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第三十五話 今後の予測

「うわ~これは本当に凄いですね!!」


 一人の男性が開かれたアギトの鎧の中を見て感動したような声を挙げた。彼が見ている鎧の中には骸骨に装着された大量のマジックアイテムだ。それらは失った臓器や肉を代わりになるかのように付けられている。マジックアイテムが内蔵などの臓器だとすると鎧はさしずめ体表といったところである。彼はギルドの職員でありマジックアイテムの作成や鑑定を行っており、彼からすればそこにあるのは宝の山だと言えた。


「目的を忘れないでよ、アンドレー」


 そんなアンドレーに呆れたような声音でルイーズは釘を刺した。尤もルイーズはアンドレーが興奮するのは無理ないことだと思っている。元高位ランク冒険者の魔法使いであったルイーズは多数のマジックアイテムを所持し冒険で使っていた。そのため、下手な鑑定士よりも目は肥えており、鎧の中にある数々マジックアイテムがどれもが一級品であることは一目で見抜いていた。仮にどれか一つでもそのマジックアイテムを売れば最低でもベテラン冒険者三か月くらいの稼ぎにはなるだろう。


「それにしてもこれだけのもの見せて頂いて良かったんですか?」


「リナのこともあるからな、今更に隠しても仕様がない。それに代わりにこちらの条件をいろいろ飲んで貰ったから取引として悪くなかった」


 この世界の住人ではないうえに正体がアンデッド系統魔物となっては冒険者登録するのにも苦労することになるだろう。職権乱用ではあるがギルドマスターが信頼出来る職員にだけ彼の正体を明かし冒険者登録を内密に行った。今まで幾つかの異界を渡った中でこういった登録を行うことが出来たのは片手で数える程しかなかったとアギトは述べていた。尤も登録出来なかったら出来なかったでやりようはあるため、本人としては少し動き易くなった程度で大きな問題ではなかったりする。


「一部、デザインがミレーアちゃんのものと同じだね。もしかして同じ製作者?」


「ああ、冒険の最中に仲間に裏切られて殺されアンデッドなって復活した直後に出会って気に入られ助けられたのが始まりだ」


 アギトの話を聞いたルイーズは溜息を吐いた。多くある事例では無いが自分達の世界でも仲間を冒険の途中で裏切る冒険者はいるからである。


「別の世界でも質の悪い冒険者がいるってのは変わらないってことか」


「そういうことだ」


「それにしても上質なマジックアイテムをこれだけの量を作れるのも凄いですが……その大本になるこれだけはアギトさんにも何も分からない、ですか」


 アンドレーが見ているのは胸部に心臓の代わりとしてつけられた正体不明の何かだ。そこだけは唯一の生体部品であり、驚くべきことにこれがアギトに組付けられた全てのマジックアイテムに必要な魔力を賄っていることから彼の心臓部とも言える重要な機関である。


「製作したのはミレーアの師匠とその仲間だという強大な力を持ったアンデッドだ」


「私たちから見ればアギトでも十分強大なんだけどね」


 鎧内部に幾多のマジックアイテムを備えた上に多少の息切れはあるものの尽きない魔力。おまけに鎧はアンデッドの苦手とする光系統の魔法を遮断する機能を持っている。これで技量が低ければまだ何とかなるのだがアギトの立ち振る舞いから元冒険者であるルイーズは彼の技量をある程度見抜いていた。その見立てで判断するならアギトの総合的な実力は最低でもベテランの冒険者パーティの三つや四つは簡単に壊滅させられるだろうとルイーズは考えていた。


「俺の場合、対人戦向けだからな。あっちは元々の能力で小国なら滅ぼせるくらいだ」


「……聞かなかったことにするよ」


そんな恐ろしすぎるアンデッドの話なんて聞いたら後悔すると感じたルイーズはこれ以上はこの話題の詮索することを止めた。


「まぁ、唯一の救いはあまりアンデッドっぽくないところだったか」


「……それはアギトにも言えるけどね」


 アンデッド系統の魔物は生者に対して妬み恨みから攻撃的であり、同じ死者側に引きずり込もうとする。あれらの行動原理は未だ分かっておらず危険性も高いため研究は殆ど進んでいない。異界のアンデッドとは此方のとは違うのだろうのかと思ったが今の会話から察するに普通のアンデッドの認識はアギトも同じらしい。


