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第三十七話 届け物

「ふむ、それで話というのは何だ?」


 ジェライクの元を訪れたミレーアは新たに知ることとなった情報を彼に一通り話した。ジェライクに何処まで話して良いのか既にギルドマスターに確認を取っており、彼は信用できるため情報を全て開示して良いとの許可を貰っている。ミレーアは何かがあったのか一通り彼に話をした。彼女の話を聞いていたジェライクの表情は話が進む度にその眉間に皺が増えていっている。


「以上があったことです」


「何ということだ……何故、その場にいることが出来なかったのか悔やまれる」


 ジェライクからすればミレーアが体験したことは彼がどれだけ望んでも得ることの出来ない情報の宝山というべき内容だった。その場にいればどれだけの未知と出会えたのか想像するだけで彼は身震いしていた。アギトについてはギルドからジェライクの方にも連絡が来るだろうが、知ってしまったからには今すぐにでも見に行きたい気分に彼はなっていた。


「それで例のものを受け取りに来たんですが」


 話せることはまだたくさんあるのだが、自分よりも詳しいアギトがいるため詳しい話はそちらに丸投げすることにしたミレーアは今日、此処に来た目的の話に話題を移した。


「ん、ああ……それなら此れだ」


 ジェライクは作業用の机に載っていたのを掴みミレーアに手渡した。受け取ったものをミレーアは繁々と確認する。それは手首辺りに取り付けられらる腕輪だった。


「思っていよりも小さいですね」


 前回此処で測定の為に使った様々な機器と比べ明らかに小型化されたそれを見て本当にこれで測定出来るのだろうかとミレーアは疑問に思った。


「試験的なものだが、それ自体は君の力を観測するだけのものであり必要な情報は対になっているこれに送られる仕組みだ」


 ジェライクが取り出したのは抱えなければ持てそうもない大型のマジックアイテムだ。最初は一体型で作るつもりだったのだがそれではミレーアの動きを阻害する程の大きさになってしまうことが設計段階で判明し、機能を分けることなった。必要な機能だけを取り付け大きさを削りに削り切った結果、無事ミレーア側は動きを阻害しない腕輪で済んだ。しかし、代わりに観測されたデータを受け取る側のマジックアイテムは当初はなかった機能を多数盛り込んだため、元のものよりも大きさが肥大化してしまった。


「まぁ、それでもこの方は君にもいいだろう」


「確かにこれ程の大きさじゃないとしても常に持ち歩くのは遠慮したいですね」


 だよなっと言わんばかりに苦笑するジェライク。


「それで話はこれで終わりですか?」


「……他には何もないな」


 目的のものを受け取ったミレーアは念のため他に何かないか確認を込めてそう尋ねるとジェライクは少し間、他に何かないか考えたようだが特に思い当たるものはなかったためそう返答した。


「なら私は今日はこれで失礼します」


「頼んだ」






「さてと、今日はどうするかな」


 今からギルドに顔を出しても碌な依頼が残っていないだろうし、ギルド側も受注された依頼の処理作業で忙しいだろうから時間をずらして後で赴くつもりだ。さて何かそれまでの間、何か時間を潰せるものはないだろうかと考えているとガントレットを作製して貰った鍛冶屋の看板が目に止まった。


「そういえば実際の使い心地とかそういうのまだ何も言ってなかった」


 思い立ったが吉日と言わんばかりに鍛冶屋に足を向けたミレーアはドアを開くと前に来た時と同じようにそこにはドゥハーが店番として立っていた。


「お、嬢ちゃんか今日はどうしたんだ?」


「少し暇だったから時間を潰しがてら先日作ってもらったガントレットの感想を伝えに来たよ」


「お、そうか。それで実際に使ってみた感じはどうなんだ?」


 ミレーアは実際に戦闘で使ったことによる使い心地や今後の要望点を伝えるとドゥハーはミレーアの要望に見合うの材料を幾つか提示する。ミレーアもそれを使うことによる値段などを聞くとドゥハーは直ぐに見積もりを出しミレーアに伝えた。


「う~ん、材料を持ち込んだ場合だとどれ位になります?」


「それだとこんなもんだな」


 ドゥハーが指を三本立てた。


「随分と安くなるんですね」


「加工自体は難しくないが材料が少し高い。魔物の方もベテランの冒険者が相手をするようなのだしな」


 つまるところ今のミレーアでは手に届かないものであるということである。先の長さに溜息を吐きたくなるミレーアだが、逆に目標が出来た前向きに捉えることにした。とりあえず伝えることは伝えたし店を出ようとするとドゥハーに呼び止められた。


