第二十五話 奥へ
ガシャガシャという硬い音を鳴らし金属で出来た球体から四本の甲殻類に似た金属の脚をつけた何かが群れをなして規則的に一糸乱れることなく歩いている。それらはミレーア達が通ってきた道を歩いていく。その様子からミレーア達が遺跡内部へと落下することなった天井に空いた穴がある場所へと向かっている思われた。
「……いったみたいだ」
武器を調達していた武器庫の中から息を潜め様子を伺っていた一同は正体不明の何かの群れが通り過ぎたことを確かめると隠れていた武器庫から気づかれないよう大きな音を立てずに出て来た。
「……一体今のは何なんだ?」
「体が金属で出来てたからゴーレムの一種じゃないかな?」
「しかし、あんなのは聞いたことがないな」
ゴーレムは魔力核と呼ばれるものが土や金属などを纏い生まれる。研究の結果この魔力核が本体であり、これが体が魔力で出来た魔物だということまで分かっている。魔力核の発生自体は未だ謎に包まれているが基本的に魔力核が発生した土地特有のゴーレムが生まれる。一般的な岩で出来たロックゴーレム系統。森林等では木で出来たウッドゴーレム系統。鉱山等では金属出来たメタルゴーレム系統。特殊な環境ではマグマで出来たマグマゴーレムや雪で出来たスノーゴーレムなどもある。形状はゴーレムによって人型や動物型など異なるもの共通するのは体となる材料を寄せ集め纏い固めているだけで表面はそこまで整っていないのだ。しかし、今し方通ったゴーレム?と思わしき群れは表面が磨かれた金属のように滑らかであり、関節部などが人形などに見られる球体間接に近く一般的なゴーレムの構造からはかけ離れていた。
「とりあえずあれが来た方に行ってみるか?」
ゴーレム?の来た方を見ながらエリオが尋ねるとジーロは悩んだ。方向としては自分達がこれから行こうとしていた先である。しかし、今のような正体不明な存在がやってきた方向となればこの先に更なる危険が待ち構えている可能性は非常に高い。しかし、来た道を戻れば今し方ここを通ったゴーレム?と接触することになるうえに天井が崩れたことでそちら側は通路は行き止まりとなってしまっている。
「先に進む? このままここで立ち往生しても解決しないから」
ミレーアは既に覚悟が決まったのか先程武器庫でマジックバックから取り出し見せた師匠から貰ったガントレットを身に付け何時でも戦える準備をしていた。
「……他の皆の意見は?」
「良いんじゃねぇか? どうせこのままここで立ち止まったままじゃ死ぬのを待つだけだし」
「前に進まないと生を掴めないなら前に出るしかないんじゃないかな?」
エリオとリナも既に覚悟は決まっていた。ある意味生まれの差が如実に表れたと言える。エリオやリナは辺境の村出身であり命の危険とは物心ついた時から隣りあわせだ。エリオは不作で生きるために危険を承知で周囲の森に出て食料になるものを採りに行くのはままあることだ。狩人の家に生まれたリナは言わずもがな。一方で冒険者になる前までは家で剣術や槍術などの戦う術を教育されていたものの、末弟とはいえ何不自由なく生きることが出来た貴族であるジーロ。危険と分かっていても前に出なければならない状況に対してエリオやリナに比べ及び腰になるのは仕方が無いのかもしれない。だが二人の意見を聞いたジーロは一度だけ深呼吸し自身を落ち着かせるとぽつりと自身に言い聞かせるよに呟いた。
「……冒険者になって家に頼らず生活して苦労してると思ったが何のことは無い。まだまだ冒険者としての気概が足りないじゃないか」
ジーロも覚悟が決りこのまま当初の予定通り奥へと進むことにしたのだった。
「一体何処に出たんだ?」
用途の分からない機材が置かれた場所で全身を銀色に輝く鎧で固めた人物が呟いた。顔も赤く光る眼以外は鎧で包まれており、身体的な特徴と声からして男性であるということが分かるくらいだ。その呟きの内容からどうやらこの遺跡の関係者という訳ではないらしい。
「見覚えのある機材も多いな。確かここを押せば」
男は自身が若干無いのか少し迷いながら何らかのボタンらしきものを押すと空間に光で出来た板のようなものが投影されそこに幾つかの文字のようなものが映し出された。男は映し出された文字をマジマジと見ると安堵したかのように息を吐くような動作だけを行うと苦笑するようにぼそりと呟いた。
