表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
提督系転生者(ぞく)  作者: ファイル
7/10

スパイス

07 黒敵スパイスインフルエンサー仕上げ



わたし、私


「ワタ…わたシ、私、わたし」



あの女はエルヴィーラと呼ばれているようだ


泉の水を飲むほどに全身を巡り

乗っ取る準備が進んでいく



その女の記憶を型どり、そう見えるように反映するのだ


そうして私が、エルヴィーラとなる



泉に沈んだオリジナルがメソメソ顔で見てきている


何度か人に為って人の住処に潜んだが



今回は大当たり、高い役職の部類だろう人間だ



これなら、人の世界で成り上がるという潜在意識の目標を目指せるだろう





私の元の姿は黒い泥だ


人からするに魔物として生まれた私は魔力の豊富な泉を拠点に何年もかけて力を蓄えてきた



いつしかその強さから魔物の王候補なんて呼ばれもしていた


その座は別の存在に掻っ攫われてしまったが





男が私の手を握った

魔力の塊みたいな男だ、吸収すれば私はさらなる力を得るだろう



『スカウトしようぜ、お前、課金石な!』



男からそんな言葉が流れ込んできた瞬間


体が弾けた



黒い泥に散っていくと同時に、意識も欠片のようになっていった



まるでそうなることが当然のような、弾けた衝撃は、そんな感じだった





泥になった我々は何とか集まり、泉に沈む人間に取り付き形を保った


女はクァトロというらしい



このままでは終われない


あの男に一矢報いようとエルヴィーラの記憶を辿り、基地と言う場所にある指揮官室へ向かう



道中怪しまれることもあったが何とか男の目の前にたどり着いた



魔力から我ら泥を変換させ黒いナイフを手に握る



隠し持ち、あと一歩というところで


躓いた



痛恨のミス…勢いはなまじあっただけに腕を振るってみたが届く気配はなかった



そして、地に手を着いた時に



ハートのネックレスを砕いていた



いつからあったのか分からないが

手繰り寄せていたソレを壊していたのだ



そこからぶわっと何かが溢れ出てきた



それは、『愛』


…アイ?



まるで体を貫くような衝撃に見舞われて意識がカッ飛ぶ




記憶がない、消し飛んでいる

虫に食われたようにボコボコと記憶が無い


残っている記憶…には



私に残された目的はこの男の魔力を吸収する


コレとなっていた


明らかにおかしいと自覚はある

何か野望があった気がする



しかし何度頭を巡らしても行き着くのはこの答え


ナゼと自問すれば


それがアイと自答で返ってくる



わけが…分からない



そして男を見るとこの体は制御が効かなくなり、意識も目も奪われてしまう


…壊れている

自覚はあるのに、だが治らない

直せない、治す気が無い



壊れていた、イカれていた


愛くるしく愛おしく


それもまたいいと思い、喜んでいた





瞬時に黒いナイフを、それどころか魔力を黒い泥に変換させるのが私の魔法と部隊のみんなとの討論の結果の結論に至った



どうしてか親近感が沸いて、また恋敵と思うエルヴィーラと仲良くしたいと思っていた


部隊のほかの仲間もいい子だ





私は能力としては魔物寄り

しかし体は人で

心はシステムという物が入り込んでいる


歪だ、それでも


良いと過ごし始めている




彼女はアカナと言ったか


何か悩んでいたようなので相談に乗った時、私の魔法がアカナを汚染した



本来なら私の配下に置く能力なのだが


どうだろう、どうして恋敵ができたのか


この能力、危険である

無闇矢鱈に使えばあの男の愛の奴隷が量産されることになるだろう


地獄絵図か?


私の目的が遠のくじゃないか



それに入り込んだ愛の思考もそこまで強いものじゃないだけに自覚出来ない



我ながら厄介な能力だ


…まぁ時間経過で消えることだろう



…どうして自分の能力と戦ってるんだ私は



苦悩しながらも、クァトロは生活していく





頭によぎったのは彼のこと


指揮官、彼は私を求めてくれている


うん、それだけで私の心は跳ねるようで飛ぶように嬉しい


あぁ、ああ、…アイに行こう



「優秀だな」


「必要、必要だ」


その言葉が頭の中で何度も繰り返される



求められている


彼の役に立ちたい

私を見ていて欲しい



あぁ…指揮官…



「ふふ、トレスさん、従者としての立ち振る舞いの…何個目でしたっけ」


「五個目です!」


「えぇ、えっと、主人である指揮官には不用意に近づかない、いいですか?」


「はい!……えっと何故ですか?」



指揮官に近づく女性を管理するため……じゃなかった


「定位置、というのを教えましょう、指揮官がトレスさんを呼びたくなった時に………」



歪み始めたアカナの思考

だがしかし


アカナに入り込んだアイとやらのバグは、既に消滅しているー……。







「じゃあ、クァトロは森から来たのね」


「そうですね、少なくとも冒険者街で応募要項を見て来たというわけではなさそうです」



「…ふぅーん、ありがとう門番さん」


「いえいえ、基地の人の出入りのことならしっかり記録してますので、お任せ下さい」




忙しい秘書官業務の合間に私たちが出てった間に来たというクァトロの情報を集めている


あの女はどこか怪しいのだ


今ので冒険者街に情報がないことも確定してしまったが…さて、次はどう探りを入れるべきかしら


「はれ、エルちゃんどしたの」


「…フウラ」


この女は相変わらずよく分からない

訓練生時代、基本属性じゃない私は周りから浮いていた


…いや、今にして思えば性格に難アリなんて言われそうだけど


そんな私に話しかけてきた数少ない人だ


更に、ほかの話しかけてきた人が何かしら裏がありそうなのに対して


フウラは小細工無しに裏を表にして話しかけてきた

私の雷魔法をいたずらに使いたいと堂々と言ったのだ



下手に友好的に利用してこようとしてきた人とは逆に信用出来たけど




ともかくどっちかと言うと嫌いだ

頼れるかどうかは別として


好きなヤツなんてアイツくらいしかいないけど

頼れるかどうかは別として…



ま、話すんだけどね



「…クァトロについてなんだけど」


「あー、やっぱり?そうかなーて思ったんよ」







基地運営が軌道に乗り始めた


まだ委託遠征、新規訓練生の受け入れとやることはあるが


第一部隊スタメンの行動指針が軌道に乗り始めたのだ



無事に泉近くまで支配地域を伸ばすことに成功した


まぁまだ序盤だしな


ここらで人型の黒い影の敵がゲーム時代では出たのだが、出ないのかな?



ともかく攻略できている

ここ二日三日の出来事である



最近思うこととしては朝っぱらから走り込む人がいるということだ


正体としては元訓練卒業生だ



常に誰かしらが基地内をうろちょろしている


ついでに俺は遠巻きに見られている、多分、あ、物珍しい的な視線ね?


今日は第一部隊に休暇を与えているが、やはり交流を持つのだろうか



明日にタートの森の攻略を終えて訓練生達を実用化まで漕ぎ着ける予定だ


予定は予定な上、急ぎでもないので変わっても問題ないが




さてさて、何が出るか

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