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魔王の花嫁  作者: yaasan


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魔王が願うこと

 アストリアは中庭のほぼ中央に位置する白い椅子の上に腰掛けていた。日差しは穏やかで、僅かにそよぐ風が明るい栗色をしたアストリアの柔らかそうな髪を揺らしていた。


 人の気配に気づいたのだろう。アストリアが近づくクアトロに深緑色の瞳を向けた。そして、アストリアは急に現れたクアトロに少しだけ不思議そうな顔をしてみせた。


「穏やかな気持ちのいい日だ。この間までの出来事が嘘のようだな」


 クアトロはそう言いながら、椅子と同じ色の白い卓子を挟んでアストリアの正面に腰掛けた。アストリアが僅かに頷いて口を開く。


「ごめんなさい、クアトロさん。きっと皆が心配しているのでしょうね。私が塞ぎ込んでいると……」

「謝る必要などない。確かに皆が心配はしているが、塞ぎ込んでいるアストリアが悪いわけではない。誰だって塞ぎ込みたい時もあるだろう」


 そんなクアトロの言葉にアストリアは少しだけ微笑んだ。


「クアトロさんは私のことならば、何でも肯定してしまうようですね」

「マルネロも言っていたが、俺はアストリアに笑っていてほしい。だから、アストリアを魔族の国に連れてきた」


 クアトロの中でアストリアと出会った時のことが思い出される。

 そうなのだ。生を受けた国によって存在を否定されたこの少女を自分は助けたいと思ったのだ。守りたいと思ったのだ。

 クアトロは言葉を続けた。


「だから、俺はアストリアに笑ってもらうためならば何だってする。そして、アストリアから笑顔を奪う者は徹底的に排除する。これは俺だけじゃない。皆がそう思っているんだ」

「でも、私には皆に守られる価値があるのかと。皆が傷ついてまで私を守る価値があったのかと……」

「価値があるとかないとかなど、誰に分かるはずもない。誰かが決めることでもないさ。皆、アストリアのことが好きだからアストリアを守る。ただそれだけなんだ。難しい話じゃない」

「はい……」


 アストリアは静かに頷く。そんなアストリアを見てクアトロは笑顔を浮かべる。


「なあ、アストリア。また、皆と旅に行こう」

「旅……ですか?」


 唐突な話にアストリアが戸惑ったような声を出す。クアトロは笑顔で大きく頷いた。


「北の果てにある氷の大地にはゴーレムよりも大きな巨人族が住んでいるという話だ。それを皆で見に行こう。寒いところが嫌なら、南だっていい。南の砂漠には大きな石を積み上げた山よりも大きな建物があって、そこには黄金の仮面をつけた人族が住んでるらしい」


 そこでクアトロは言葉を切ると、アストリアの顔を覗き込むようにして笑顔を浮かべた。


「世界は広い。まだ俺たちが知らないことがたくさんあるんだ。そんなことを考えていれば、自分に守られる価値があるとか、ないなんてことはどうでもいいことだろう?」

「……そうかもしれませんね。皆と旅ですか。楽しそうです」

「また、マルネロやスタシアナと一緒に行こう。エリンやトルネオだって一緒に来るかもしれない。ダースも仕方がないから連れて行こう」


 ダースも仕方がないから連れて行く。そんなクアトロの言葉にアストリアは苦笑のような微笑を浮かべた。


「でもクアトロさん、王様なのに国を離れてもいいのでしょうか?」


 アストリアが少しだけいたずらっぽい笑みを浮かべた。


「エネギオスとヴァンエディオがいれば大丈夫だ。俺がいると逆に邪魔だろうからな」


 クアトロもそう言って笑顔を浮かべる。


「アストリアのことは皆、大好きなんだ。だから、笑顔でいてほしい。だから、俺も皆もアストリアを守る。今までも、そしてこれからもそれは変わることはない」

「はい……」


 アストリアは頷いてクアトロに少しだけ笑顔を見せた。


 こんな自分の言葉だけで、アストリアの中にある感情すべての整理がつくわけではないだろう。ならば、ゆっくりとその整理をしていけばいいのだとクアトロは思っていた。

 

 何、取り敢えずの脅威は去って、時間はたっぷりとあるのだ。


「これからも一緒だぞ、アストリア。そして、何があっても俺や皆がアストリアを守る。逆にアストリアが俺たちを守る時だってあるかもしれない」


 クアトロは再度、そう繰り返す。

 

「いつまでも一緒だ。アストリアは魔族の王、魔王クアトロの花嫁なのだから……」

「はい……」


 クアトロは願う。

 視界の中にいる静かに頷く少女に。

 自分の言葉が少しでも少女を優しく包み込んでいくようにと……。

 魔王クアトロはただそれだけを願うのだった。

 最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。


 誤字や脱字も多かったかと思います。また、文法上の間違いや未熟な小説作法など、読み難い部分も多々あったかと思います。


 加えて言えば、無理に話を伸ばしたこともあって、辻褄が合わない箇所も散見されたことと思います。こちらも含めてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。


 この作品は私の処女作にあたります。いま読み返しますと特に前半部分は稚拙な部分が多く目につき、人知れず赤面する思いでおります。


 それらが解消されたと未だに言うことはできないのですが、他の作品にも目を通して頂けると幸いです。


 最後に最終話までお読み頂いた皆さまのご健勝と更なるご活躍をお祈り申し上げます。


 本当にありがとうございました。

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