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かたち
「…………嫌い?」
華子は口に出していた。それが本当に本当に嘘くさい一言であることを知りながら。悠は答えなかった。それも知っていた。
悠の横顔は華子の嫌いなかたちになって、目の色も嫌いな色になった。華子はこわくなった。
「いや、なんでもない。忘れて。えっとそれでね」
声をワントーン上げて話し直す。胸の奥で何かがキュッとなる。その音がまるで聞こえたかのように悠の顔が上がる。
「だからそれをやめろって言ってるの」
悠の顔は嫌いではないけどわからなかった。目の色も読めなければ、声もどうなっているのかよくわからなかった。
華子はまだ少し怖いのに頓狂なタイミングでのキスを、また許す。