「何ですか?」


「ああ、少し届け物があることを思い出してな暇なら嬢ちゃんに頼んで良いか? 無論、報酬は出す」


「良いですよ。まだ時間もありますし」


 快く引き受けたミレーアはドゥハーから一抱え出来そうな荷物を受け取った。重さもそれなりにあるため、ミレーアはそれをマジックバックに収納した。


「届けてもらう場所だが、今から地図で説明する」


 街の地図を取り出したドゥハーがミレーアに荷物の届け先を伝える。街内ではあるが行って帰ってくるとなればそれなりの時間になりそうだ。届け先を確認したミレーアは直ぐにそこへと向かった。


「成る程、こういう時には便利だね」


 荷物自体の重さがそれなりであり、それを運んで歩くとなれば大変だっただろうがミレーアのマジックバックに入れた場合、入れた代物の重量がマジックバックに加算されない。これ自体はマジックバックに施された魔法によるものである。ギルドの直営のマジックアイテム売り場で同じ性能のものを見たが、その目が飛び出しそうな値段に流石のミレーアも絶句した。ただこの利便性を経験してしまったからには怖くて持ち歩けないとはいかず、今も普段使いしており実際に先日の遺跡での戦いでは大いに役に立っていた。


「と、ここら辺だね」


 いろいろ考え事しながら歩いてたら目的の場所に近づいていたことに気づいたミレーアはドゥハーが教えてくれたことを反芻し、届け先の建物を探す。件の建物は直ぐに見つかった。そこは寂れた個人で経営している鍛冶屋だった。ドゥハー達の先輩であり、幾人もの最高ランク冒険者の武具を鍛えた程の腕前だったという。

 今は店をドゥハー達任せて隠居し、こうして小さな鍛冶屋で老後の生活を送っているとミレーアは聞いた。


「すいません」


 ドアをノックし、声をかけるが反応がない。今は出掛けているのかなと思ったが耳を澄ますと中から微かに声が聞こえた。


「取り込み中かぁ……時間もあるし少し待ってるかな」


 中にいる鍛冶師と話しているのなら十中八九何か作製して貰いたいものを依頼しにきた客だろうと考えたミレーアはドアから離れて話が終わるのを時間もあるし待つことにした。






「おや、こんなところでお一人でどうしたのですか?」


 なかなか話が終わらないなぁっと考えている誰かに話しかけられたミレーアは声のした方を向いた。そこにいたのは隠してはいるが品の良さが身なりや立ち振る舞いから所々滲み出ている整った顔立ちの青年だった。

 その足運びから只者では無いことはミレーアは一目で気づいた。言葉こそこんなところで一人でいるミレーアを心配し親切に声をかけたような声音だが、その実何処か彼女のことを警戒しているのが伺えた。そんな警戒されるようなことあったけっと心当たりのないため内心でミレーアは首を傾げた。仮にミレーアが不自然な動きをすれば腰に帯びた剣を瞬時に抜き放ちそうであった。


「此処の鍛冶師の人にお届け物があったんですが、今は取り込み中みたいなので待っているんです」


「ああ、そういうことですか。すいません……もう少ししたら終わる思いますので」


 何故かそう謝罪されたことでおそらくは中で鍛冶師に依頼している側の人物と知り合いなのだろうとミレーアは考えた。青年も知り合いの話が終わるまで待つことにしたのかそのままミレーアの横に並んだ。しばらく二人はそのまま無言で待っていると鍛冶屋のドアが開き燃えるような赤い髪の女性が出てきた。


「あら、ずっと此処で待っていたのかしら?」


「先程までは他の用事を済ませていたところです」


 女性の方が目上なのか畏まった返答をする青年。女性はミレーアの方な視線を向けた。

 

「……隅に置けないわね。私が重要の話をしている最中にこんな可愛い子を侍らすなんて」


「何を勘違いしているか知りませんが、彼女は此処の鍛冶師に荷物を運びに来ただけですよ」


 あら、そうなのっと女性がクスクス笑いながら返答した。どうやら彼女なりの冗談だったようだ。


「それで交渉の方は……⁉」


 青年が何か言おうとした直後、何かに気づき女性の前に出た。剣を抜き飛来した何かを叩き落した。キンっという固い音ともに何かが地面に転がった。それは先端が鋭く尖った金属の棒だった。飛来した速度からして仮に当たっていれば女性の体に深々と刺さっていただろう。


「別にこれくらい自分で何とかしましたのに」


 そう言った女性の人差し指と中指に青年が叩き落としたものと同じものが挟まっていた。青年が叩き落したのは囮であり、別方向からの本命が彼女を射抜く手筈だったのだろう。


「そういう訳にはいきません。万が一ということもあります」


 心配性ねぇっと呟くと突然の事態に目を白黒させているミレーアの方を見て女性は悪戯っぽい表情で話しかけた。


「こっちのトラブルに巻き込んじゃったみたいね? お願いがあるのだけど今、此処で見たことは黙っていて欲しいの」


 一連の流れを貴族間の問題ごとだとミレーアは察した。巻き込まれては面倒でしかないため、何も言わず頷いた。しかし、その直後に背中から強い衝撃がミレーアを襲った。

某狩りゲーと二束わらじは辛い

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