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心臓
あなたは心臓に近いから。
あなたの声はどうにも心臓の近くに刺さる。たまに心臓を突くこともあって、痛みが胸にじゅわりと広がる。そういう時は大体指の先も冷たくて、体をかたどる縁がぼやけて海みたいになるのだ。
どうせ見抜かれているのだろう、と私はわかっていたのだ。わかっているくせして、あなたに気丈な声で話す。熱を持ったスマートフォン越しにあなたがため息をつくのがわかった。もう寝るね、の声だけ残して電話の切れる電子音が耳に残った。
体の中身はまだ海のままだった。抱えて眠るのだ。全部全部抱えて。
本当にどうしようもないくせして。