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四天王の弱点


「サッキュバスはなにが怖いんだ」

「わたしの美貌ね」

「……」

 まあ、おおよそそんな答えだろうなと予測していた……。

「ベタだな」

「ああ。言うと思った」

 サッキュバスの頬がさっきより赤いのが少しだけ可愛い。

「答えとしてはつまらないのだが、考えようによっては、一番まともなのかもしれない」

「なんだって?」

「魔王様がもし美貌……つまり、男でいう超イケメンに変身したとすれば、それは勇者一行もさぞ驚くことだろう」

「おお、確かにそうだ! 魔王様がもし美貌(イケメン)になれば、力も強くなったと勘違いするかもしれぬ」

 サイクロプトロールが話に食い付いてくる。

「最近は敵キャラでもラスボスでもイケメンじゃなきゃ見向きすらされないからな。いいアイデアだ。さっそくご報告に行こう!」

「いや待て! 『魔王様、ピンチになったらイケメンに変身して下さい』っと進言するのか?」

「「――!」」

 魔王様はイケメンじゃありませんと宣告するのと同じだ――。誰がそれを言うのだ――。俺は絶対にイヤだ――。


 魔王様がお悲しみになられる――!


「しかもあのお姿で顔だけイケメンに変わっても、それはそれで面白いかもしれない」

 面白さを追求してどうする――!

「駄目だ駄目だ! 魔王様がシケメンだなんて、言えるわけないだろ!」

 よって二案目も却下だ。


「難しいなあ……変身して怖いラスボスか……」

 ……ゾンビのように生き返っても怖い。場合によっては怖いというより鬱陶しい。また倒さねばならんのかと……。

「じゃあさあ、変身して女の子になるのはどう?」

「魔王様が女の子に変身するだと?」

 青い顔した魔王様がピンチになり、ドングリのようなキラキラした瞳の女の子に変身し、ウルウル潤んだ上目遣いをしてこれば……。


 ――確実に勇者を仕留められるかもしない!

 可愛い女の子を剣でぶった切る勇者は……もはや勇者ではない――!


「ああーっと、それ滅茶苦茶効果アリかも!」

「でしょ?」

 しかしソーサラモナーだけは首を横に振る。

「駄目だな。勇者は手を出せなくても、女魔法使いが黙っちゃいないだろう。鼻の下を伸ばしている勇者と女装する魔王なんて、『みなポックリ!』でおさらばさ」

「ああ、なるほど。女は女に手加減しないか……」

 いい案だと思ったのだが……。


 会議は長引けば長引くほどまとまった意見がでなくなるのは四天王にとっても同じだった。刻一刻と定時が近付いてくる。こんな会議で残業なんかしてはならない――。


「魔王様がピンチになった時、お酒になるのはどうかしら」

「どういうことだ?」

 お酒になる? お酒は怖いもの? お酒に失敗は付き物? 飲酒は二十歳から?

 ――意味が分からん!

「焼酎になるのよ」

「――おお! 本格芋焼酎『魔王様!』」

「――ある意味もうなってるかも!」

「う~け~る~!」


 ――真面目に考えろ!


「じゃあロケランはどうだろうか」

 ――ロケラン? ケロリンのようなものなのだろうか……。

「ロケランってなによ」

「ああ、ロケットランチャーの略さ」

 ――ロケットランチャー! 

 筒からミサイルが出るアレか! ランボーな人が使っていたアレか!

「ミサイルは怖いなあ。何もかも粉々に爆破されそうだ」

「ああ。――魔王様はロケットランチャーに変身した! 勇者にミサイルが発射された――!」

 ――キャーキャー言いながらみんな一斉に避難するだろう。

「壊れるのは勇者の盾や魔王城だけではすまないだろうな」


 ――世界観が木っ端微塵に壊れる!


「ロケランは駄目だ! たしかに怖いけれど、なんか怖さの素質が違い過ぎる!」

「じゃあなにが怖いんだ」

「そうよそうよ、わたし達が怖いものなんて、それくらいのものよ」

 サッキュバスがそう言って上目遣いで睨んでくるのだが、実際にはそれほど怖いものが白い大理石のホワイトボードに書かれていない……。


 一、下半身全裸のロリコン親父

 ニ、美貌。イケメン。

 三、女の子

 四、芋焼酎

 五、ロケラン


 頭が痛くなる……。

 我ら四天王が怖いと思っている物はこんなものなのだ……。下半身裸のイケメンロリコン親父が女の子を連れて芋焼酎とロケランを持って攻めてこれば、四天王は全滅するらしい……。

 ――この無駄な会議こそが一番怖い――。


「だが仕方ないさ。俺達は人間じゃないんだ。人間が怖いものは人間にしか分からない」

 サイクロプトロールがシャツの一番上のボタンを外した。首回りがキツクて辛かったのだろう。

「人間にしか分からないだと? ……そうか!」


 ――私としたことが、こんなつまらないことに気付かなかったとは――。


「人間が怖いものなら、人間に聞けばいいじゃないか」

「――!」

「おお! その手があったか!」

「勇者が一番怖いものは、勇者本人に聞けばいいのか!」

「それなら絶対に間違いないわ」


 四天王は一斉に立ち上がった。辺りはもう薄暗くなっている。冬は日が短い。夜が長い。

「少し残業になるが、今から行こう」

「どこへ?」

「「勇者のところへ――!」」


「じゃあちょっと待ってくれ」

 ……サイクロプトロールが突然シャツを脱ぎ始めた。人間に会うから巨漢のイメージを演出するつもりなのだろう。

「外は寒いが仕方ない」

 シャツを脱ぐと胸の七つの引っかき傷が痛々しそうに見える。が、もうかさぶたになっている。

次に黒色のスラックスも脱ぎ始めた。

「やだ、ちょっと下も着替える気?」

「ああ。虎の毛皮で出来ているパンツにな」

 ……ここで着替えるなと言いたい。

「やだ、ちょっと、ここで着替えないでよ、セクハラよ」

 サッキュバスが顔を両手で隠す仕草をしている。……しっかり見ている。

「大丈夫、スパッツ穿いているから」

「なーんだ。つまんない」

「……」

 太ももまでのスパッツの上に虎の毛皮パンツを履き直すサイクロプトロール。お洒落なんだかどうなんだか……。

「このパンツは裏起毛だから温かかいのさ」


 それこそ、どうでもいいぞ……。


読んでいただきありがとうございます!

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