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第五十八話 調査(一)


「ミレーアから得た情報から推察するワイバーンの巣と思われる場所はこの付近になるが」


 マイルズ達は地図と周辺環境からワイバーンが巣作りし易い傾向のある場所に赴いていた。周辺は切り立った断崖であり所々、ワイバーンが降り立てそうなスペースも存在している。空を飛べるものでなければそこへは辿り着けない場所である。睡眠をとる時は無防備になりやすいため、出来るだけ寝込みを襲われることを避けるため、ワイバーンはこういった断崖に巣を作ることを好むのだ。


「……ワイバーンが巣作りするにはうってつけの場所だが調査するとなると大変だな」


 痕跡を探すためには崖の上をいかなければならない。翼持つ魔獣なら苦はないだろうが生憎人間にはそういった器官は付いていない。魔法で浮遊することも出来るが流石に全員浮かべることは不可能だ。こんな時はリナが居たら楽だったろうなと思うミレーア。リナの義足は垂直な壁すら登れる機能があるため、この程度の断崖など問題にすらならない。ランクが低いが貴重な高位の回復魔法が使えるということで特例で調査隊に組み込まれたミレーアと違いリナはそういった特例枠にはならなかった。尤もリナの義足の情報は冒険者ギルドでも極秘扱いされているため、どのみち参加は出来なかっただろう。


「魔法で土で足場を作りながら上に向かうか?」


「一度に多くの足場を作り出すことはできなわよ? それに上に敵がいた場合は足場の関係で不利になりかねないかしら?」


 話を振られたバーバラが試しに断崖の一部を土魔法によって形を変化させ、断崖に人が乗っても問題ない強度の足場を土魔法で作成した。大きさは人一人が乗れる程度であり、通り道として使うには問題は無いだろう。ただこの上で戦闘となれば心許ない大きさでもあった。


「もう少し大きく出来ないのか?」


「魔力消費と強度の兼ね合いからするとこれが限界。此処だけならまだしも他にも調べないといけないなら無駄な消費は出来ないわよ」


「確かにだが悠長にはしていられる状況ではないな」


 一つ問題を解決すればまた別の問題がまるでイタチごっこように現れる。どうしたものかと考えているとミレーアは断崖まで近づき観察するミレーア。人工物と違い断崖にはギリギリ足場になりそうな部分が幾つかあり、そこを使えば問題なく登ることは出来るだろう。


「少し上に登って安全かどうか見てきます」


 それだけ言うとミレーアは跳躍し、断崖に僅かにある足場を使い上に登っていく。頻繁に行っていたリナとの競争が役に立ったなとミレーアは思う。ミレーアは脚部強化用のマジックアイテムを身に着けていることに加え、リナと森の中で競争を行っていた時に不安定な太い木の枝などを足場にしていたこともあり、不安定な場所から跳躍し飛び移ることに慣れていた。


「よっ……っと……ふっ」


 危なげない足取りで断崖を登っていくミレーア。目的の場所に辿り着き安全確認を行うと下にいるマイルズ達に問題ないことを大声で伝えた。






「助かったが先に説明はしてくれ」


 登ってきたマイルズにミレーアはそう忠告を受けた。マイルズはバーバラが土魔法で生成した足場を使って登ってきた。足場だけでは不安なため、登りながら断崖に杭を刺しそれを掴んで体を支えるようにしてある。


「見た感じ此処には何もないようだな」


 ワイバーン一匹が巣にするのに十分な広さはあるが、それらしきものは見当たらない。かといって完全な無駄足というわけではなくある程度、他の似たようなワイバーンが巣作りするような場所の状況もある程度見えるため、次に探索する場所を絞り込むことが出来る。


「見える範囲では何もないか……ニールから見てどうだ?」


 レックスのパーティであるニールは弓使いであり、今回の探索メンバーの中で一番視力が良い。彼が見れば何か見落としが無いか確認出来るため、マイルズは尋ねたのだ。


「見える範囲には何も……此処よりもあそこの方が高いからあそこに行けばより多くのものが見えるかもしれない」


「あそこか……確かに此処よりも高いから此処よりもよく見えるだろうな。バーバラは大丈夫か?」


 足場を作り出すのはバーバラの役目であるため、彼女状況次第では今日は諦めなければならない。聞かれたバーバラは視線を目的の場所へ向け考える。


「高さからすれば可能だね。ただ時間を考えると全員が辿り着くのは夕方くらいになろるだろうね」


「なら今日は其処で一晩を明かすことになりそうだな」


 話が纏まれば時間が待ってはくれないため、直ぐに彼らは動き出した。






「それにしても不気味な程静かだ」


 エルフであるロニーが周囲を警戒しながらそう述べた。それにマイルズ達は首を傾げた。此処まで来るまでには魔獣や魔物の類とは交戦していなかったため、今までの移動も静かだった。魔獣、魔物が見当たらないのは先の街への襲撃において、国が用意した大規模殲滅魔法によって逃げる間も無く纏めて駆逐されたためである。その説明は既にロニーに情報交換の際に説明している。


