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第三十話 狙われる理由

 アギトの話を聞いた上で異獣と戦う道を選んだミレーア達。もちろん何の備えも無しに戦いに行くという訳では無く、義足の施術を受けたついでに武器のことを方舟から学習させられたリナがジーロにも武器の使い方を教えたことで彼もある程度は武器庫から持ち出した強力な武器を使えるようになった。彼が最も得意とするのは槍だが、リナと違い広く武器を扱えるため一通り武器を手に触れ確かめた。ミレーアはそのまま師匠から貰った自分の武器を使おうとしたがそれにアギトが待ったを掛けた。


「どうしてですか?」


「そのガントレットだがミレーアの技量不足で力を十全に発揮出来ていないだけならまだ良い。だが制御出来なかった魔力が腕を傷つけているのは流石に見過ごせない」


 アギトにハッキリと問題点を指摘されバツが悪そうな表情をするミレーア。ジーロとリナもそんな欠点があるなど思いもしなかったのか驚愕の表情を浮かべた。


「自身に回復魔法で治して強引に使っていたようだが、今は頼れる仲間がいるんだから頼れそれはどうしようも無くなった時にだけ使え」


 反論は受け付けないぞと言わんばかり強い口調にミレーアは素直に「はい」とだけ答えるしかなかった。街の鍛冶屋でガントレットを作成依頼したのは性能が高過ぎる以上にこのデメリットがあったためである。下水道の戦い以降、多少マシなのは武器庫のドアを破壊した時に確認している。だが大型魔獣と同等のサイズである異獣にダメージを与える威力となれば自身への反動があるだろうことは彼女も容易に想像出来た。


「それに異獣に真っ先に狙われるのはミレーアになるだろうから安全を第一に考えろ」


 アギトの断言に自身が異獣に優先的に狙われる理由に心当たりがなくミレーアは内心で戸惑った。

 

「何故、彼女を真っ先に狙うですか?」


 疑問に思ったジーロが尋ねる。先に聞きたいことを尋ねられてしまったミレーアだが優先的に狙われると聞いて先程のこと思い出した。サイクロプスにより窮地に陥った時、出現した異獣は明らかにミレーアの方を向き狙いを定めていた。それは彼女には異獣を引き付ける何かがあるということだ。そう考えたミレーアに心当たりがあった。死んだと思っていたジーロが姿を現した時、怪我を回復魔法を使おうとしたミレーアをアギトがそれは異獣に察知されると止めたからだ。そこまで考え至ったミレーアはアギトの方を向いた。


「どうやら答えに辿り着いたようだな」


「……回復魔法に何か秘密があるんですか?」


 街でジェライクに聞いた回復魔法の話を思い出す。大元は光魔法系統であり、今の形になったのは初代聖女からとされており、能力が高ければ欠損すら治せるそれを魔法研究を行っているジェライクですら神の御業に最も近いと言い切った程である。教会が情報を秘匿していることと在野ではミレーアを除いて高い能力を持つ使い手が確認されていないため、教会以外では殆ど何も分かっていないことが現状だ。

 アギトがその貴重な情報を持っている上に自分が異獣に狙われている原因となっているならばミレーアからすれば無視出来る筈も無い。


「回復魔法には魔力の他に異獣の力に近い性質のものが含まれている」


 アギトの衝撃的な発言に言葉を失い唖然としたミレーア。ジーロとリナも同じようにその発言に衝撃を受けたことで呆気にとられていた。しばしの沈黙の後、疑問が抱いたジーロがアギトに質問した。


「それなら既にその力は観測されている筈では?」


 教会が秘匿しているとはいえ在野にはミレーア程では無いが回復魔法を使える者は稀にいるし魔法を研究している者達がそういった使い手に協力を求め研究することは過去に何度かあったことだ。ジェライクもその一人であり、街一番の魔法使いの彼ですら何も観測出来ず現時点では先達と同じように何一つ分かっていないのである。


「あれは変質し易いんだ。いや万能と言っても良い。この世界の回復魔法に含まれるそれはオリジナルに比べて回復魔法に特化するようになっているようだが、流石に探知魔法などを使って直接魔力を当てれば変質し魔力に変化するだろうな。そうなると観測は不可能だ」


「魔力に変質するですか、それはもしや根源の力に類するものですか?」


「根源の力?」


 聞きなれない言葉に首を傾げるミレーア。


「魔法学においてあるとされているが誰もその存在を証明することが出来ない大元の力。魔力すらもそこから派生したものに過ぎないとされているんだ」


「この世界ではそう言われてるのか……だが概念としては近い。実際に異獣がいた元の世界じゃ一部の特殊な才を持つ奴はそれを実体ある武器に変えることも出来たそうだ」


「実体のある武器に変えるってそんな滅茶苦茶な……って、あ」


 魔力の大元だということはそれも実体のあるものではないエネルギー的な何かということだ。それが実体ある物質に変わるなどとてもじゃないが信じることが出来なかったミレーアだが、そこでジェライクが回復魔法の異質な点を述べていたことを思い出した。


