忍び寄る影
一看護師の視点から、医療の現場を記録する。医療の現場を捉えることで、世の中の動きを考察する。世の中の動きを考察する中で、日々の己を内省する。なんてな。
2020年1月18日。その日は知人の出迎えに車でK空港へと向かっていた。同乗の嫁との会話は、知人の懐かしい昔話で溢れていたが、ふと流れていたラジオニュースから、中国で原因不明の肺炎が発生した事を伝えていた。ほんの数秒の話ではあったが、妙な不安がよぎり、10分程その話題について嫁と語り合った事を覚えている。
それから10日程は、対岸の火事とでも言うべき、平穏な状況が続き、ましてや東京から遠く離れた九州の一地方都市では話題にすらならなかった。
状況が変わりだしたのは更に10日程経た2月上旬。日本で患者が発生し、九州にも患者の乗ったクルーズ船が寄港していたとの報道がなされた頃からだった。
我が病院でも、この頃より少しずつ対応がなされ、まず手洗いの励行、マスクの着用、風邪症状のある御家族や小さいお子さんの面会に制限が設けられだした。ただし、やはり巷ではまだまだ他人事でしかなく、ましてや例年よりインフルエンザの患者が減った事でその雰囲気は和やかそのものでしかなく、危急迫っている感覚は全く無かった。