「何か気になることがあるんですか?」


「……魔獣、魔物だけではなく他の生き物の気配が一切感じ取れない。こんなことは初めてだ」


 ロニーの返答にハっとする一同。今の季節からすれば此処に虫の一匹もいないのは不自然だ。空を見上げても鳥の一匹も見当たらない。まるで此処に来ることを野生の生き物が避けているような状況にマイルズ達は冷や汗をかいた。このまま進んで調査を行って大丈夫なのか、内心で自問する。


「おいおい、このまま進んで大丈夫なのかよ?」


 皆の気持ちを代弁するかのようにアランがそう述べた。だが此処で危険性を感じ何も見つからないまま帰還すればただの役立たずだ。冒険者ギルドからはそういった危険性を見越した相応の報酬を提示されていたし先の魔獣、魔物の群れを迎撃するために大量のアイテムを消費し何処もかしこも逼迫している中で優先的に出発前に消費アイテムの支援を受けている。


「言いたいことは分かるが流石にこれだけの支援を受けて何も見つけていない状態で危険と思われたから程度の理由で帰還は出来ない。せめて何か見つけない限りは……」


 今回の依頼の話がマイルズ達に回ってきたのはあの街において冒険者ギルドに貢献し、信頼されている冒険者であるからだ。その信頼を裏切る訳にはいかないのだ。






「合鍵はこれだったね」


 リナはミレーアに預かっている鍵でミレーアが借りている部屋の扉の鍵を開けると中へとお邪魔した。


「フューアちゃん……何処にいるの?」


 リナが此処に来たのは遠出しいつ帰って来れるか分からないミレーアに変わってフューアの世話をするためだ。餌代もミレーアから預かっており彼女が残したメモを頼りにリナは店で購入してきた。特に際立って特殊なものは無く普通に店にいけば買えるものばかりだ。


「みゅぁあ」


 リナが来たことで部屋の中の隙間からフューアが出てきた。


「少し待っててね。今から準備するから」


 リナは店で購入したものを台所で開けるとフューア用の食器に載せ、フューアの目の前の床に置いた。置かれた皿の上に乗った餌を何の戸惑いもなく口にし食べ始めた。それを眺めながらリナも自分の用に買ってきたものを食べ始めた。


「やっぱりおいていかれて寂しかったりする?」


「みゅぁ……」


 何気なくリナはフューアに聞くとそれに答えるかのように寂しいそうに鳴いた。やはりこの子は普通の魔獣とは違うとリナは思った。テイムされた魔獣が主と円滑に意思疎通が出来るのは当然だが、生まれたまだ数か月にしか経っていないにも関わらず契約もしていないリナの言葉を理解しているのはあまりにも不可解だった。そして、ミレーアの出会った時の話にも違和感があった。ミレーアの話では卵から産まれたとの聞いているが生物的特徴から卵生の生物にはとてもじゃないがリナには見えなかったからだ。ミレーアは疑問に思っていなかったようだが、実家が狩人でありその辺に知識があるリナだから気づいたことでもあった。


「うん、食べ終わったね。じゃあ、今から片付けるからね」


 空になった皿を手に取りリナは流し台で洗った。皿を洗いながらチラっとフューアを見ると先程のリナの言葉を聞いてミレーアと共に行けなかったことを気にしているのか何処か哀愁が漂っていた。今回に限ってはミレーアがフューアを連れていけなかったのは仕方がないことだ。今回の調査において特例枠として参加することになったミレーア。流石にそんな状態でまだ幼体と思われるテイムされた魔獣連れていくことは許可されなかった。仮に今回のように面倒を見てくれる相手がいなかった場合、ギルド預かりになっていただろう。


「まだフューアちゃんじゃ、強さとしては心許ないからね。成長して強くなれば今回の事態でもミレーアに付いていけるようになると思うよ」


 あまりにも可哀そうだったのでリナはフューアに慰めるようにそう呟いた。実際、先の街での戦いでも小さいながら勇敢に魔獣に挑みかかりミレーアのことをサポートしているのはリナは目撃している。このまま成長し、強くなればその可能性は十二分にある。


「ん?」


 そこまで考えているとコンコンとドアを叩く音が聞こえた。ミレーアの客だろうかと考えたリナは本人がいないことを伝えるためドアを開けた。


「え……?」


「ん?」


 ドアを開けるとそこには目的の人物と違う人物が出てきたことに驚く女性神官がいたのだった。

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