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ヒロインから王子を奪ったわたしは死ぬほど嫌われている……はずですよね?  作者: 木の実山ユクラ
第一部:嫌われていたはずなのに、なんだかようすがおかしい。

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32/32

答え





応える?

好きだと言ってくれたことに応える?

ゲオルグは確かにそう言った。

散々付きまとい、しつこいくらいに大好きだと繰り返したあのアステラの行動に応えてくれるなんて。


……やばい。


やっぱりリリーナに代わって、アステラがバッドエンドのルートに突入しているかもしれない。

ゲームではこんな風にゲオルグが照れたりする場面はなかったし、こんな告白も無かった。だからこのルートが何ルートなのかもわからない。

だけどゲオルグは何をしても恋人を不幸にする王子だから、十中八九危険だ。

拒まないと。死んだらリリーナのハッピーエンドが見られなくなる。


アステラが拒もうとすると、ゲオルグは頭を下げてきた。


「俺はずっと君に酷い態度だった。本当にすまなかった。言い訳になってしまうが、あれは全部第一王子の為にやったことで、君が好きだと言ってくれたのも全部嘘なのだと思っていたんだ」

「あの、」

「君のような子がいつも笑顔で話しかけてくれて気にかけてくれて、こんなことは罠でもないと起こらないのだろうと思っていた」

「えっと」

「俺の身は俺だけのものではないから、絶対に騙されるわけにはいかないとずっと抑え込んできた。でも君は俺のことを身を挺して守ってくれて、家も爵位も捨ててここに来てくれた」


アステラがまじまじと見つめていると、ハッと我に返ったゲオルグは恥ずかしそうに目を伏せた。


「俺は臆病で、ずっと君に辛い思いをさせた。すまなかった」

「えっと、ゲオルグ様は」

「ああ」

「わたしのこと、そんなに好きなんですか?」


ゲオルグは「君はほんとにストレートだな……」と顔を真っ赤にしていたが、小さく頷いた。


「君はいつも楽しそうで真っすぐで優しい」


「君が笑っているのを見ると嬉しくなる」


「だから俺が君にしてもらったように、俺も君をもっと幸せに出来たらいい、と思ってる」


数々のルートを攻略してきたアステラだったが、こんなセリフは聞いたことが無かった。

『もっと幸せに出来たらいい』なんて。その顔面で言うのは反則だ。



「……なにか、言ってくれ」


「実はリリーナちゃんの為に演技をしていただけで、ゲオルグ様のことなんて全然好きじゃないんです!」

……とは、もう言えなかった。

アステラを見つめてくるゲオルグの顔を見たら、何となく言えなかった。




「わ、分かりました分かりました!ゲオルグ様がいきなり塩対応じゃなくなった理由がとっても良く分かりました!」


そう言い終わった後に急に自分の頬が熱いのを感じて、アステラはそれを隠すように顔を両手で覆った。


……ドキドキはしてない。ドキドキはしてない。わたしはドキドキなんてしてない!


「もう!全部忘れて踊りましょう!折角舞踏会に来たのですし、じゃんじゃん踊りまくらないと!」

「じゃんじゃん……」

「ゲオルグ様は運動神経が良いので踊るのも上手ですよね?わたしも元侯爵令嬢ですから踊るのは得意なんです。会場をアッと言わせてやりましょう!」

「はは、そうするか」


頷いたゲオルグは、おかしそうに笑った。

普段クールなゲオルグが目を細めた姿に、アステラはやっぱり変な気持ちになった。


「ええい、もういいです。行きましょう!はい、お手をどうぞ!これから人の多い会場に戻るのですから迷子にならないようにわたしの手を掴んでいてください!」

「ああ、分かった」


手を伸ばしたゲオルグはアステラの手を優しく包み、会場の中へエスコートしてくれた。

とても大切なものを触るようなその温かさを極力無視するように努めながら、アステラはダンスホールの中央に立った。


神秘的な薄暗がりの会場だが、ダンスホールの中央だけはライトアップされていて、踊る貴族たちが良く見える。

勿論アステラとゲオルグの姿もライトアップされて、招待客たちがアッと目を見張ったのが分かった。

眩しい光の中で人々の間に目を凝らすと、涙目になっているリリーナとその横で微笑むレーデルの姿も見えた。


元々踊っていた貴族たちがゲオルグの為に場所を開け、楽団が特別に新しい曲を奏で始める。

客たちが一人残らずアステラとゲオルグに注目しているのが分かる。

やっぱりゲオルグは王族だったのだなと何となく感心してしまう。


ゲオルグが慎重な様子でアステラに近づいて、腰に手を回して来た。


「君に合わせる」


ゲオルグが近い。

綺麗な顔面も近い。

心臓の鼓動が早い事を認めるのを拒否しつつ、アステラはステップを踏み出した。


ゲオルグの瞳と同じ色の、アイスブルーのドレスの裾が揺れる。

あえて難しい振付を選んでも、ゲオルグは涼しい顔でアステラを支えてくれる。

時々目が合うと、恥ずかしそうに細めてくれる。


「……でも、騙されませんから」

「何か言ったか?」

「いえ、なんでもないです」


……わたしはリリーナちゃんのハッピーエンドが見たい。

だからこの王子に殺されそうになったら、絶対に逃げる。

いくら優しげでも、ぜったいに油断はしないんだから。




ここまでを一部とします。

一部完結させまして、しばし休憩します。

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