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第五十九話 調査(二)

「え~と……ここはミレーアさんの借りている部屋だと聞いたんですけど……間違っていましたか?」


「間違ってない。ミレーアは今は冒険者ギルドからの依頼で当分留守にしてると思う。私が此処にいるのはいない間のあの子の世話を任されたから」


 リナが視線を向けると女性神官のクーラもつられるようにフューアを見た。フューアの方は二人の視線を受けながら何かを考えるかのように仕草をしていた。


「それでそちらはミレーアに何か御用ですか?」


 少し警戒しながら問うリナ。ミレーアは数少ない在野の回復魔法使いであり、その能力もかなり高い。そんな彼女の部屋に教会の神官が訪れたとなれば答えは一つしかないと思ったからだ。


「あ、今日は神官としてではなくて私用出来ているんです。少し確認したいことがあったので……」


「……此処で立ち話するのも何だし、私が借りている部屋にいきましょう。流石に借主がいない部屋に上がるのは不味いだろうし」


「あ、そうですね」


 リナの提案にクーラは同意した。ミレーアの部屋の鍵を閉めるとリナはクーラを自身の部屋に案内した。


「それでミレーアに何か用事があるみたいだけど……そういえばまだ名乗ってなかったリナよ」


「クーラです」


「それじゃ、本題だけどミレーアにどんな用事があるの?」


 少し威圧するような問いかけ。リナとしてはミレーアは既に相棒であり、今回みたいな特殊な事情がない限りは共に依頼を受ける間柄だ。故にミレーアに何かするのならリナは容赦はするつもりは一切ない。


「それはですね……」


 少し気圧されるながらクーラはリナにミレーアの部屋に訪れた理由を話し始めたのだった。






「とりあえず此処も何もなしか」


 周囲よりも高い場所ではあるがそこもワイバーンに関する痕跡は見当たらなかった。ただ周囲よりも高いところにある分、目を凝らせば他の場所も見えた。尤もマイルズ達が見渡した限りそれらしいものは見当たらなかった。


「収穫は無しだが調べる場所をある程度だが剪定出来るのは有難いな」


 見渡す限り見当たらないということは少なくともそこは調べなくても良いということであり、無駄に細かく調べ骨折り損のくたびれ儲けということは無くなった。


「それにしても本当に風の音以外はしないな」


 断崖の間を風が通ることで音がしているがそれ以外の音が一切にしていない。植物は生えているににそれを糧にするだろう生き物が一匹もいない。


「不気味だ……夜の警戒はいつも以上に注意深くやる必要があるな」


「そうね」


 マイルズの考えに同意するソニア。レックス達も同じ考えのようでどうするのか案を出し合った結果、今までは二人であった見張りを三人に増やすこととなった。それに加えてエルフであるロニーの結界を張ってくれたことで安全性は格段に高まることとなった。魔法使いであるソニアとバーバラは後学のために張られた結界のことをロニーに質問していた。


「さてと」


 とりあえず今日は此処で一晩を明かすことになり、移動は余程のことが無い限り行わないため、ミレーアは荷物の整理をすることにした。支給された回復ポーションなどはまだ使っていないため、余裕があるが食料関係が少し怪しくなっている。予定では途中で魔獣を狩るなりして極力消費しない予定だったのだが予想外なことに先の街での魔獣、魔物の襲撃で周辺の魔獣などがいなくなっており補充の当てが外れてしまったのだ。かといって節約していては肉体労働が主な冒険者にとっては肝心な時に力が出ない可能性もあるため論外だ。調査に加えて食料の確保も急務であるが……


「むぅ……」


 辺り一帯にそれを期待出来るような場所は何処にもない。ミレーアも周囲の探知を使ったがこれといって食料になるような魔獣、魔物の反応は一切なかった。


「ミレーアちゃん、考え事してるみたいだけどそろそろ寝た方が良くない? 今日は夜に見張りでしょ?」


「あ、そういえばそうでした」


 いけないいけないとミレーアはマジックバックから出した回復ポーションなどを仕舞うとテントに入り夜の見張りに備えて眠るのだった。






「ふぁ~まだ少し眠いなぁ」


「おぅ、じゃあ夜が明けるまでよろしくな」


 今日の夜の見張りはミレーアとアラン、そしてニールだ。


「それにしても当初の想定とはいろいろ違い過ぎて困りました」


「ああ、流石に食料の補給の目途が立たないのは致命的だ」


 これだけでも異常事態と言えるが流石にこのまま食料の確保が出来なければ調査の続行は不可能と判断し、一度街に戻ることになるだろう。


「にしても長いこと冒険者をやってるがこんなことは初めてだ」


「大概の者達はそうでしょう……より大変なのは新人達になります。ベテランはまだ貯えがありますし依頼の出ている他の街に行くという選択もありますが、新人はそうはいきません。此処に来るまでに魔獣、魔物を見なかったことを加味すると冒険者ギルドの方でも依頼が殆ど出されていない可能性があります」


