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第二十七話 義足

「何処に向かっているんですか?」


「リナの足を作れる場所だ」


 リナを背負いアギトの後ろを歩いていたミレーアが尋ねるとアギトはそう答えた。治療では無く作ると答えたことに首を傾げるミレーアの代わりに背負われているリナが口を開いた。


「もしかして義足ですか?」


「正解だ。ここの設備がまだ生きていることは既に確認済みだ」


 リナの言葉を肯定するアギト。義足といっても単純に足を模しただけで歩行機能が無い見てくれだけのものから魔力で稼働し実際の足と遜色ない程自由に動かすことが出来る魔導具なものまで千差万別だ。無論足が自由に動くほどの高性能な魔導具の義足など製作費どころからその手前の材料費の時点で庶民どころか貴族でも爵位が低い下級貴族では容易に手を出せるものでは無い程高額であり、実質支払いが出来るのは爵位の高い上級貴族かそれに匹敵する程の財を持つ一部の者だけだろう。だが此処に来るまでに目にしたこの遺跡の武器庫にあった武器がどれも一級品以上のものばかりだったことから、もしかしたらここには自分で自由に動かすことが出来る高性能な義足が幾つかあるのかもしれないとリナは無意識ながら期待していた。


「ここだ」


 特に何事も無く目的の場所と思われる部屋のドアの前に三人は辿り着いた。この遺跡のゴーレム?にはミレーアの探知では引っ掛からないため先んじて対応することが出来ず、リナを背負って動きが制限されているため途中でゴーレム?が襲い掛かってきたらが来たらどうしようかと考えていたミレーアは何も起こらなかったことに内心でホっとした。そんな内心でミレーアが安堵しているなど露知らずアギトが無造作に部屋のドアノブに握り回すと武器庫の時とは違いすんなりとドアは開いた。無警戒に室内に入っていくアギトに続いてミレーアは慎重に室内へと入り中の様子を窺うと、何やら複数のチューブのようなものに繋がれた人が一人入れることが出来る程の大きさがある楕円形の箱のようなものが複数個目に入った。


「ここは一体何ですか?」


「戦闘用義手や義足を取り付ける医療施設だ。……彼女をそこの中に寝かしてくれ」


 アギトが光るパネルを操作すると楕円形の箱の一つの蓋が自動で空いた。中には人が一人寝そべれる程のスペースがあり、少し不安に思いながらもミレーアはアギトに言われた通りリナを箱の中へ寝かせた。リナの方はまた歩けるようになる義足が手に入るという期待半分と初めて見るものの中に寝かされることに何処が不安半分といった複雑な表情だ。


「作業が開始されると蓋が閉まるがそこは我慢してくれ」


 そうリナに断りを入れるとアギトはボタンを押してそれを起動させた。プシュッという音と共に蓋が閉まると内部の音は一切聞こえず静寂だけが辺りを満たした。そんな音も何も聞こえない状況を不気味に思ったミレーアは何か話そうと口を開くが何を話せば良いのか分からず開いた口から声が出ることはなかった。


「本当はこれは使わず壊そうと思っていた」


 静寂の中、アギトが唐突にそう告解するように口を開いた。


「え……?」


 破壊するのなら如何してリナに対してこれを使うことにしたのか分からず戸惑うミレーア。そんな彼女の戸惑う心情を察したのかアギトは話を続けた。


「なら此処のことを黙っておいて後で破壊すれば良いと思うだろ? 実際にここで使われている技術は危険度は相当なものだ。これだけの技術を持った機器はミレーア達の世界じゃ一般的なものか?」


「師匠に教えて貰ったことや街で見たものから判断するなら一般的な物じゃないと思います」


 もしかしたら王都なら違うかもしれないと思ったが見た事が無い以上はミレーアには王都にこれだけの技術はあると言える根拠は何一つない。すると二人の背後から別の声がした。


「そうですね。少なくとも私が知る限りでも一般的ではないと思います」


 聞き覚えのある声にミレーアは振り返り後ろを向くとそこには体に幾つかの傷を負ったジーロがいた。


「え!? あの時潰されてたんじゃ!?」


 てっきりあの時死んでしまった思っていたジーロが無事だったに驚きの声を上げたミレーア。そんな彼女の反応にジーロは苦笑しながら答えた。


「ああ、あの時実は寸前で車体と床に人一人が寝そべれば入れそうな隙間が在ることに気付いて一か八かで飛び込んだんだ」


 結果賭けは成功し巨大ゴーレム?に引き潰されという事態は回避出来た。寧ろ危なかったのはその後の巨大ゴーレム?と大型魔獣との戦いに巻き込まれない様に逃げる時だった。動きを見極め慎重に動いていため、合流まで時間がかかってしまった。