「傷を治したら餓死した」


 ジェライクは口にした簡潔で分かり易い言葉。ミレーアには詳しい話を聞かされても内容をあまり理解出来なかったが、それでも食べた物が自身の血肉となることは分かる。簡易的な傷なら未だしも重傷となればそれ相応の栄養が必要となるのは明白だ。回復魔法はそれらを無視して体を治していることになる。つまりその足りないものを何かで補完しているということだ。それが回復魔法に含まれている変質し易い何かということになる。


「武器を作り出せるなら確かに肉体の欠損を治せてもおかしくないか」


「回復魔法用に特化するために若干の変質は見られからまったく同じとは言えないがそれでもこの世界においては奴らにとっては最も自分達の性質に近いものになるから優先捕食対象になるだろう」


「嬉しくないですけど、それなら益々あれを此処で仕留めないとまずそうですね」


 仮にここから逃げたとしても残された匂いを嗅ぎ取って淡々と追いかけ回される可能性は非常に高い。それこそ街まで付いてこられては目も当てられない。


「それで異獣は今何処に?」


「流石にあの巨体じゃ入れる場所は限られるからな。匂いを辿ってミレーアを追っているようではあるが回復魔法を使わなかったことでまだ完全に補足はされていないだろう」


 入れる場所が限られている異獣は壁を破壊しつつ向かって来ていることもあり進行速度は非情にゆっくりだ。尤もこんな狭い場所で戦う気は更々無く四人は何処か広い場所で戦うつもりである。


「地上は……異獣が暴れた振動で地面がまた崩れたら危険ですね」


 ジーロはセオリー通り一番広く戦える場所として提案しようとしたが自分達か此処に落ちる切っ掛けを思い出し地上で戦う提案を取り下げた。


「サイクロプスが出て来た広い場所とかどうですか?」


「あれが戦える場所なら確かに丈夫に作られてはいそうかではあるか」


 意見を聞いていたアギトもミレーアの出した意見に賛成だった。彼が事前に見ていたこの方舟の見取り図から考えてもあそこで戦うの一番安全と言えた。






 それは遠方から発せられる同胞の気配に少し前から気づいていた。満たされない空腹に喘ぎ今も必死になってこの世界で数少ない最も生存に適した対象を取り込もうと必死である。それにとって同胞は味方では無く寧ろ邪魔な敵だ。出会えば殺し合い敗北した側を取り込むだろう。生まれた時に戦闘能力を代償に高い索敵能力と同胞から索敵を妨害する能力を高めることをそれは選んだ。その能力は絶大でそれは同胞にまず居場所を悟られないだろう高い隠密能力を手にした。あとはじっくり成長をしていくだけだが何事も全て上手く行くと言うことは無く少し不味い状況に陥りそうだった。しかし、今のそれは直接妨害する力はおろか此処から出ることも叶わない程肉体面では貧弱だ。そのため、それは無事に何事も無く終わることを願うしかなかった。






「まさかまた此処に来ることになるとは」


 目的の場所に辿り着くと何かイレギュラーなことが起こっても直ぐ対処出来るよう慎重な足取りで周囲に危険が無いか四人は確認した。異獣とサイクロプスの戦いにより壁の一部が破損し柱も何本が一部が削れている。床も幾つか凹んでおり戦いが如何に激しかったのかを物語っていた。その惨状を見たアギトを除いた三人は此処が地下であることを踏まえてよく崩壊しなかったものだと異界の方舟の技術力の高さを改めて知ることとなった。そして敗北したサイクロプスは壁際で擱座していた。その背中にはミレーア達が襲われた時は見なかった巨大な砲のようなものが展開されていた。


「一番戦えそうな場所を案として出したまでは良かったけど……実際にこの場に戻って来るといろいろと思うことがあるね」


 サイクロプスに襲撃されたこの場所に良い思いは無い。冒険者仲間の一人が死んでしまったのだから当然と言えば当然かもしれないとミレーアは思った。特別親しいと言う訳ではなく顔見知り程度の関係だったが、初めて冒険者としてパーティを組んだ時のメンバーの一人だったことから少しだけ思い入れがあったのかもしれないと彼女は思った。


「うん。ならやっぱり残された者の責務を果たさないとね……もう呼んでも大丈夫ですか?」


「ああ、やってくれ」


 アギトからもGOサインと貰ったミレーアは全力の索敵を行った。彼女の索敵は回復魔法の応用で編み出したものだ。つまりこれを使うことは異獣に自分は此処に居るぞと教えることに他ならない。逆に言えば誘き寄せる場合はこれ以上適したものは無いと言えた。ミレーアが索敵を行うと間を置かずして何かがこちらに近づいてきている足音がしている。徐々に大きくなる足音のする方向には大穴の空いた壁が見えた。サイズからしても異獣が破壊し通った痕跡であることは間違いない。そして、想像通り穴から姿を現した異獣はミレーアに向かって大きな咆哮を上げるのだった。

第二ステージボスとの戦い開始

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