第一話 街で冒険者登録
現在、製作中の長編ものの没案で作った作品。
プロットとか碌に無い作品です
拙い文ですがよければお付き合いください。
「ん~さてと、今日も一日頑張ろう!!」
早朝生い茂る森の中、一人の少女が寝起きの伸びをするとそう高らかに呟いた。
彼女は一人で旅をしていた。全体的に軽装で動き易さを重視した服装で腕や足回りに軽い防具がある程度だ。
その他の荷物は背中に背負ったバックに纏めているのか見当たらない。バックの大きさからそこに入る量を考えればどう考えても旅をするには準備不足としか思えない。
そもそもこんなところで一人で野宿するのは魔獣もしくは野党などに襲ってくれと言っているのに等しい状況だ。何事も無く朝まで迎えられたことは何か備えが無ければ幸運以外の何物でもない。無論そんな幸運を合わせている訳ではなく、少女は足元に置かれているマジックアイテムらしきものを回収したことからこれが襲われなかった理由だと思われる。
マジックアイテムらしきものをバックに仕舞うと代わりに干し肉らしきものを取り出しを齧りながら歩き出す少女。
少し歩くと森が途切れ道が見えた。
「それにしても師匠も酷いなぁ……地図と書置き残して消えるなんて」
道の上を歩きながらぶつぶつとああでもないこうでもない大体師匠は等不満をぶちまける少女。すると道沿いに二又に分かれた道とその間に立つ気を見ると何か目印になるものなのかバックの中から地図を取り出し見比べる少女。
「うん、この分だともう直ぐで街に辿りつくね」
そうと分かれば善は急げと言わんばかりに駆け出した少女だった。
「おお~」
街に辿り着いた少女は田舎から初めて都会きた年頃の少女のような反応をした。目に映るもの全て新鮮なのか首を左右に何度も振り辺りを見渡している。
周囲の者達はそんな彼女に姿を一瞥はするもののそれだけであり、奇異な視線を向けることは無い。見慣れているっていった感じである。
「おっと、ここで道草を食ってる場合じゃなかった。えっと冒険者ギルドの場所は?」
街に入り看板を見つけるとそれを読みギルドの場所を確認する少女。その姿に幾人かは目の色を変えた。一般的に田舎から冒険者を目指して街に出てきて者は多くは田舎故に碌な教育が受けられないため文字の読み書きすら出来ない者ばかりだ。
故にそれが出来るだけである程度の教養があると見なされる。
少女はギルドの場所を確認すると迷わず歩み出した。
そして、少し歩くと一際立派な建物が見えそこに冒険者ギルドであることを示す看板があったことで少女は漸く目的の場所に辿り着いたこととなった。
キィっと木製のドアを開け建物に中に入った少女は正面の受け付きに並んだ。
並んでいる間に少女は周囲を観察する。ギルド内には多くの冒険者がおり、それぞれが何かを話し合ったり罵声に近い言葉で言い合いをしていたり千差万別だ。
それらを騒がしいけど楽しいそうだなと考えていると自分の順番が回ってきたことに呼ばれて気づいた少女は受付の女性と向き合った。
「冒険者の登録をしたいんです。あ、文字は書けます」
少女のそう言うと受付の女性は少し驚いた表情をすると直ぐに営業スマイルへと戻り登録用の用紙とペンを少女に渡した。
「では、こちらに必要事項の記入後、あちらの提出専用窓口にお渡しください。分からないことがあればそちらも提出専用窓口でお聞きください」
「わかりました」
少女は自分の名前を書き必要事項を書いていくと最後に書くのに困るものがあった。
「‥‥‥え~と、クラス記入欄?」
はて自分は何だろうかと首を傾げる少女。師匠に鍛えられ魔獣とは戦えるが分からない。受付の人も分からないことがあれば提出専用窓口で聞くように言っていたので少女は立ち上がり提出専用窓口へと向かった。
「すいません。何を記入したら良いか分からないところがあるんですが」
「クラス記入欄ですね。え~と、ミレーアさんは何が出来ますか?」
登録用用紙を受け取った提出専用窓口担当の女性は記入事項な書かれた名前を確認後、少女―――ミレーアに尋ねた。
「戦いは基本的に殴ったり蹴ったりしています。旅の途中でもそれで魔獣をやっつけました」
「武闘家ですね」
提出専用窓口担当の女性職員はクラス記入欄に武闘家と記入しているとミレーアはものの序のように思い出したことを口にした。
「あとは怪我とか魔法で治せます」
「え……?」
回復魔法の使い手は希少だ。子どもは生まれ5歳になると教会の検査を受け回復魔法の適性があると分かれば後日、教会が引き取りに来る。
一応任意ではあるが、回復魔法の使い手が生まれた村にはそれ相応の対価も支払われるうえ、何もない村で暮らすよりもちゃんとしたところで学べる方が将来が安泰のため基本的に子は引き渡される。
尤も断ったら村八分は確実のため選択肢が無いとも言える。
そういった恐れはない貴族でも基本的に子にに回復魔法の適性があれば教会に入れさせ学ばせている。教会とのパイプにもなるし回復魔法の使い手が身内にいるとなればそれだけで箔が付くからだ。
特に回復魔法が使えるうえに才能のある女性は聖女とされ教会では奉られる。
