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第十九話 事情説明

「テイムした―――ですか?」


 ギルドの受付嬢がミレーアの話を聞き困惑した。ミレーアもそれもそうだろうなと思うしかなかった。何故なら自分でもどうしてテイム出来たか分からないからだ。ギルドの受付嬢はミレーアに抱かれたフューアに目を向けた。フューアにとって周りのものが初めて目にするものばかりのためか、顔を左右に動かし辺りを見ている。その額にはテイムの証と思われる紋様があった。


「……テイムの方法は知らないんですよね?」


「はい」


 隠す必要は無いため正直に答えるミレーア。ギルドの受付嬢が困ったように眉根を寄せる。テイムされていない魔獣を街に入れたわけではなく、しっかりとテイムされた魔獣を街に入れるのは問題は無い。テイムされた魔獣は術式縛られていることもあって主人の命令に忠実であり、危害を加えられない限り無闇に人を襲うなと言いつければそれを守り通すからだ。ただ魔獣を従えさせるというのは一歩間違えれば相応の危険性も隣り合わせだ。テイムする専用魔法の習得だけではなく本来はギルドからの許可書の発行が必要となる。そのため、理由は不明だがフューアを先にテイムしてしまったミレーアの扱いにギルドの受付嬢はどうすれば良いのか判断出来なかったのだ。


「奥の応接室にお通ししますので少々お待ちください。担当者を呼んでまいりますので」


 悩んだ末、担当者に任せることにしたギルドの受付嬢。案内された応接室の椅子に腰かけたミレーアは抱いているフューアの頭を撫でながら少し心配になってきていた。ギルドの受付嬢が困惑していたことでフューアをテイムしたことが不味いことだったとミレーアが察するのに十分な情報だったからだ。処分するように言われたらどうしようと思い、フューアを心配そうに見ながらミレーアは刑を言い渡される犯罪者のような面持ちでその時を待った。気持ちのためかそれ程時間が経過していないにも関わず既に一日待っているかのような気分に彼女はなっていた。そうして少しの間待っていると部屋の外から慌ただしい足音共に誰かが扉を開けて入ってきた。


「遅くなってすまないな。……それで腕に抱いているのがテイムした魔獣かな?」


「はい……そのこの子なんですが」


 少し険しい顔をしたギルド担当者に気押されながらミレーアは恐る恐るフューアを見せた。フューアの方も少し怯えているのか身体が震えているのがミレーアの腕に伝わってきた。そんな一人と一匹の様子にしまったとばかりに男性は気まずそうな表情となった。


「……ああ、すまない。怖がらせてしまったようだね。前例の無い事態に少し気が焦っていたようだ」


 眉間を軽く揉み気持ちを落ち着けた担当者は先程よりも落ち着いた声音でそう謝罪の言葉を述べた。


「私はエーベル。ギルドのテイマー関連業務を取り仕切っています。……それですみませんがどういう状況でテイムしてしまったのか説明してくれますか?」


 エーベルも落ち着いたのか口調が対外的な丁寧なものへと変わった。

 森の中で卵を見つけた事、それが直後に孵化した直後にグレーウルフの襲撃あったため見捨てられず助けたことで恐らくは自身が親として認識されてしまったことまでを話した。


「それで見捨てられなくてどうしようか考えていたら突然この紋様が私と手の甲とこの子の額に現れました」


「見たことがない紋様ですね。……魔力的な繋がりは感じますか?」


「それは感じます」


「そこは従来のテイムと変わりはないか。……それと今なあなたが抱き抱えている魔獣ですが今まで見たことが無い種でもあります」


 ミレーアも一番気になっているのはそこだ。フューアは自分の知っている魔獣と類似する特徴が思い当たらずギルドで魔獣に詳しいだろうエーベルも知らないとなればいよいよもって正体が分からなくなってきた。


「初心者講習では省いてましたが本来はテイムする場合、専用の魔法習得だけではなくギルドからの許可書の発行も必要になります」


「え……そうだったんですか!?」


 初めて知ったミレーアは驚きの声を上げた。


「魔獣を従えるというのは様々な危険もあります。危険性のある人物に許可を出して街中で暴れられた目も当てられませんから」


 理由を聞けば納得しかなく、ますます心配になってきたミレーアのフューアを抱く力が少し強くなる。


「ミレーアさんは冒険者になったばかりですが、先の地下水道の件で協力的だったと報告にもありましたから許可書の発行は問題ないでしょう。しかし、現状は子どものためか今は無害ですが、未知の魔獣であるため成長すればテイムされているとはいえどうなるか分かりません。そのため、ミレーアさんには辛いかもしれませんがここで殺処分するのが最も安全と言えるでしょう」


 話の雲行きが怪しくなってきたことに心なしかフューアの抱き締める力がさらに強くなる。不安そうな視線を送っていると険しい顔をしていたエーベルの顔が優しそうな和らいだ。


