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提督系転生者(ぞく)  作者: ファイル
3/10

夜のこと

03 ある夜のこと



「それほんまにいってはる?」


「失敗したら死にますよ!?」


フウラとアカナが俺の作戦に目を見開いている


「失敗すれば俺もフウラも、助けのこなかったエルヴィーラも死ぬ


だが、逆に成功すれば誰も死ぬことは無い、なに、勝算のない賭けはしないさ」


じっとフウラを見る


「…ふふ、ええよ、死んだら私もそれまでの女だったってことよね」


「…よし、じゃあ行くか」


フウラの心が決まったならそれが開始の合図だ


俺の心は思いついた時点で決まってる


待ってる暇はない



「ふ、2人とも!」


アカナが指揮官室から声をかける

目尻を拭いながら


おいおい、泣くのは早いぜ?


「し、失敗したら許しませんからね!」


「もちろんやよ〜」


「まかせとけ」


2人は施設の外に出た






「っはぁ!雷鳴!雷鳴!!」



戦闘を開始してどれだけ経ったか


周りはスライム、ゴブリンばかり、たまに木のような魔物、木面人樹だかそんな名前のやつ



どれだけ倒して、消滅させても数が減らない、そればかりか多くすら感じる


その上で一定の距離を保ちながら全然詰めてこない


私は完全に遊ばれていた


仲間の死をなんとも思わず、最後に軍として勝てば良いという方針


まったく…まいったなぁ




泉の水は魔力を回復させる

それは即効性でなく、持続的に



雷鳴や光来化は何度も使えているが

轟雷は打てばそこでうち漏らした奴らに囲まれなぶられるだろう


轟雷を連発出来れば造作もないが



…もう、体力の方が限界に近い


どこでミスった、最初は轟雷から、そこからすぐに逃げておくべきだった?


…いや、ここに来た時点だろう

私たちは仲間を集めるという段階だった


来るとしても早すぎた


仲間、仲間を集めてからくるべきだった



……仲間か、私みたいなのに仲間なんてできたかな


大体のことはなんでも出来た

1人の方が効率的だった

私は誰も必要としなかったし


誰にも必要とされなかった

私ができることは他の子達も頑張ればできるのだから


わたしって…



「あれ、あれレ、マダやってたノ」


それは施設で聞いた声



森の方から歩いてくるフード


昼間は人に見えていたが


…そいつの中身はドロドロと動いていた


「ふふん、私を倒すのにこんな雑魚ばっかじゃ力不足よ」


力不足…うん


私の言葉に反応してかスライムは跳ねてゴブリンはぎゃーぎゃー鳴く

私の言葉が分かるのだろうか

向こうの声は分からないが



…幹部クラスの周りは知能が高いと教わったことがある


もしや…



「んー、まァ、だよねェ」


その瞬間フードの右手が膨張した



「…っ!光来化!」


雷となって後ろに下がる

泉の縁ギリギリに着地する


…飲めばまだ戦える、けど、もう気分も悪いっ



ズドン…と私のいたところにはフードの膨張した右手が突き刺さっていた



…万全でも喰らえばひとたまりもない一撃だ


潰されれば冒険者は引退レベルだろうか



「つっ!雷鳴!」


「ソウそウ、ヤッぱツメがアマイよキミたち」


フードが来たことで辺りの知能レベルが向上したと考えいいだろう


単純な襲い方すら機敏になっている



一瞬で周りを囲まれた…

フードも来ている


「フふ、おしまイだねー」




でも、


アイツの言ったことは本当だったみたい


「雷円!」


ついさっき発動構成がわかった魔法を唱える



私を中心に球状に雷が広がる


囲んでいた魔物はその場に焦げ落ちるか威力に押されて吹き飛んでいる


フードも軽いのか吹き飛んでいた


加えて魔力消費も泉の水を考えれば…


連発も許容範囲だ



「私はまだ、舞えるわ」


きっ、とフードのとんだ方を見る


まだ立ち上がっておらず、体に雷が走っていることから痺れを起こしたのだろう



「ぷ」


「ぷ?」


足元に黒焦げとなったゴブリンからスライムがはい出てきた


多くのスライムは蒸発しているので奇跡的にうち漏らしたか



…範囲魔法で?