「無事だったか、生きていることに気づいていたが助け出せなくすまない」


「構いません。寧ろ仲間を無事なところまで案内して頂いてありがとうございます」


 アギトもジーロが生きていることには気づいていたようだが、ミレーアは目の前のことに手が一杯だったうえに巨大ゴーレム?の影に隠れていたためジーロが無事かどうか目視で確認することが出来なかった。彼女の回復魔法を応用した探知では死んだ直後の場合は反応があるため、生死の判断には使えないのだ。またミレーアはリナを見捨てず背負っていたことからジーロが生きていることが分かれば無理にでも救助に行きかねないとアギトは判断し生存していることを敢えて黙っていた。


「そっか良かった。とりえず傷を……」


 ジーロが生きていたことに安堵したミレーアは傷を治そう近寄るがそれにアギトが待ったを掛けた。


「彼女の施術が終わるまで回復魔法での治療は待った方がいい。……この距離だとそれはあの怪物に察知される」


「え!?」


 アギトの断言に驚き彼の方に見るミレーア。アギトの言う通りなら今、回復魔法を使うのはリスクが大きすぎる。ならばと思い彼女はマジックバックから自家製回復ポーションを取り出しアギトの方を見た。


「これならどうですか?」


「それなら問題は無いな。残滓は少し感じ取れるがその程度なら距離が離れている今ならあれに察知されることは無いだろう」


 安全面でも問題ないと分かりミレーアはジーロに自家製回復ポーションを手渡した。彼がそれを飲むと身体中の傷が瞬く間に消えていった。


「助かったよミレーア。それで……ああ、自己紹介がまだでした。ジーロです」


「アギトだ。それで話の続きだがこの世界に此処と同レベルのも技術はない。ならばここの秘密がバレれば起こることは容易に想像出来るだろう?」


「奪い合いでしょうね」


 ここに来るまで見た武器庫にあったのはどれも最高ランクの武器に匹敵するものだった。そして此処にある用途の分からない機器の数々が外部に漏れればどれだけの血が流れるのか想像に難くない。ミレーアは政治のことは一切に分からないが貴族で教育を受けてきたジーロにはその光景が容易に想像出来た。それを説明すればミレーアもその危険性を直ぐに理解した。故にその危険性を認識しながらもリナにこれを使うことにしたアギトの考えが分からないミレーア。アギト自身も支離滅裂な言動を行っている自覚があるのかその声音は何処か自分に言い聞かせているようにも思えた。


「なら如何して助けたんですか?」


「そうだな見れば早い」


 そう言ってアギトは面鎧を開きミレーアとジーロに素顔を見せた。彼の素顔を見たミレーアは驚愕し距離を取り、ジーロも何時でも反撃出来るよう槍を構えた。もしも他の者がアギトの素顔を見ても十人中十人が二人と同じ対応するだろう。そんな二人の反応に気を悪くするどころかその反応が正しいといった風な声音でアギトは話を続けた。


「ま、こういうことだ。仲間に裏切られたこんな様になった俺を助けてくれたのがお前の師匠だ」


「……師匠節操なさすぎでは?」


 心当りがあるのかミレーアは何処か呆れたように呟いた。


「そうかもなぁ……何せ俺をこうするのに必要な処置をするために自分の知り合いだっていって化け物みたいなご同輩を紹介してきたくらいだ」


「ひぇ……化け物ってどのくらいですか?」


 アギトの話に蒼白となり震えそうになったミレーアは恐る恐る質問した。口には出していないがジーロも内心戦々恐々である。


「少なくとも小国の一つや二つは簡単に落ちるな。それと俺が来ている鎧はミレーアのガントレットと同じ製作者が作った特注品でな俺達共通の弱点を遮断する作りになっている」


「あ、だから……」


 最初アギトが声を掛けてくるまでミレーアは彼の存在に一切気づくことが出来なかった。あの時自分の探知を潜り抜けてどうやってあの距離まで接近してきたのか分からなかったが今の彼の話を聞きその理由が分かった。彼の鎧は光魔法を遮断する性質があり、回復魔法を応用したミレーアの探知は前にジェライクから聞いた話通りなら光系統の魔法になるだろう。故にミレーアの探知はアギトの鎧によって無効化されてしまうのだ。


「まぁ、俺自身がこんなんだからだろうな。足を失った彼女を見捨ててここを破壊することが出来なかったのは」


 自分にチャンスが与えられたのだからリナにもチャンスが与えられるべきだと考え、アギトはこの後に起こるだろう問題その全てを棚上げした。実際此処から生きて出れば義足の件で危険な目に合う可能性は十二分ある。だがやり用によってはそれらをうまく退け生きていくことも可能な筈だ。もし此処で義足を作らず膝から下を失ったままならばリナはこの先、生きて行くことすら難しいだろう。それが自分の見ていない場所ならば知らなかったでアギトは済ませられたが、目の前に居ては見て見ぬ振りは彼には出来なった。 


「……質問ですが、そもそもここは何時作られたものですか? 私が知っている限りここまで発達した文明は有史以来確認されいない」


「とある世界で大戦から逃げて来た方舟の一つだ、ここは」

アギトの鎧の下が分かるのはもう少し後

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