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拳銃
まだ要らないと思っているよ。
ずっと前に送られてきた拳銃に最近ついた指紋はない。僕らの国家はとても長い論戦の末に安楽死を許した。5年前からずっと「渦中」だったんだよ。僕はずっと、そうなんだ。君に出会ってからも。
君に出会ってからも僕はずっと渦中だった。余裕なんていつも無くて。あると思ってる時は大体調子に乗っている時だった。大人の言うことは大方嘘で、君が言ってることも詭弁だと思った。本当だ。世界のハズレみたいな僕をその銃を握ることで癒やしていたんだと思う。
冷たかったんだよ。ずっと前からね。
要らないと思ってる理由?そんなの、君がきくのも変な話じゃないかい?
触って。持ち上げてみて。それでも頭に当てない勇気のなさが、もしかしたら僕がまだこの世界に持ってる期待なのかもしれないと思ったんだよ。引っ掛かりみたいなものかな。それを大事に大事に集めてたら、だんだん君の形に似てきたって。それだけさ。
さ、晩御飯にしよう。今日は僕が作るから。