女様?」


 何か考えるように黙り込むマリア。様子のおかしい彼女を不気味に思った教皇が思わず声を掛けた。


「ああ、少し考えことをしてた。それでその子については何かしているの?」


「冒険者ギルドとの関係を考慮して積極的には行動はしていないようです」


 ミレーアを教会に引き込むことが出来ればそれだけで上の覚えが良くなり出世できるだろが強引な手法を取り冒険者ギルドとの関係が悪くなれば破滅の未来となるだろう。正にハイリスクハイリターンといったところである。真面な思考の持ち主ならばまず手を出すのを躊躇うだろう。


「まぁ、そうだろうね。何処かの短絡的なお馬鹿さんが手を出す可能性はあるけど」


 マリアの言う通り組織は大きくなれば大きくなるほど、末端の状況は掴みにくくなる。彼女の言う通り目先に欲だけしか見えていない愚か者が問題を起こす可能性は0ではない。尤もその程度のことは冒険者ギルドも分かっているだろうから末端の暴走なら表立っての抗議はあるだろうが、裏で簡単な手打ちで済ませるだろう。


「ふふ、この先どう成長するのか楽しみ。あの人の思惑通りのなるのか、それとも力足りず止められないのか」


 これから先のことを考え楽しそうに顔をほころばせるマリアだった。






「お疲れ様でした」


 街に戻ってきたミレーア達は冒険者ギルドで依頼達成の報告するとそこで解散となった。詳細な報告はこの後マイルズが行うこととなっており、報酬の方は査定が終了次第後日支払われることになっている。また明日、今回の依頼の打ち上げをすることになった。


「先ずは帰ってきたことを伝え……る前に体を洗わないとね」


 長旅で体の手入れなど最低限だったため体や服が所々汚れている。とりあえずこれらを綺麗にしなければならないと考え自身の部屋に向かい身嗜みを整えると既に日は落ち始めていることに気づきリナへの報告は明日にしようと考えたミレーアはベッドの上に腰を下ろした。


「はぁ~……漸く一息が吐けた。フューアは良い子にしてた?」


「みゅあぁあ~」


 ミレーアがベッドに腰かけると直ぐにその膝に上にフューアは乗ってきた。そして、寂しかったと言わんばかりにミレーアの膝の上で体を擦り付けていた。擽ったくなるをの感じつつミレーアはフューアの体を撫でると嬉しそうにもう一鳴きした。


「そういえばフューアってあんまり体が大きくなった感じがしないけど……成長が襲いのかな?」


 食べ物は与えているし与えられた食べ物をしっかり食べているのは確認している。しかし、出会ってからフューアの体は大きくなっているように思えなかった。毎日見ているため成長に気づいていないだけの可能性もあるがそれでも大きくは変化していないのだけは確かだ。


「う~ん、栄養が足りないならそもそも元気が無くなるだろうし、こうやって元気一杯なところを見ると問題はなさそうだけど少し心配だなぁ」


 これが周辺に生息する既存の種ならすぐ分かるのだがフューアは少なくともこの周辺では確認されていない生き物である。精々テイムのようなことが出来たことから魔獣であろうということが分かる程度であり、それ以外の情報は一切ない。


「今度、相談に行ってみるかな」


 一人で考えたところで素人であるミレーアに分かる筈もなく、時間が空いた時に冒険者ギルドにあるテイマーの相談窓口に行ってみようと考えた。明日の予定と今後の方針を考え終えたミレーアは就寝時間になるまで今まで離れていた時間を埋めるようにフューアと戯れるのだった。

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