膝下くらいのスライムはぴょんと私に突っ込んできた



とスっ


威力は無に等しい、相当積み重ねられないとやられることは無いだろう



しかし私をよろめかせるには充分な一撃だった



「おとと」


ぱしゃ


ズボッ



「…ん…ん?」


片足が泉に入った


その片足がまるで石になったように動かない



それどころかどんどんと沈んでいく



「なっ、え!?」


「アハは、ねらイがさいしょカラちがうんだ」


いつの間にか目の前まで歩いてきていたフード


雷は体を走っている、痺れていたのでは?



「フゥん、カワイイ顔だね」


「…え?」


フードの泥のような顔が私の顔になっていた


「あー、うんうん、……どうかしら」


「ひっ…」


次の瞬間には私の声になっていた



「ひっ、だって、可愛らしいこと、ふふん、私はそんな声出さないわ」


どんどんと私になっていく


「なに、それ」


「アナタはもう、いらないわ」


トンっと押されると泉に仰向けに倒れ込んだ


下に、引きづりこまれる



「その水、飲んだでしょ?」


イヤだ


「本来は浄化の成分とかあったのですが…」


まって


「私色に染めてしまいまして…」


まだ…


「もう、いらないの、ごめんなさいね?」


私…



どぷんっ



「あらあら、あなたの席はもう無いみたいね?」



これからだったのに





「あーあー、アハハ、どんどんエルヴィーラになっていくわ…素敵ね、人って……あー、キミたち、もういらないよ、失せてください?」


ビシャァンッ!


雷が降り注ぐ



そこに竜巻が突っ込んできていた



「ひゃぁぁああ!!変なところ触らないでくださいませ!?」


「じゃあどこ掴めってんだ!腰以外触ったら蹴るだろおがぁ!!」


「腰もくすぐったいっていってはるのぉお!」



巨大は竜巻は木々を吹き飛ばしながら迫ってきていた




その中心にふわふわと浮かび上がっているのは…



「えっとフウラと指揮官…かな」





単純明快、フウラの必殺技、豪風で移動するというもんだ


豪風は大きな竜巻を前方に発生させる技


視界外、意識外で消えるらしい


なに、それに乗ればいい


加えてフウラが使うんだ

中心の風の弱いところで滞空すれば問題ない


そんで守りなら俺もできるのだ



だから、エルヴィーラが撃退してるところに間に合った




「フウラ着くぞ!着いてんぞ!」


「わーたーしはー!みえないっ!ですー!」


「がああ!行き過ぎるっての!」


「ひゃ!?離すのも優しく離してくださ…離したんですか!?」



竜巻は弱まり始めるが泉の水を結構巻き上げて行った



「よう、エルヴィーラ、無事だったか」


「…まぁ、ギリギリってところね、あんた達が吹き飛ばしたけど、結構な数の魔物がいたから」





指揮官!私はここ!ねぇ!そいつは偽物なの!



頭上で偽物が指揮官と喋っていた


いや、まず、指揮官が降ってきた瞬間、エルヴィーラは喜んでいた


意味のわからない移動方法を駆使して戦場に降り立った


まさにその身を削る思いで参上した姿に心うたれた


しかしその目に沈んだエルヴィーラは映らなかった、当然だ


偽物は姿かたち、声に加えてどうやら私という個人情報まで持っているらしい


あれが私じゃないと否定できる部分はどこにあるというのか



私が、あの偽物を否定できなかった


轟雷すら同様に撃った


あれは、いったい、だれ?




「指揮官はん〜」


そんなふわふわした声と共に駆けてきたのはフウラ


訓練生時代に数少ない会話をした仲だ


誰にでも人当たりのいいフウラ、そんなイメージだ


「…だれ?」


あぁ、うん、私はフウラと知っててもそうやって反応するだろう


自分は覚えていて、しかし向こうが覚えていなかった時、その時の傷はあまりにも大きいから



「エルちゃん、フウラよ?忘れてはるん?」


「あぁ、フウラ、えっと何となく分かるけど…なんで指揮官と?」


私がするであろう行動をするあの偽物に腹が立ってきた




指揮官!しきかん!ねぇ!


声は届かない




「無理よ」「諦めて…」


だれ?


