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強い女
私は、強い女が好きじゃない。
ヒールを履いて、可愛くなろうと自分を切磋琢磨して、誰とも円滑にコミュニケーションがとれて。自分の美容のために早い時間に眠れるような。
私にとって容姿は噛みつかれないように振る舞うためのもの、に過ぎないし、昼は周りの雑踏が私の感情のスペースににじり寄ってくる感覚と常に対峙している。人の輪の中に入れば尚更。夜はその日1番の戦場だと私は思っている。豪遊する嫌なことを乗せた記憶と、楽しかった一縷の筋が通ったり途切れたりするのを眺める。私は眠り方を知らない。
曖昧なまま、されど身の回りの色を混ぜながら私は日々を闊歩している。彩度は決して高くないし、よく精根尽きてグレーの部屋着になったりするが。
たぶんきっと、強い女に強い女のまま接されるのが好きじゃないのだ。おそらく、ね。
アンティークの時計に急かされながら支度を整える。ヒールの高さはいつもギリギリ。だけど口紅は赤が好きだ。玄関のドアを開ける。そこをでたら私は「強い女」。