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提督系転生者(ぞく)  作者: ファイル
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攻略完了

08 攻略完了




タートの森を攻略し始めてから数日が経過した


今日で攻略完了の予定だ



そして一際大きな木に対してウノが怪しい気配を感知した



そこを制圧して締めだ





「指揮官が来る必要はなかったのよ?」


「んー、いや、おおきな木ってのを一目見てみたいってだけだ」



ドスはわがままだなぁ、なんて言っているが


予測が正しければボス級、フードとかそんなのが出てもおかしくない

いざとなった時の魔力タンクだ



この数日でスタメンのメンバーとは気軽に会話できる程度には仲良くなった


あくまで指揮官と部隊の間柄は抜けないが



「指揮官、作戦はあるの?」


セロが聞いてくる、指揮官室では伝えてなかったからな



「ドスの範囲攻撃をかまして、なにか出ればセロの無属性で攻撃、属性にあわしてエルヴィーラかフウラが攻めてくれ、クァトロは二人の補助、ウノちゃんはドスの補助だ」



「おう、分かってるねぇ、指揮官」


「まぁベースはみんなの普段のパターンだけどな」


「それもアンタが考えたんでしょ、頼りにしてるわ」


ドスがヒューと口笛を吹いて茶化している、それにエルヴィーラが何か言っているが


…ふむ、頼りにされるとは嬉しいもので




「クァトロはん、おとなしゅうね?どしたん?」


「…あ、いえ、以前もでしたがあの木、嫌な気がしてまして」


「ふぅん、キだけにって言うてもいい雰囲気?あ、ダメそうね、ごめんて」



クァトロは唯一タブレットが見えている人物だが、それ以外はおかしい点は見当たらない


……いや、無属性魔法のような黒い魔力か、無属性は何物にも変わらずに影響を及ぼすが、クァトロの魔力は全てに対して攻撃的に作用する


無属性の上位互換かと思えば、打たれ弱さも伴っている、なんとも言えない


力はパワーとも考えられるがな




背の高い木々を抜けると、巨木を中心としたちょっとした草原に出た



「…知り合い、なわけないよな」


「ウノ、裏をとって、フウラ」



巨木の下には黒い人影といくつかの魔物


その魔物は人影の傍で大人しくしている

まぁ、敵だな



「エルヴィーラ、フウラ、狙え」


「あれは、敵、なのね」


「味方だったら後で救う、そのために俺がいる」


本日の指揮官の仕事は回復薬の荷物運びなのだ



セロとドス、クァトロがジリジリと近づく


人影が、こちらを見た気がした



「…撃て、豪風、轟雷だ!撃て!」


「…っ!やぁあ!」


「はぁ!」



ドリルのような横に刺す竜巻と光の、雷の束が人影の集団に突き刺さる


それを合図に近接組が攻め入った


必殺技を持ってして打ち漏らしがいた、広範囲の魔法でもあるため相手方も何かしたのだろう



「はっ!指揮官はん!うしろや!」


「なっ!?」


フウラが叫び、振り向く前に背中に衝撃が走る


前に吹き飛ぶと同時に意識が薄れていった

まさに刈り取られたような感覚



心配したのは肩掛けカバンの回復の小瓶が割れなかったかどうかだったが





「よワイ、ヤツ、ねらう、キホン」



パッと見、影そのものが立体化したような人型はどうやらフードを被っているようにも見えた


「指揮官はん!」


「フウラ、止まって!ーー雷円!」


雷がエルヴィーラから球状に放たれる


それはフウラと指揮官を避けて人影まで届いていく


そしてエルヴィーラを中心とした円状の焦げ跡が残り、フードは仰け反るような姿勢となっていた



「風激!」


「グッ…」


「雷鳴!」



フウラとエルヴィーラが畳み掛けるようにフードに魔法を放つ



「あいショう…わるイカ」



徐々に後退りをするフードはバッと大きく跳ねて二人から距離をとった


「大物はアタシがもらったぁ!」


そこにドスが斬り掛かる



近接組は早々に魔物を切り伏せたようだ



「指揮官様!」


「カトロ!アンタも援護して!」


「ぐ…人使いが荒いですよ!」


「ウノが見ればいいでしょうが!」



第一部隊のメンバーが次々とフードを攻め立てるが

フードは攻撃せずに回避に徹し、攻撃は受けても致命傷とはなっていなかった


「クソが!ちょこまかと!」


「ふフフ…ムリだな、かてン」




「指揮官!大丈夫ですか!?」


「うぐ…あぁ、回復薬が間に合ったのか…背中の傷が飲み薬で治るっておかしくないか?」


「なにを変なこと言ってるんですか!ここから離れますよ!」


「…あぁいや、ウノちゃん、待ってくれ」


指揮官の視線の先にはみんなが戦う姿が



「ダメだこりゃ」



そう言い残すとフードは地面に溶けるように消えた



「おらぁ!…ちっ!どこいった!」


「上です!」「うえっ!」