 そうなれば新人及び他の街に行く余裕の無い低層の冒険者と依頼の取り合いは必至であり、不利になるのはどちらかなど火を見るよりも明らかだ。ギルド側も新人向けの依頼を出す余裕があるのも怪しいところだ。


「考えてみれば確かに不味いなそれは……街に戻ったら魔獣や魔物じゃなくて人の手で街が滅んでたか笑えないぜ」


「やめてください。想像してしまいました」


 尤も本格的に不味くなる前には冒険者ギルドも手を打つだろうがこのまま魔獣、魔物がいない帰還が長引けば焼け石に水になりかねない。


「……皮肉ですね。人を魔獣、魔物から助けるのが冒険者だけどその魔獣、魔物がいなくなったら途端に困窮することになるなんて」


 ミレーアは今の現状にぼやくように呟いた。自分のように村を失う人達を助けるために冒険者になった。そういう意味では言えば魔獣、魔物に怯えず平和に暮らせるのは歓迎すべきことだろう。しかし、その先に待っているのが自分達が仕事が無くなり苦労することになるとは思いもしていなかった。


「まったくだ。魔獣、魔物はいるのが当たり前過ぎていなくなった後のことなんて考えたこともなかった」


「魔獣、魔物がいなくなれば平和な世界になるなんてよく耳にしますが、少なくとも私達冒険者は明日の飯にも困る状況になりそうだ」


 そうなればどうなるかなんて考えるまでもないことだ。実戦経験豊富なベテラン冒険者ならそのままその実力を買われて国の兵士となれるだろうが、問題は大多数を占める下位の冒険者達だ。魔獣、魔物がいなくなり金が稼げないならば、今でもな問題になっている落ちぶれた冒険者の行く先の一つである盗賊などが増えかねない。


「まぁ、考えても仕方がないさ。……今の雄叫びが聞こえたか?」


 会話の途中で何かを聞き取ったのが先程まで談笑で笑顔だった顔が瞬く間の無い速さで周囲を警戒するベテラン冒険者へと変わっていた。遠いが何かの咆哮が聞こえた。それ即ちこの付近に何かがいることを示唆していた。警戒をアランとニールに任せミレーアは寝ているマイルズ達を起こしに向かった。ミレーアが起こしに行けば彼らは瞬時に目を覚まし武器を手に出てきた。


「状況はどうなっている?」


「争っているな。方向は大まかに分かるが月の光だけじゃ詳しいことまでは分からん」


 距離があるため、聞き取り辛いがアランの言う通り咆哮は二種存在していた。つまり何かと何かが争っているということ示唆していた。


「少し遠すぎるな……咆哮から何がいるのか推測が出来ない」


 通常の冒険でも聞こえた咆哮などからその声の主が何なのか推察することは上位の冒険者なら必須の知識である。これを怠った結果、予期せぬ強大な魔獣、魔物が近くにいるという情報を見落とし全滅させられるというのは実際、あることである。


「私なら聞こえます。……どうやらどちらも既知の魔獣、魔物ではないようです。もしかしたら当たりかもしれませんね」


 エルフであるロニーがそう意見を述べた。身体的な特徴から人よりも耳が長いエルフは遠くの音も良く聞こえそうだなとミレーアも思っていたがどうやらその通りであったらしい。


「様子を見たところだが……流石に今の時間では危険すぎるな」


「ああ、見通しに悪い状況で別の何かに背後から襲撃された危険だろうしな。……夜が明けたら音のした方向に向かって調査するのが賢明だ」


 咆哮と共に僅かに聞こえて来る暴れぶつかり合う音がその戦いの激しさを物語っていた。長く冒険者をやっているマイルズからしても耳したことのない程の激しい音に彼らの頬に冷や汗が流れていた。その時、空へと放たれた一条の光が見えた。それと同時に激しかった戦いはピタリと止まり、勝利の咆哮を上げる音が轟いた。


「今のは見たことがあります。下水道に現れた異獣が似たようなものを口から出していました」


「なら本当に当たりのようだな」


 明日の目的は決まったものの今から夜明けまでどうするかを話し合った結果、勝利した異獣が此方に向かってくることを考慮して全員で起きて襲撃に備えたがしばらくしてもこちらに向かってくる気配がなかったことからミレーアとアラン、ニールが夜の見張りを続け残りの者達はテント中に戻ったのだった。

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