ただミレーアのように極稀ではあるが様々な事情が絡んだことで教会に認知されていない回復魔法の使い手がいることはあるが専門の教育を受けていないため、そういった者達は教会に所属している回復魔法の使い手に比べて技術は低いがその希少性から冒険者の間では取り合いになる程だ。
冒険者ギルドでは一応、そういった回復魔法の使い手が登録しにきた場合教会へ行くことを薦めはするが決定権は本人次第だ。
教会側もよっぽど優秀な才能がない限りはある程度の年齢に達した回復魔法の使い手を積極的に勧誘することは無い。俗世に染まり過ぎているため教会としても規律面の問題で忌避しているのだ。
無論、自分から入る場合はその辺りの規律から学ぶことになる。
「回復魔法の使い手なら冒険者ではなく教会に行く道もありますが」
「ん~私は冒険者が良いです」
ミレーアはそう答えた。ならばこれ以上は踏み込むべきではないと女性職員は書類を受理すると冒険者であることを示すタグを取り出しミレーアに渡した。
「これで登録は完了です。このタグはあなたが稼いだ報酬金の振込先となるギルドが経営する銀行から引き落とす際に必要となりますのに無くさない様に気を付けてください。紛失された場合、再発行はされますが手続きで手数料と再発行までに数日かかりますのでご注意ください。依頼はあちらの窓口で受けてください」
「分かりました。ありがとうございます」
礼を述べ依頼の受付窓口の列に並ぶミレーア。時間が良かったのか対して時間も係らず彼女の順番が回ってきた。
「新人の方ですね。それですと受けられる依頼はこちらになります」
紹介された依頼は魔蟲の駆除や薬草採取、ゴブリンの巣の排除など弱い魔物や採取を目的とした依頼ばかりだ。
「……それなら薬草の採取で」
周囲の地形の把握も兼ねてこれが良いとミレーアは判断した。
「そういえば依頼以外の薬草なんかは採集しても良いんですか?」
「はい、それは構いません。冒険者の自由となります」
それを聞いたミレーアは今後の予定を立て始めようとしてまず自分のやらなけれならないことを思い出した。
「あ、住む場所」
街に来たばかりのため、拠点のなる場所がない。ミレーアの呟きを聞いていた依頼窓口のギルド職員は冒険者ギルドではそういった冒険者の拠点となる借家も扱っており新人の場合、三カ月程は無料だと
その場でミレーアに窓口のある方向と一緒に語った。
話を聞いたミレーアは早速、手続きをするためにそちらに向かった。
手続きを済ませたはミレーアはその序に今からやらなければならないことを行うため、それに必要な場所を聞いた。
借家の手続きを済ませたミレーアが次に向かったのは鍛冶屋だ。ここでは武器になる魔物の部位や特殊金属の買い取りを行っており冒険者が重宝している場所の一つである。
「ん、見ない顔だな嬢ちゃん、新人かい?」
暇そうに店番をしていた鍛冶師と思われる男がミレーアに気づいた。職業柄いろんな人物に顔を合わすため雰囲気も相まってミレーアが新人の冒険者であることに直ぐに気づいたようだ。
「はい、ついさっき冒険者ギルドで登録してきたところです」
「ふ~ん、ここに来たってことは何か売るものがあるんだろ?」
新人がここに来る理由なんてそれぐらいだ。持ってきたとしてもはした金にしかならないがそれでも資金難にしょっちゅう陥る新人には貴重な収入源である。
街に外から来たならば旅の途中で何かお金になるものを拾ったのだろうと鍛冶師は考えミレーアが取り出したものを見て目を見開いた。
「……嬢ちゃん、これ何処で手に入れたんだ?」
「師匠が街にいけばお金がいるからこれ売ってお金にしろって置いていきました」
書置きされた手紙にはそう書かれていた。何かは知らないが売れるものだろうとかしかミレーアは考えていなかった。
「奥に案内する。おい!! 誰か代わりに店番を頼む」
後ろの作業場に向かって怒鳴るようにそう言うと鍛冶師に案内され奥へと通された。
「本来はあそこで売買を行うんだが……嬢ちゃんが売りに持ってきた物はかなり希少品で相当高く売れる。新人がそんな大金を持ち歩けば金に貧した奴が何やるか分からん。ギルドの銀行に振り込んでおくからタグを見せてくれ」
成程と納得するミレーア。無用なトラブルを避けるためにも鍛冶師の言う通りのした方が良いと考えギルドから渡されたタグを見せた。
ミレーアの師匠が街で換金するために用意したものはどれも高額のものらしく今の自分がこの場で現金として貰うのは危険なものばかりだった。
他には何かないかと探すと旅の途中も襲い掛かて来たため返り討ちにした猪の魔獣牙を見せた。
「ブラック・ボアの牙か……これならこの場で現金でいいな。これは嬢ちゃんが仕留めのか?」
「旅の途中で襲い掛かってきたから返り討ちにしました」
「単独でか? 凄いじゃないか、こりゃあ将来有望な冒険者が来たもんだ」
ミレーアの返答に驚いた反応を見せた鍛冶師。ミレーアとしては師匠に比べれば全然大したことのない相手だったためそれ程強かったと言う印象は無かった。あの突進よりも師匠の拳の一撃の方がよっぽどの脅威である。
一通りの換金も終わり鍛冶師に礼を述べて店を出ると荷物を置くために自身が登録したギルドが運営する宿屋に向かうのだった。