取り囲んでいたにも関わらず見失ったメンバーだったがクァトロとウノの声で直ぐに見上げた




するとフードが空中で足を組んで座るような体制となっていた


「……ふふ、カエる、けど…


ダレか、ホシイナァ」



パチンと指がなるような音がした




するとフードの更に上に黒い球体が現れ、ボコボコと膨らむように巨大化していく


「…いやいや、それはおかしいだろう」


みんなが見上げて呆然としている中

指揮官だけは一人呟いていた






「…敵が


敵が赤くなるまで逃げ続けろ」



その一声と同時に黒い塊から黒いビームが発射された



逃げ続けろ、指揮官はそういったものの、空中の高い位置に鎮座している黒い塊には攻撃が届かない

第一部隊は必然的に避けに徹することとなっていた



「アンタ!私に抱えられて恥ずかしくないの!?」


「…いや、ごめん」



エルヴィーラは指揮官を米俵を腰に担ぐように抱え、光雷化を繰り返してビームを避けていた



抱えられながら指揮官は思い出そうとする…



あれはイベントボスのはず

コラボイベントでイベント用のバフ、魔力の活性化がされていた状態でようやく倒したはずだ


いつの間にかフードの姿は見当たらないが、どうしてシナリオボスがイベントボスを?




そんなことを考えているうちに黒い塊は少しづつ赤みがかっていく



「指揮官!赤くなったらどうするのよ!」


「弾けるまで攻撃…落ちてくるまで待て」


「みんな!落ちてきたら攻撃よ!」


「…うぐぅ」


「……酔ったとか言わないでしょうね?」


「あ、はい…」


「…はぁ」




黒いビームは次第に激しくなっていく


それにつれて赤くなっていく


被弾する者も現れるが致命傷は避けている



そして…



「…!高度が下がってくるわ!指揮官!」


「あぁ、弾けるまで叩け!」


真っ赤になった物体がゆっくりと降りてきた、ビームも発していない



「全員突撃!!」


「「了解!!」」



第一部隊が取り囲んで集まる



いわゆるタコ殴り

イベントボスの表面は刺激に対して波打っているように見える


表面はまるでゴムのような艶を持ち、その波打つ様は弾力性が見て取れる


…そう、効いている様子ではないのだ



「…っ、指揮官、この前の、アレ、やりなさいよ」


「…あれ?」


アレとはどのことだろう

現状打破が目的なら…資材投入による強化か?


「きーす!きすよ!キス!」


「…ほ」



グイと捕まれエルヴィーラとキスをする

随分と熱烈で激しいキスだ

同時に意識がふわつく、眠気すら感じた時に唇が離れた


「…不思議ね、体の奥底から力が漲ってくるの、轟雷…いいえ

『黒雷』」


呟くように唱えられた魔法


エルヴィーラの手元から黒い光が放たれ、黒い物体を貫く


「ふふ…『黒雷』、『黒雷』!『黒雷』!!」


「…その姿、どうしたんだ」


幾本もの雷を放っていたエルヴィーラはいつの間にか普段の制服のような姿からちょっと派手目な制服、装飾がふんだんに使われている様子になっていた


「……上限解放、か」


ゲームになぞるとするなら、その姿は特殊素材を用いて更なる進化を遂げた姿


強化とは違った強化

…強化には変わりはないけれど



黒い雷を受けていた物体が突如として弾けた


他の部隊の面々は驚いた表情だが、エルヴィーラだけはしたり顔でその様子を見ていた



黒い物体はその形が崩れ…爆発するように弾けた、そして、黒い液体が辺りに飛び散る


もろに被ったのは…エルヴィーラ


「わぷ…」


まるで遠くに飛ばすように飛び散り辺りをドロドロと汚していった




「ふふふ!あはははは!みた!?指揮官!すごい!すごいわ!?」


その場でターンをして座り込む自分を見るエルヴィーラ



全身黒いドロドロで先程ちらりと見えた新衣装は台無しだ



「すごい!すごい!指揮官!わたしやったわ!すごい!あは!あはは!」


「…エルヴィーラ?」


ドロドロなのを気にも止めず駆け寄ってきた



目の前に座り込む


「あはは!ほめて!指揮官!私がやったの!」


まるで無邪気な子供のように両の手で自分の手を握り真っ直ぐに見つめてくる



「指揮官!指揮官!…しきかん、あぁ、しきかん」


まるで呆けたように、いや、惚けたように見つめ


握った右手を自身の頬に持っていく

そして頬ずりをし始めた


ドロドロが少しづつ落ち始める



「しきかん……しきかん…」



目を瞑り味わうように頬ずりをしていたかと思うと


「あ…」


カッと目を見開き口を開きかけ、何かを言いかけたと思ったら



事切れたように倒れ込んできた



「…エルヴィーラ、エルヴィーラ?



…ちょ、おい、おーい!おーーい!!エルヴィーラ!?」




その手は冷たく、明らかに様子がおかしかった


何がおきている

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