「しかしそれはあくまで安全第一にした考え……ミレーアさん。我々は何でしょうか?」


「―――冒険者と冒険者ギルド?」


 少し思考しそう答えるとエーベルは満足するように頷いた。


「そうです。危険を冒し、冒険をする者です。ならミレーアさんが正体が分からないその子を育てるのも一つの冒険と言えるでしょう」


 そうエーベルは断言した。


「これからもこの子と一緒にいても問題ないということでしょうか?」


「実際のところテイムされている魔獣を危険だからと即座に殺すことはありませんよ。しかし、ミレーアさんの場合は少し事情が特殊なこともありますので調査に協力して貰うことが条件となります」


「わかりました」


 ギルド側もただでという訳ではなく条件を出す。ミレーアもそれで良いならと条件を飲んだ。彼女の返答を聞くとエーベルは懐からメモ用紙を取り出しさらさらとそれに何かを書き記すとそのページを千切り机の上に置いた。


「明日、ここを訪ねてみてください。……少々変人ではありますが、魔法関係の知識はこの街一番とも言える人物です。彼ならばもしかしたら紋様について何か知っているかもしれません」


 机に置かれた紙を手に取りミレーアは内容を確認した。書き記されているのは魔法に詳しい人物の住んでいる住所だ。


「事前に先触れとしてこちらの方からミレーアさんが来ることは伝えておきますので安心して向かってください。あちらも珍しい術式などが見れるため喜んで協力してくれ筈です」





「はぁ……いろいろあったけどなんとか無事に終えれたよ」


 ギルドでの話も終わり自室に戻ってきたミレーアは荷物を下ろすと疲れたようにベッドに腰かけた。


「みゅぅ?」


 膝の上に乗せられたフューアが意味が分からず首を傾げた。渦中の中心にいるのは間違いなくフューアだが当人ならぬ当獣は理解していないようだ。生まれてきたばかりの子どもに理解しろというのは無理話であり、そもそも成長したとしても何処まで理解するのかも謎である。


「あ~でも、安心したらお腹が空いてきちゃった」


 何事も無く終わり緊張感から解放され麻痺していた欲求が復活してきたことを感じ取ったミレーアは膝の上に乗せていたフューアをベッド上に乗せると立ち上がった。腹を軽く擦りながらミレーアは保管してある食材の確認をするとあるのは干し肉と野菜、そして乾パンだった。


「……適当にスープでも作ろう」


 ミレーアは調理用マジックアイテムの上に水を入れた鍋を置き、食材を食べやすいサイズに切っていく。水は直ぐに沸騰し、手早く食材を入れて調理していたところでふと気がついた。


「フューアって何を食べるのかな?」


 失念していたことに今更気づいたミレーアは頭を悩ませた。フューアの種族が何なのか不明な為、何を食べるのかがまったく分からない。


「とりあえず……」


 皿の上に干し肉と野菜を乗せて出すがフューアはそれを食べ物と認識していないのかミレーアの手にじゃれつくだけだ。まだお腹が空いてないだけの可能性もあるが困ったなぁっとミレーアは頭を悩ませた。


「ねぇ、何を食べるの?」


「みゅあぁ!!」


 ミレーアの問いに元気よく一鳴きするだけのフューア。仕方が無いとはいえ言葉を理解しているようには思えなっかった。ミレーアはそこで一旦諦めることにし自分のお腹を満たすことにした。乾パンをスープに浸し柔らかくし口に運ぶミレーア。食事を始めた直後からフューアはミレーアの邪魔にならないようにするためなのかベッドの上に移動し彼女をじっと見ている。


「食べたいの?」


 気になりミレーアが尋ねるとフューアは「みゅああ」と一鳴きし首を左右に振った。


「そっか」


 残念そうにミレーアは食事を続けようとしてあれ?っと思いもう一度フューアの方を見た。


「私の言ってること理解してる?」


「みゅ」


 フューアは短い声と共に頷いた。


「こっちの言葉は理解してるのか……でも、こっちはフューアが何を言ってるのかまったく分からないよ」


 分かれば何を食べるのか直ぐに分かるのにとミレーアは気を落とす。そんな彼女を元気づけようとしているのかフューアはベッドから降りるとミレーアの足に甘えるように擦り寄ってきた。


「……励ましてくれるの? ありがとう」


 こっちの言っていることを理解しているのなら自分が落ち込めばフューアも心配することになると気を取り直したミレーアは食事を再開した。





 食事を終え体の汚れを落とし明日もやることが多いため直ぐに寝支度を行いミレーアは眠りについた。フューア用の寝床はまだ無いため、余っていた掛布団で代用した。その中で眠っていたフューアは寝静まった深夜に目覚めると寝床から這い出しトコトコと眠っているミレーアの元に向かった。ベッドに跳び乗ると布団の中に潜り込みミレーアにピタリと引っ付いた。するとフューアの体が淡く発光し始めたのだった。

何かを吸収しています

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