「俺の場合は最初からこんな感じだったからな、素質なのかもしれない」


「そんな素質いらないかな」


 アンデッドになっても普通の人間と同じ思考が保てる素質など下手をすれば多くの者にとっては自分が死んだことを受け入れられず精神が崩壊する可能性が高くより不幸な結末だろう。下手をすればそのまま生前の知識を十全に活用できる質の悪い亡者になりかねない。


「それでリナの方は?」


「あの娘なら今、別口で診察を受けてる。一応は身体に対する影響を経過観察して貰うことになってる」


 今は大丈夫でも後になって問題が噴出するのはよくあることだ。使われてのが未知の技術で使われているのなら尚更だ。ギルドマスターに問題は無いのかと質問されたアギトは問題無いと述べた。それでも自身の言葉を鵜呑みにせず自分達で可能な限り調べようとする姿勢をアギトは内心で評価していた。


「それで彼女の今後の扱いは?」


「まぁ、事情を知ってるミレーアちゃんと組む方向で今のところは調整中かな。あの二人なら相性は悪くないだろうし」


 回復魔法が使える前衛型と機動力の高い後衛型になるため、コンビを組ませた方が良いのは確かだがそこに別の意図が透けて見えた。


「……監視をするなら纏めた方が良いというところか?」


「出来ればそっちにも手伝って欲しいところだけど」


「分かった。可能な限り何とかしよう。隠密用のマジックアイテムもあることだしな」


「ありがとう」


 アンデッド化の利点は疲労が溜まる身体が既に存在しないため、不眠不休で活動することが出来ることである。そのため、アギトは一晩中休まず監視することが出来る。尤も体は疲弊しなくても精神面はそうでないため、日中は休むつもりである。協力してくれることにルイーズは礼を述べた。アギトはとりあえず今の勢力図がどうなっているのか大まかで良いから聞くことにした。


「それで動くとしたらどの勢力だ?」


「まだミレーアちゃんの話はそこまで広まってはいないけど、いずれは問題ある貴族の耳には入るだろうね。表立って動けばそれこそギルドを敵に回すことになるからまず無いけどね」


「……? 権力を笠に脅すだろうそういう連中は」


 今まで異界を巡った来たこともあり、そういった事例は何度か見ているアギトが不思議に思うがルイーズの返答で納得すこととなる。


「それはこの国で最も貴い一族の方を敵に回すことになる」


「成程、確かにその手の連中には避けたい事態だな」


 基本的に小物な連中も多くに国で最も貴い一族に睨まれれば吹けば飛ぶような存在だ。故にばれないよう裏工作を張り巡らせるだろうが大半はお粗末であり、寧ろそれを隠れ蓑にした本物に注意しなければならない。


「後は教会の連中だが……こちらはどういった手で来るのかまったく読めない」


 宗教の厄介さもアギトは幾つか世界を巡ったこと身をもって知っている。上層部は兎も角、狂信者と化して自身の命すら厭わない相手程、厄介な相手はいないのだ。そしてこの世界においてギルド側が教会の動きを読むことが出来ないのは在野でミレーア程の回復魔法の使い手がこれまで現れたことがなかったため、どういった手段を取るのか予測がつかないのだ。あれ程の使い手を教会が放置するとは思えず、ギルド側も将来有望な冒険者を見す見す教会に掠め取られるつもりはない。


「裏方の実働部隊はどうだ?」


「持っているだろうけど、不明だね。何せ隠蔽されていない限り教会が秘密裏に動くことが予測されるような前例もなかったからね」


 そのため本当に動いていないのか隠蔽に長けているのかすら不明である。そもそも今までうまく回っていたため、ギルド側も教会と敵対したことすらないのである。ただ教会側も表立ってギルドと不仲になるのはリスクが大き過ぎるため、強引な手段で教会に入信させることはしないだろう。


「立場を餌にして自分から入信をすればそれで良し。……最悪の場合、争いの火種になるのは目に見えているから」


「後々の禍根にならないように事故に見せかけて居なかったことにすれば良いか?」


 アギトの言葉に返答せず溜め息だけ返すルイーズ。ただこれは考えられる限り最悪なパターンであり、もっと穏便に済む可能性はある。それでも組織として最悪な状況を想定し動かなければ取り返しのつかない事態になってしまう可能性は十二分に想像出来た。


「権力争いはどの世界にいっても変わらないな」


 くだらないと言わんばかりの声音で吐き捨てるアギト。


「とりあえず細かい打合せなんかはこの後、ギルドマスターを交えてだね。……今は調査に集中することにするよ」


「さて何処までは調べものにすることが出来るか、お手並み拝見といこうか」


 少し挑発するような物言いでアギトそんな冗談を口にしたのだった。

 

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