声のする方を見る

泉の中、そこにいるのは…冒険者


「私たちもあなたと同じ、傲慢にもこの泉に挑んだ冒険者よ」



あぁ、ここは、冒険者の一種の墓場だったのか



私たちは、ここで眠るのか





なんなんだこいつは


エルヴィーラに似た何かが目の前で喋っている


フウラはしっかりとエルヴィーラに見えているらしいが


似ても似つかない



この場所は、初めてキャラの偽物と戦う場所だが


偽物にしては出来が酷いぞ?おい



「…そうか、そうか、雷円を使えるようになったのか


っ…ごめん、フウラ、もう我慢できねぇわ」


「指揮官はん?」


「エルヴィーラ、手を」


「指揮官?どうしたの」



ニセヴィーラが俺の手を握った


「腹立つからお前でスカウトするわ」


バチュンッ!



ニセヴィーラが弾ける



スカウトはゲームでは2種類ある、時間をかけて募集するスカウトと

課金石を使ったスカウトだ


どうにもアカナから聞いた感じや書類を軽く漁っても募集タイプのスカウトしか見当たらなかった



しかしこの偽キャラをみて少しだけ何かわかった気がする


この偽キャラ、課金石の反応がするのだ


なんで?どうして?なぜ分かる?とか全くわからん、ただそういうことが分かっている、とだけ



ひとつ、無理やりこじつけるならボス級だとして、ステージクリアの際に貰える課金石はドロップ品なのかなということだ



「あが…しき…がん?」

「指揮官はん!?何してはるの!?」


「フウラ、こんなのがエルヴィーラに見えるのか?確かにポイのは分かるが、擬態にしてはあまりにお粗末


いいか?偽物、エルヴィーラはもっと可愛いんだぞ?あの性格であの中身、まじほんと事前登録しとけばよかった」



「な、なぜ、全て模倣したノダ」


「模倣?アレで?エルヴィーラは服の汚れはなるべく隠すようにするって言う激カワな癖を知らないのか?指揮官の前で堂々と汚れた服は見せないんだ」


「ナニ、ソレ、しら、ナイ」


「勉強不足だ、出直してこい、ハゲ」


弾けたニセヴィーラはスライムみたいな粒となってじわじわと地面に吸い込まれていった



コウン…


泉の岩が光る


おお、ガチャ演出じゃん!興奮してきた!てかここだったのか!聖地巡礼じゃん!



水色の岩


波紋が広がり赤くなる


こい!もう一個上!


コウン…!


赤から金へと


「うっし!」


ガッツポーズをする


ブシャア!


水しぶきがあがり、そこにはキャラが…


キャラ……エルヴィーラ?


「あれ?」


「…は、指揮官はん、どゆこと?」


あれ?レアキャラはどこです?



「……し」


「し?」


「しきがぁん!しきかん!指揮官!」


ボロボロの服のエルヴィーラが泣きながら走ってきた



「おおう?」


抱きつかれる


「指揮官!指揮官!怖かった、私、もうダメかと思った!」


あれ、誰だこの可愛い子


エルヴィーラって言うんですけど…


「おかえり、エルヴィーラ」


「うん、うん…ただいま、指揮官」


多分こう言う場面なんだろうな





帰りは光来化で一瞬で基地に着いた


玄関で待っていたアカナは喜び、同時に全員の服がボロボロなのを喜びながら怒っていた


今日は疲れを取るために早めに寝ようとのこと

もちろん報告書は書いたけど


出撃許可も出てないため秘匿されるけどな



風呂に入り

夜飯を食って


自室に入る


指揮官室から隣の、隣くらいの部屋だ

特に個人のものもないけど


ベッドに座りタブレットを見る


細かなログで見直そうとも思ったが、今日は空中散歩をした日だ、疲れているのだろう、ログを見直す気が起きなかった



…ん、好感度のハート、3人のゲージがなかなかに上がっていた


…少なくともゲームでは起こりえない上がり方だ


ログで見るがタイミングは帰還した時


3人同時、というのも少し引っかかる


アカナは確かに帰還、しかしフウラとエルヴィーラは泉の時に上がってもいいと思ったからだ




…考えても仕方ないか


上がって嬉しいことに変わりはない

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