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魔王の花嫁  作者: yaasan


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邪神とは

 玉座に座るクアトロの前にはヴァンエディオ、そして堕天使のスタシアナとエリンがいる。


 あの時バスガル侯が言っていたように、元天使として邪神について何か知ることがないのか訊いてみようと思ったのだ。


「……というわけです。スタシアナさん、エリンさんは邪神について、何か知っていることはあるのでしょうか?」


「ふえ?」


 ヴァンエディオの言葉にスタシアナが小首を傾げている。

 もの凄く可愛らしいのだが、この様子ではスタシアナが何かを知っていることはないのだろうなとクアトロは思う。


「エリンはどうだ? 何か知らないのか?」


 クアトロはエリンに赤い瞳を向ける。


「邪神に関しては、あまり知らないのよね。元々この地上を支配する存在だったとか、人族が彼らを封印したとか……知っていることと言えば、皆と同じでその程度よね」


「そもそも、なぜ神は天使に似せた人族を生み出して、地上に寄越したのでしょうか?」


 ヴァンエディオが呟くように言う。


「ふえ? ふえ?」


 スタシアナは相変わらず小首を傾げている。代わりにエリンが再び口を開いた。


「さあ……考えたこともないわよね。そもそも天使は普通、地上になんて興味がないもの」


 エリンの言葉を聞きながら、地上だけでなく天使が人族にも興味がないことを以前にスタシアナが言っていたとクアトロは思い返す。


「そもそも邪神とは何なのか。まずはそこからでしょうね」


 ヴァンエディオの言葉にクアトロは頷いた。


「そうだな。そこから辿っていけば、アストリアが封印を解く鍵ということが具体的にどういうことなのか。それが分かるかもしれない」


「クアトロ様、事はこの世界の深淵に近づく話かもしれません」


 ヴァンエディオはそう言うと、一礼をして踵を返した。


「ヴァンエディオ、難しいことばかり言ってたのですー」


 スタシアナの言葉にクアトロは苦笑する。


「でもスタシアナ姉様、考えたこともなかったのですが、そもそも邪神とは何なのでしょうか?」


「えーっ? エリンまでそんなことを言い出して。邪神なんて言うぐらいだから悪い奴なんですよ。神が生み出した人族と一緒に、天使の皆が戦ったってぼくは聞きましたよ」


「何で天使と人族は邪神と戦ったんだ?」


 クアトロが疑問を口にする。


「それは地上から悪い邪神を追い出すためなんですよ」


「神や天使は地上に興味がないのにか?」


「そんなことは知らないんですよー。人族を生み出した神にでも聞けばいいんですよー」


 なぜかぷんすか怒り始めたスタシアナをエリンが宥めている。

 

 分からないことが多すぎるようだった。

 それにしても、なぜこの疑問を今まで誰も気にしていなかったのだろうか。天使と人族によって、地上から邪神が駆逐された。それをさも当たり前のように受け入れていただけなのだ。


 奇妙な話だと思う。邪神が地上から駆逐された。その理由を誰も知らないし、誰も知らないことに疑問を抱いてこなかったのだ。


 自分たちが魔族だからなのかとクアトロは思う。駆逐した当事者である人族であれば、それを知る者もいるのだろうか。


 まあいい。何であれ自分はアストリアを守るだけなのだ。鍵だが何だか知らないが、そんなことにアストリアをこれ以上巻き込ませやしない。

 

 クアトロはそう考えるのだった。





 意外な人物からの使者がクアトロの下を訪れていた。天使降臨騒動で面識を得たエミリー王国国王、ライトル三世からの使者であった。

 急ぎ極秘裏での会談を申し出る使者を前にして、クアトロはヴァンエディオに視線を向けた。よく分からないことは、ヴァンエディオの判断に任せるのが間違いないとクアトロは思っている。


「クアトロ様がエミリー王国に行かれるのは危険なのでは。会談を申し入れるのであれば、自らが来ればいいだけのこと」


 ヴァンエディオの言葉はもっともだった。危険かどうかは置いておくとしても、会談がしたいと呼びつけるのはどうかとは思う。


「分かった。出向くとしよう」


 クアトロが承諾の意を示した。何か言おうとするヴァンエディオをクアトロは片手で制した。


「言いたいことはわかるが、大丈夫だ。今回もマルネロたちを連れて行く。アストリアも連れていくぞ。アストリアは俺が近くで守る」


 何か言いたげな顔をして見せるヴァンエディオだったが、クアトロがそう言った以上は自分が何を言っても無駄だと思ったのだろう。


 ヴァンエディオはそれ以上何も言うことはなく、クアトロたちによる極秘裏のエミリー王国行きが決定したのだった。

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