予兆
組織のメンバーが続々と、王国の中に入っていた。あるものは、商人の馬車に客として、あるものは、旅人として。しかし、ほとんどのメンバーは、地下水脈を伝っていた。
「にしても、ほんとにこんなところがあるんですね。」
「おれも、お頭に聞くまで全く知らなかったよ。」
「もうあの人何でもできるんじゃないかって感じだよな。」
部下たちは、そんなことをいいながら歩いて行き、
「おお。ここが入口だな。」
そこは、井戸に通じる竪穴だった。そこから、組織のメンバーが少しずつ上っていく。上ると、王都のすこし外れたところにある廃墟に出た。
「誰にも見られてないな。」
「そのようですね。では、メンバー全員これたので行きましょうか。」
「だな。」
メンバーは、集団を少しずつ分けて散らばることにした。
「じゃあお前らこれをもて。」
そう今回のリーダーが言うと、気配を消す香薬を皆に配った。
「じゃあ今日もいつも通りだ。」
「「はい。」」
そして、面々は、散らばっていった。
スラム
「ねえ。今日はなにしてあそぶ。」
「チャンバラごっこしようぜ。」
「いいね。われこそは、マイカである。」
「なにを。おれは、クロエである。」
「いざ!」
そういって、ボロボロな服を着るこどもたちは、遊ぶ一方で、大人たちは、働く気力をなくしたようにうなだれていた。ここは、王都でも、最下層のスラムである。
「子供達は、元気ですね。」
「やっぱりかわいいよなー。」
夜になり、あたりは暗くなっていた。
「せんぱーい。なかなか動かないですねー。」
「そうだな。今日は、もう5時間は経ってるな。こりゃ根性だな。」
辺りの建物を見渡すが、人気はすでになく、たまに、酔っぱらいが顔を見せるぐらいであった。
本部では、
「隊長。どの班からも連絡がないですね。」
「証拠が、ないなかだからな。かなりあやふやだな。」
やはり、何事が起こることもなくただ時間だけが過ぎていた。このなにも言えない不安感だけがヨーデルを襲っているのであった。
アルドとミズハ
「ぐふ!」
アルドの、顔面はなにもなかったようにきれいなものであった。しかし精神的にもう立ち向かう気力はなくなっていた。
「どうした?そんなものか。」
「いや、実質サンドバッグじゃないですか。」
体感時間で1ヶ月は、経過していたが、組み手では、全く歯が立たなかった。パンチを仕掛ければ、避けられそのあとにすぐ顔を蹴られたり、始まった瞬間に気付けば倒れてるなんてこともあった。
「ちょっと休憩するか。」
「はい。」
そう言うと、ミズハはおもむろに急須を取り出してお茶を入れだした。
「ほれ。」
「有難うございます。」
二人は、お茶を飲んだ。
「あー、美味しいですね。」
「そうだろ。で、今までの修行で何か感じたか?」
「なんか。なにもできてなくて蹴りも、パンチも当たらないので。」
「たわけが。最初っから攻撃できとったらこんなとこで修行しとらんだろ。」
「そうですね。確かに。ジョージもこんな感じだったんですか?」
「そうじゃ。やつも、最初は、ぼこぼこだった。」
「へー。」
「でもな。あいつは、すぐにわしの動きを盗みはじめたんじゃ。」
「そんなことができるんですか?」
「まーやつは、目がよかったからの。まーそれをいうならお主もそれくらいの素質はあると思うぞ。」
「え?」
「お主も、ジョージと同じように目はしっかりついてきておったわ。じゃが、体が覚えてないからついてきてないそれだけじゃ。じゃからまずは、次の1ヶ月で正拳つきを、次の1ヶ月で蹴りじゃ。」
「俺が、俺にもジョージと同じように、。」
その言葉でなぜか前向きになれそうだった。
「はい。お願いします。」
再び、取り組むのだった。
一方、
「で、どうするの?」
「そうだな。とりあえず、体から魔力を放出させて、弾にしてみて。」
「わかった。」
そう言うと、リンネは、両手に魔力を込めて凝縮した。そして、
「そのまま込め続けて。」
「わかった。」
弾は、どんどんエネルギー量が増大していく。リンネの額には、汗がツーっと垂れていく。
「もう無理ね。」
息を切らしながら言った。
「このくらいなら、いいと思うよ。これくらいか。限界の半分くらいの魔力だね。じゃあ、あの山に向かって撃って。」
「やー。」
放たれた魔力は、山にぶつかって、そのまま爆発した。
「イヤー、絶景。絶景。」
「いや、ちょっと山肌がツルッとしたんじゃない?」
「そうだなー。じゃあ、とりあえずあの山を吹き飛ばすのを目標にしよっか。」
「え?それこそ、何年もかかるわよ?」
「いいでしょ。多分、アルドと違って今すぐって感じじゃないでしよ?」
「確かに。わかったわ。」
そう言うと、リンネとジョージは今日の修行を終えて、一足先に家のなかに入っていった。
家のなかでは、アマミさんとリンちゃんが待っていた。
「おにいちゃーン。おつかれしゃまー。」
「おおー。やっぱりリンちゃんはかわいいね。」
俺が撫でていると、アマミさんがお茶を入れてきてくれた。
「ああ、そういえば、最近少し、困ったことがありまして、よかったら調べてきてほしいのですが。」
「いいですけど、何かあったんですか?」
「実は、最近の畑の様子がおかしくてですね。」
「ほー。」
「何個か畑の食料が食べられてるんですよ。」
「それは、師匠には?」
「まだ、最近のことで、おばあちゃん帰ってきたの久しぶりなんですよ。もしよかったらでいいんですが。」
こう言われると、断りづらく二人は、行ってみることにした。
「はー。空気がきれいね。」
「そうだな。」
「こういうとこに来るのって初めてなのよね。」
「そうなのか。」
「たまに、山に登ったりとかはあるけど。それより、あの人が師匠とか言ってたけど。」
「あー。俺は、あの人に何もかも教わったんだ。今があるのも、あの人のお陰なんだよ。」
「ヘエー。いい人なんだ。」
「まー怒るとすごいけどな。」
そんなことをいいながら歩いていると、畑に着いた。周りには、すごい害獣対策がしてあったが、フェンスが食い破られ中に獣の気配がした。
「なんかいるわね。」
「みたいだな。」
二人が畑に入っていくと、中にいたのは、金色の鬣を持つ獣だった。
「なんか強そうだよ。」
「そうかな。」
ジョージは、獣に近づいていった。
「こら。なんで人のいえの、食料を食べるんだ。」
「ガウ?」
勝手に説教を始めた。獣は、獣で圧倒されたのかおすわりの体勢になっている。しかし、正気を取り戻した獣は、ジョージを威嚇し始めた。そして、
「ガウ」
頭を、かぶりつこうとして
「おい。きいてんのか。だからな、ってなんじゃこりゃ。よだれじゃん。うわもう、頭来たよ。」
すると、ジョージはふりかぶって、獣を殴った。すると、獣は、かぶりつくのをやめて、そのまま倒れた。
「おい。きいてんのか。」
「いや、どう見てもダメでしょ。」
しばらくして、獣が目を覚ました。
「ガウ。ガウ。」
目の前に、ジョージを見るとそのままなつくかのように顔をなめた。
「あんた、その獣どうするの?」
「どうって。」
なんだか愛くるしいな。こいつ。よし。
「俺は、こいつを飼うことにした。」
「え?」
「名前は、ポチだ。」
「ガウ。」
獣は、嬉しそうにしている。もう、一生ついていくといっているかのようだ。ジョージは、こいつを伴って師匠の家に行くのだった。




