妥協案
どうやら前魔王が推しだったジェイさん。何がなんでも推しに近い私に継がせたい(推しに育てたい)ようで、折れないので妥協案として、魔王としてふさわしい力をつけてから就任ということにした。
魔王関係なくこの世界で生き抜くには知識や力が必要なので、ジェイさんから教えてもらうことに。
要は魔王にふさわしい力を備えなければよい話だ。
それに前魔王が勇者パーティーに私の世界に転移させられたのなら帰る手段が少なからず存在するということ。
絶対に帰ってやるからな。
ただ、気がかりは向こうで私が死んだ扱いになってなければいいが…その辺を考えると心臓辺りがきゅうっとするので今は置いておこう。
とりあえず宛てがわれた部屋に入ると、とびきり目を引く肖像画があった。
だいたい誰の肖像画かは容易に想像できるけど。
肖像画の人物は、黒髪で赤い瞳のクールイケメンで、
ジェイさんより人間に近い外見というか、ここが魔王城ではなければ人間の肖像画だと思うだろう。
まぁこれなら元の世界ではビジュアル系とかいえばその様にしか見えない。
肖像画から目を離し、部屋を見渡すと大きな天蓋付きのベットにアンティーク調の鏡台。磨りガラスの扉があり、その奥は猫足のバスタブがあり洗面台も着いている。
…ここで暮らせるな。
内装の趣味が女ぽいので前魔王部屋ではないだろうが、愛人とかの部屋じゃないだろうな…。
天蓋付きのベットに転がると思いのほかちゃんと清潔で洗剤か何かのいい匂いがした。
ここに通される時にみた城内は意外と明るくキレイだった、外は今が夜なせいなのか、常時暗いのかは分からなかったが、木々が見えたので草木などの自然はあるのだろう。
私の想像する魔王城からはかけ離れていた。
もっと陰鬱とした薄汚そうなイメージだったので、これは良い誤算だ。
色々頭を使って話したせいか急に睡魔が襲い、瞼が重くなる。
絶対に魔王になら…ない…ぞ……ぐう。
…おき………あ……で………すよ……
何か聞こえるきがする
………くだ……!……ま……さ…!
うるさい…ねかせろ
……!!!!!
「起きなさい!!!!!!」
「…………あ"????」
「っ…こほん。マコト様朝ですよ」
「………。」
私を起こしたのはコイツか。
「…あーー…ジェイ………さん」
「私のことはジェイと。敬語もいりません」
どうした急に。少し恍惚とした表情をしながらジェイは言った。
「あと5分…いや2時間…」
まだまだ眠い。今何時よ…体感的に朝6時くらいに感じる…ていうか何故部屋に入ってきている…思うことはあるが、私はまだ寝る。