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努力不足
「僕はね、サシェ。魔法が使えないんだよ。生まれつきとかじゃない。紛れもなく僕自身の努力不足で、だ」
ユイは学校の中庭でそう切り出した。彼は時々見ているこちらが、どうしようもなく悲しくなるような笑顔を見せる。初夏の風は中庭の緑をざわざわと揺らしては消えていく。
「でもそれは、ユイの所為じゃ……」
「本当にそう思うのかい?」
私は不思議と口をつぐんでいた。
「皆ができること。皆が持っていることが、自分の努力不足で自分に無いことの劣等感が、サシェ、君にはわかるかい?」
ユイは微笑んだまま、瞼をゆっくり閉じた。それはひどく優しい声で。切なくて先を聞くのも怖くて、でも耳は彼の声を追っていた。
「何度も手に入れようとして、何度も手に入らなかった。そんなものが明日明後日に手に入ると思う? それでも僕は、そんなものがずっと欲しくて堪らないんだよ」