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第二十六話 絶体絶命

「広い」


「さっき通っていたあれはここにいたのかな?」


 通路を通り抜け一際広いホールと思われる場所に出たミレーア達は周囲を確認する。そこは天井を支える柱以外何もないガランとした空間だった。ミレーアの言う通り先程彼女達とすれ違いになった多脚のゴーレム?が待機していた場所としても天井がやけに高いことが気になる以外は申し分ない広さだ。


『シン……シャヲカ……ニン……』


 途切れ途切れに聞こえる無機質な声を聞いた四人は身構える。


『タイ……キョ……ド……タ……タンヲ……ドウ』


 途切れ途切れの声のため何を言っているのか聞き取れないが何か不味いことが起ころうとしていることは四人も何となくだが感じとっていた。そしてその予感は的中し四人のいる位置から少し離れたところで壁の一部が上へとスライドしそこから何かが巨大なものがゴゴゴっと音を響かせながら出て来た。


「え……何あれ?」


 そのあまりの異様な姿にミレーアは思わず声を漏らした。先程の自分達と入れ違いとなったゴーレム?と同じ磨かれた金属のような表面から今目の前にいるそれがあれらと同類のものだと思わせた。しかし、その大きさは地上で自分達の目の前で争っていた大型魔獣に匹敵する程の巨体だ。それの脚部は左右に足ではなく左右にある複数の車輪に金属で出来たベルトようなものを巻いたもので構成されていた。そして、その上には人の上半身に似た形のものが載っている。腕部は前腕部にあたる部分に2列に並んだ中が空洞な円筒状のようなものが取り付けられていた。ジーロはそれを見て嫌な予感がした。頭部と思われる場所には赤い光が灯っており、それがミレーア達の方に向けられていることで彼女達はまるで蛇に睨まれた蛙のように固まった。ミレーア達が固唾を飲んで警戒するなかその巨大なゴーレム?は円筒状のようなもの先をミレーア達の向ける。形状とその動作でジーロはそれが何をしようとしているのか寸前のところで感づいた。


「不味い!! 横に逃げるんだ、あれは砲だ!!」


「は? なんだそれ……」


 ジーロが叫ぶような警告を口から出しながら砲の射線から逃れるため横に跳び、ジーロの言葉を正しく理解したミレーアも射線から逃れるべく横に跳んだ。ジーロの警告内容の砲の意味が分からず行動が遅れたエリオとリナに向けて巨大ゴーレム?の砲から魔力で出来た弾が一斉発射された。連射された魔力弾はエリオの体を数秒しないうちに挽肉と変え、その後ろにいたリナの両足の膝から下が千切れ粉砕された。


「あ、ひぃ!? あああぁあああぁ!!」


 膝から下を失い地面に倒れたリナ。遅れて感じる激痛に叫び声を上げた。一瞬にして人一人を肉塊に変えた巨大ゴーレム?は動けないリナに照準を合わせエリオと同じようにリナを挽肉に変えようとするが砲から弾から放たれる直後、ミレーアがリナを抱き上げ逃した。抱き抱え走りつつ回復魔法を使ってミレーアはリナの出血を止めた。捥げた腕を繋げ治したことがあるミレーアだが原形ををとどめない程の挽肉となった部位を元に戻した経験など流石に無い。逃げ回りながらの治療は難しいため止血だけに留めミレーアは逃げることを優先した。そして砲の狙いを外された巨大ゴーレム?は今度はミレーアに狙いを変更するがその直後、巨大ゴーレム?の頭部にある目だと思われる赤い光に向かってダガーが飛来した。飛来したダガーはそれの赤く光る目の付近に硬い音を立てて弾かれた。


「くそ、外したか」


 投げられたダガーはエリオが持っていたものであり、それを拾い投げたのはジーロだ。狙いから僅かに外れ赤く光る目だと思われる部位に当たらなかったことに口汚く悪態を吐くが目だと思われる場所を狙われたことで巨大ゴーレム?は狙いをジーロに変更した。その隙に柱の後ろへと隠れたミレーアはリナの足に回復魔法を掛けるが傷が塞がっただけで流石に失った足が生えるてくることはなかった。


「ごめん!!……私じゃこれ以上は治せない」


「……そっか。アハハ、私はこれで本当に終わりだね」


 足を元に戻せないミレーアを罵倒することなくリナは力無い声音で現実を受け入れ諦めの言葉を口にした。彼女も流石にこの傷の治療は無理だと感じていたのだろう。そして両足を失った自分にこれから先出来ることなど何もない。いっそあの時死んでいればとリナは思ってしまった。


「此処にいてジーロの援護にいく」


 そう言って柱の影から飛び出したミレーアが見たのは壁まで追い込まれジーロが車輪が唸りを上げその巨体からは考えられない速度で動いた巨大ゴーレム?の突進から逃げきれずその陰に消える光景だった。


「っ!!」


 奥歯を砕かんばかりの強さで歯を噛み締めるミレーア。巨大ゴーレム?の上半身だけが百八十度回り次の標的としてミレーアを狙い砲を向けた直後、凄まじい轟音が鳴り響いた。音のした方向に視線を向けるそこにはミレーア達がここに落ちる切っ掛けを作った片割れである直立姿勢の大型魔獣がいた。大型魔獣は目の無い頭部をミレーアの方へと向けた。その動作からミレーアは大型魔獣に狙われているのは自分であり、あいつは態々追ってきたのだと感ずいた。