「いかんな……生きていた頃の癖というものは中々治らないな。それにしても読める文字で助かった」
安堵するような言葉を漏らすと男は映し出された文字に触れ指を動かし操作すると画面が切り替わる。更に操作を続け彼は必要な情報収集を続けた。
「あの世界で起こったという大戦時に脱出した箱舟の一つか」
しばらく情報取集を行った結果、ここが何なのか彼は調べて判明した内容と自身の知識を照らし合わせそう結論を出した。驚きがないことから彼にとってこれは予想の範疇であったようだ。彼は操作を続けこの箱舟によって運ばれたものを確認し使えそうなものを探し始めた。
「護身用の個人武装が主か……あの世界で作られたものなら性能は期待出来るな。その他にあるのは対大型種の兵装もあるが、流石にこれは個人で使えるものでは無いだろうな。……こんなのもあるのか」
最後の情報を見た彼の声が少し固くなった。どうやら彼にとってそれはあまり望ましいものでは無かったらしい。
「後で確かめ稼働するようなら破壊しておくか、残しておいて良いものじゃないからな」
それの潜在的な危険性を知る彼はそう判断すると他にこの世界に残して危険なものがないか確かめているとほぼ直近の防衛システム関連のログを見つけ中身を確認した。
「ん……防衛システムの起動? 俺がここに出たことによる警戒……他に侵入者が四人。現地の住人か。……これは」
最後に映し出された情報、この箱舟の外で戦っている二体の大型魔獣の情報を見て彼は言葉を止めるとその内容を食い入るように何度も確認すると彼は大きく溜息を吐く仕草を行った。彼は二体の大型魔獣のうち一体の類型のことを知っていた。実際に戦ったこともあり、あれがどういった存在なのか恩人でもある彼女からもある程度聞いてもいる。
「この世界にもあの世界からあれが転移してきていたのか。……既に第二フェイズには以降済み個体か。大きさからして中型種。まだ俺一人でも何とかなる相手ではあるな。限りなく可能性は低いが話で聞いた第三フェイズに移行でもされたら目も当てられない」
顔も含め鎧を覆われているため表情は見えないが声音から相当不味い状況なのだということだけは窺えた。調べたいことはこれで終わったのか光で出来た板から視線を外した彼は次にやるべきことを考える。
「とりあえずこの世界の事情を知るためにもこの四人に接触するのが先決か」
そうこれから行動方針を決めた彼はその場から移動するのだった。
それは戦いに勝利したことで餌にありついた。倒したブラックサウルスの肉や骨を余さず喰らい即座に養分に変え自身の血肉としていく。
食べた相手の遺伝情報を精査し自身の体に反映させるのはそれにとってはこの世界で身に付けた新たな成長方法だった。
それにとってこの世界は本能的に窮屈に感じる場所だった。
思考は本能で生きる野生動物と変わらないそれにとって何処が如何してと論理的に思考することは出来ないが生きるのに窮屈であるという生体の感覚があるのは間違いない。
自身とほぼ同じ大きさだったブラックサウルスを戦いの果てに仕留め骨も残さず食い尽くして尚がまだ足りないとそれは感じていた。
実のところそれにとってブラックサウルスと戦ったのは襲い掛かってきた火の粉を払っただけの認識だ。
それが本当の意味で狙いを定めていた相手はブラックサウルスと戦っている最中に地面に空いた穴へと落下していった。
ブラックサウルスを食べ終えたそれは地面に空いた穴の中へと飛び込み自身に最も必要なものと同質の気配の残滓を強く感じとれる場所に近づくがそこには既に何もなかった。
そこは地面に穴が空いた時にミレーア達が落下し彼女が回復魔法で仲間を治療していた場所である。
自身がブラックサウルスを戦っている間に何処かへと移動したため、近辺には既にいなくなっていることに落胆したもののそこにあった他の残滓から移動先は凡そ分かるためにそれを頼りに追跡しようとしてそれは針に刺されたような体に痛みを感じた。
それが顔を向ければ足元をうろつく有象無象が粗末な武器で攻撃を加えていた。それは咆哮し自身に痛みを与えた報復としてそれらを蹴散らしたのだった。
今回は少し短め
追加で出来た人物は二十三話に一応は機械音声の中に報告としてあがっています




