理想の朝
ふと、どこからか規則正しい音が聞こえる。懐かしさを感じる音。その音とともに食欲のそそるような匂い。
だんだんと意識がはっきりとしてくる。暗闇の中を一筋の光が指すかのようなこの感覚。
追い打ちをかけるかのごとくカーテンから光が漏れる。
聴覚、嗅覚、視覚、ときたら、やはり触覚、味覚も寂しくなるようで、都合よくなきはじめる腹の虫に挨拶しつつ、重い体を起こし、匂いの元へと歩みを進める。進むたびに濃くなる匂いと音。そして、聞こえ始める朝のニュース。
ぽけっと、テレビを流し見していると、ふと後ろから暖かさを感じる。今まで忘れていた触覚の寂しさを埋めてくれるような暖かさ。
軽く挨拶をされつつ、洗面所へと誘導される。
鏡に映るは、寝癖まみれの寝起きの自分と、その寝癖で遊び朗らかに笑う同居人。
同居人と言うと少し冷めた他人のように捉えられるかもしれないが、あくまでも同じ家に住むお互いを思い合っているふたりである。俗に言う恋人同士だろう。
なかなか直らない寝癖に苦戦しつつも楽しそうな彼女を尻目に今日のご飯は何だろうかと嗅覚に集中力を働かせる。
味噌汁と鮭だよ。
エスパーなのだろうか。
やはり、同居人なだけあって、わかっている。ふと、鏡に目をやると寝癖が直っていて、朗らかに笑う彼女と目があった。
ご飯にしようか。
腹の虫が返事をする。
味覚が寂しさを思い出し始めるそんな朝。
初めての作品投稿です。
あさはかな知識で書きました。
友達にしか送っていなかったのですが、
様々な人からのご指摘、ご感想いただきたく、始めました。