『ユ……セ……ハイ……シ……ウ』


 再び聞こえた抑揚の無い無機質な声。その声によってミレーアに砲を向けていた巨大ゴーレム?は大型魔獣に狙いを変えた。連続発射される魔力弾の全てが大型魔獣に叩き込まれるがその全てが硬い表皮に弾かれ大型魔獣は攻撃されたことに激昂したのか自身を攻撃した巨大ゴーレム?に向かって突撃する。よく見ると大型魔獣は地上で見た時に比べ全体的に黒くなっておりまるで争っていたブラックサウルスと似た体表となっていた。


「よく分からないけど逃げるチャンス!!」


 ミレーアは巨大ゴーレム?と大型魔獣が戦い始め自分達から注意が外れたこの好機を逃がすまいとリナを背負いこの場から急いで離れることにした。どの方向に逃げようか辺りを見渡していると不意に後ろから声が聞こえた。


「こっちだ。ついてこい」


「!!?」


 突然聞こえた男声に驚き後ろを振り向くとそこには全身を鎧で固めた人型の何かがいた。突如現れた男性に当然警戒するミレーア。そんなミレーアの態度に男性は気に障る様子すら見せず寧ろ警戒しているミレーアの対応は当然といった態度で話を続けた。


「突然出てきて警戒するなっというのが無理なのは分かる。だが話しは後だ。今は後ろの子を連れてここから逃げることが重要じゃないのか?」


 その言葉にハっとなったミレーアは目の前の男性が何者なのか詮索することをとりあえず棚上げし、リナを背負うと先導する男性の後ろに続く。男性はミレーア達が通ってきた通路とは違う通路に案内し争いの音が聞こえなくなったところまで離れると男性は足を止めて振り返った。


「助かりました。あのままじゃ何処に逃げれば良いか分かりませんでしたから」


「例には及ばんさ、君たち二人を助けたのは俺にも利があったからだ。それにしても驚いたな一応走る速度は落としたが人一人を背負って息を乱していないとはな」


 彼としては自分が負傷しているリナを背負っても良かったのだが、ミレーア達にとって正体不明の自分よりも仲間に背負ってもらった方が安心出来るだろうと思い敢えて手は出さなかった。走る速度を落としていたとはいえ人一人を背負い息を乱すことなく自分に付いてきたミレーアに感心し改めて見た。


「……ん? 君、名前は?」


 ミレーアに視線を向けた男性は彼女が腕に付けているガントレットを見ると名を尋ねた。


「ミレーアです」


「ミレーアのしているガントレットだが、それは何処で手に入れた?」


「師匠から貰いものです」


 何でそんなことを聞くのかと思いながら答えると今度は師匠の特徴を聞かれたため訳も分からないまま正直に答えた。全身鎧の男性はミレーアの答えた話から考察し点と線を繋ぎ合わせていた。


(既にこの世界に来て手を打っていたのか? 力と武器を与えてあとは当事者達に任せて放置するのは如何にも彼女らしいといったところだが)


 隈なく確認すれば彼女の手によるものと思われる本人曰く「汚染」の残滓がミレーアの体から薄っすら感じ取れた。この汚染が馴染み今後どう影響するのかはミレーア次第であり、こればかりは汚染した本人ですら未知数である。ただ一つ言えるのはミレーアは彼女のお眼鏡にかなう人材だったということだけである。


「どうしたんですか?」


「ん、ああ。ミレーアのガントレットを見てもしやと思って話を聞いて確信した。君の師匠は俺の知り合いで間違いないだろう」


 話を聞き黙ってしまった男性にミレーアが声を掛けると彼はそう返答した。その返答にミレーアは驚きの表情となり師匠が今何処にいるのか尋ねたが彼はもう訳無さそうな声音で答えた。


「すまない。俺も今彼女が何処で何をやっているのか知らないんだ」


 そう聞いたらミレーアは見るからに落胆したような表情をした。随分好かれているんだなと彼は思った。それはそれだけミレーアが大切に育てられたという証であった。ある程度の事情を知るとはいえ彼女がミレーアを「汚染」した理由を彼が語ろうとは思わない。それは彼女の開花を歪めてしまう可能性があるからだ。


「そういえば名乗っていなかったな……俺はアギトだ。話すことはまだあるがとりあえず背中に背負っている子をどうにかするのが先決だ」


「足手纏いですいません」


 自身が現状お荷物にしかなっていないことにリナは震えた声で謝罪する。落ち着ける場所に逃げ込んだことで戦いの緊張感から解放され、今になって膝から下を失った喪失感に襲われたリナは泣きたいところを必死に我慢し気丈に振る舞おうとしているが声音が隠し切れておらずその瞳からも涙が零れていた。


「仕方が無い。とりあえず君の足が何とかなる可能性に心が辺りがあるからそこにいこう」


 そうアギトが言うと二人はえ?っと言わんばかりに彼に視線を向けたのだった。

明けましておめでとうございます。

今年も細々やっていこうと思います。

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